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(4)国際交流の問題点
 対馬における国際交流の問題点をみると、「歴史資源の未整備」が最も多く指摘されており、4割以上となっている。つづいて、「受け入れ態勢が不十分」、「外国人向けの観光資源の不足」が多く、約4割の事業者に指摘されている。問題点についての具体的な記述をみると、宿泊施設に対する指摘が最も多く、施設数の不足、特に団体客が受入可能な大規模宿泊施設が少ない点があげられている。また、言葉の問題についても多数から指摘されており、主に受入側での語学力不足があげられている。土産物・飲食については、免税店などの場所・施設の整備や、土産物となる商品の開発が求められている。
 対馬と韓国を結ぶ国際航路の問題点をみると、欠航率の高さに対する指摘が約4割と最も多く、つづいて、船舶の揺れに対する指摘が約3割となっている。
 
(5)国際交流における今後の方向性
 国際交流の今後の方向性については、「韓国との交流に重点をおいて推進するべきである」との回答が6割以上を占めている。次に、「各国とのバランスを考慮して推進すべきである」との回答が多く、約2割となっている。特に、韓国からの観光客の受け入れに対する考え方をみると、8割以上が「積極的に受け入れるべきである」と回答している。
 今後行っていきたい国際交流に関連する事業としては、「土産物販売」が約3割と最も多く、次に「ホームステイや留学生の受入」が2割強となっている。また、現在行っている事業者は少ないものの、2割以上の事業者が「貿易」に対して関心を示している。
 韓国からの観光客受入を積極的に推進しない理由としては、「商慣行が異なるため事業が行いにくい」が約6割と最も多く、次いで「治安の悪化」が5割となっている。
 
図5 対馬における国際交流の問題点(MA、N=148)
 
図6 対馬−韓国間の国際航路の問題点(MA、N=148)
 
図7 今後の国際交流に向けた考え方(SA、N=131)
 
図8 韓国からの観光客の受け入れに向けた考え方(SA、N=134)
 
図9 今後行っていきたい国際交流関連事業(MA、N=110)
 
(2)対馬および韓国におけるヒアリング調査結果からみた国際交流への期待
(1)国際航路の問題点
 ヒアリング調査結果によると、国際航路の問題点として、欠航率の高さや船舶の揺れについて改善が強く求められているほか、欠航時等の船社の対応、植物防疫が整備されていないこと、比田勝港のCIQが出張対応であることなどが指摘されている。
 
(2)国際交流の問題点
 国際交流については、他地域との差別化やリピーター獲得につなげるための観光資源の魅力づくりが十分でないこと、宿泊施設が不足していること、クレジットカードやトラベラーズチェックに対応していないホテルが多いこと、島内の交通手段が十分でないこと、韓国人の好みに合わせた飲食店や土産物店が少ないことなどが指摘されている。
 
4. 対馬における国際航路の拡充・活用に向けた課題
 
(1)国際航路を活用した国際交流の課題
 
図10 韓国からの観光客受入を積極的に推進しない理由(MA、N=24)
 
(1)国際交流への取り組み全般に関する課題
 対馬における国際航路を活用した国際交流全般の課題として、まず、「『国境の島』としての意識改革」と「対馬市発足を契機とする全島一体となった取り組み」が前提条件となる。取り組み体制については、「釜山事務所の戦略的な活用」が有効であるとともに、「国際感覚や実践力に優れたリーダーシップの確立」や「新たな日韓交流を創出する人材のし育成」にいった人的資源の拡充、「新たな日韓交流に向けた相互理解の促進」による韓国側との連携促進が求められる。また、取り組みにあたっては「目標を明確化した取り組み」や「法制度面における『国境の島』としての位置づけ」が有効である。
 
(2)観光面における国際交流の課題
 観光面の課題については、「観光と一次産業が複合化した交流産業中心とする産業構造への転換」が総括的な課題として位置づけられ、「国際観光振興に対するコンセンサスの醸成」と「受入体制の整備」が取り組みの前提となる。マーケティングとそれに対応した観光資源整備については、「韓国人観光客のニーズ分析と韓国側への情報発信」「国際観光保養地としての観光資源の開発・活用」「歴史・文化や島民とのふれあいを活かした観光資源の開発・活用」があげられ、「周辺地域との連携」や「対馬島民を対象とする韓国観光の促進」についても対応が期待される。
 
(3)産業面における国際交流の課題
 産業面の課題としては、「水産業における貿易振興と共同研究の促進」「林業など地域産品における輸出可能性の検討」「韓国からの対内投資の促進」があげられる。
 
(2)国際航路の拡充に向けた課題
 国際航路の拡充に向けた課題としては、総括的な課題として、「東アジアの国際交流における中継拠点化」が求められ、具体的には「就航率の向上などによる航路の信頼性向上」「国際航路網の拡充」「国際航空路線開設との相乗効果の検討」があげられる。また、港湾については、「CIQ体制の強化」「国際旅客ターミナルの改良」「港湾への交通アクセス」が求められる。
 
厳原港に停泊中のシーフラワー
 
 
(3)次年度調査に向けた検討課題
 以上の検討を踏まえ、次年度調査の検討課題として、
 (1)国際観光戦略の検討、
 (2)国際航路網のあり方の検討、
 (3)国際航路拡充・国際交流促進に向けた実現方策の検討、
 (4)各関係主体の役割分担と取組体制、周辺地域との連携のあり方の検討
の4点を整理した。







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