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II 各プロジェクトの実施内容
1. 和泉市
「総合的な学習における」交通・環境教育プログラム
1. 1 事業の背景と目的
(1)背景
◆道路交通混雑問題・地球環境の危機に際して私たちの日常の行動の中で取り組みをしなければならない
・道路交通問題の解決に際して、社会的ジレンマの克服に向けて、態度追従の交通計画から市民と行政がともに創出する態度変容の交通計画への転換が求められている。
・環境の危機に際して、“生産・消費・廃棄の社会”のあり方から、“持続可能な社会の実現”に向けて、意識の変革と生活様式や事業活動の態様の転換を計る必要がある。
◆“環境のための”教育・学習から子どもたちのしあわせを目的とした教育のための社会への転換を図る必要がある
・単に環境を改善するという知識を学習するのではなく、社会・生活・経済などの私たちの生活活動の中で環境を位置づけ、学校と地域が連携して行動する中で取り組みを実感するとともに、教育のための社会を次世代に継承する必要がある。
 
図II-1-1 プログラム推進の基本姿勢
 
(2)プログラムに係るバックグラウンド
■TFP(Travel behavior Feedback Program)の考え方に基づく
・社会心理学理論に基づく交通行動変容の工学的手法として位置づけられ、以下に示す3段階の基本プロセスによって行動変容を期待する方略の総称。
 
1. 人の交通行動を調べ、
2. その記録に基づいて、一人一人の個別の有用な情報を作成し、
3. その情報を一人一人にフィードバックする。
 
■目的達成の信頼性確保と効率化のために環境心理学、教育心理学の諸知見を反映する
 
(3)プログラムの目的
 「総合的な学習における交通・環境教育プログラム」は、児童の主体性を尊重した総合学習において、「交通問題」と「環境問題」を題材として、自らの日常の生活行動が時間的・空間的に社会環境と相互に影響していることの理解を促し、持続可能な社会形成の必要性についての理解を醸成し、公共問題に配慮する子どもたちの育成を目指す。同時に、社会環境に配慮する行動が実際に可能であったとの体験を誘導することで達成感を期待し、公共問題に主体的・自主的に取り組む姿勢を育むことを目的とする。
 
・地域住民が主体となり・・・学校と地域
・着実に・・・教育を通して取り組みを実感しながら
・持続可能な社会の実現・・・次世代に継承する
 
図II-1-2 目的と概念
 
1. 2 平成14年度実施内容
(1)実施概要
1)対象
・対象校:和泉市立緑ヶ丘小学校
5年生、4クラス(児童数:135名)
 
2)実施期間と充当する総合的学習の時間
 平成14年度2学期〜3学期の期間を対象とし、毎週水曜日の総合的学習の時間2校時と、月もしくは火曜日の1校時に実施する。
 
表II-1-1 14年度のプログラム内容
Step 名称 概要 コマ数
Step-1 イントロダクション (1)環境意識の測定
(2)交通・環境問題の現状と原因の理解
2コマ
2コマ
Step-2 現況カルテ (1)CO2排出構造の理解
(2)交通ダイアリーの理解と記入
(3)現況カルテの理解と記入
(4)交通行動に占めるCO2排出量の理解
2コマ
4コマ
2コマ
2コマ
Step-3 CO2削減方法の検討 (1)社会見学を事例とした削減方法の検討
(2)個人票による削減方法の検討
4コマ
2コマ
Step-4 診断カルテ (1)交通行動を省みて、CO2削減方法を検討
(2)診断カルテの作成
2コマ
2コマ
Step-5 行動プラン (1)行動プランの作成 2コマ
Step-6 CO2削減努力評価 (1)CO2削減努力の評価 2コマ
Step-7 行動持続方法の検討 (1)行動持続方法の検討 1コマ
Step-8 発表会 (1)準備
(2)発表会
3コマ
1コマ
合計 33コマ
※コマ数は、1授業時間毎に1コマとおく(1回のプログラムは2コマ)。
※定期授業(水曜日)以外の取り組みコマ数は含まない。
 
(2)プログラムの評価
 平成14年度は、「かしこいクルマの使い方」プログラムが、総合的な学習プログラムとして適用できそうかというめどをつけるとともに、今後のプログラム展開のための基礎資料を得るという目標で取り組みを行った。
 当初に掲げたプログラムの目標とねらいに対して達成されたかどうかという視点で評価すると以下のとおりである。
 
平成14年度のプログラムの評価の要約
 
◆プログラムの実施によって期待した学習内容に対する成果は概ね達成された
・テーマは新鮮な興味を持って受け入れられた。
・用意したプロセスは全て実行された。
・カリキュラムのねらいは、概ね達成された。
◆しかし、進め方や教材などについては工夫する必要があることがわかった
・全体的に児童及び保護者の負担が大きく、ワークシートや調査、作業方法、5年生の教科との整合性など、ツールに工夫したほうがよいことがわかった。
・一つのテーマとしては期間が長すぎること、毎回の授業で子どもたちが興味を持って取り組めるような工夫が必要であることなど、プログラムの薦め方についての再検討が必要であることがわかった。
 
(3)プログラムの課題
 本プログラムは半年間という長期間であったため、非常に量的にも質的にも内容の多いものであった。交通行動のレビュー(診断カルテ)とプランニング(交通プラン)は必要不可欠なアプローチではあるものの、関係者への負担が多く見受けられた部分があったことは否定できない。
 本年度のプログラムを通じて提起された問題点・課題点について整理すると次のとおりである。
1)教材
 本プログラムでは、教材として、副読本と事務局が作成したプリントを用いた。なお、ワーキング内での提案によりワークシートを作成した。
 副読本は、環境問題の現状と原因を知るために、主としてStep-1で用いた。内容は児童から保護者まで幅広く対応するための内容であり、その方針には問題はないと考えられる。
 しかし、小学5年生に対応した漢字の利用ではないなど、細かい点での配慮が必要である。また、副読本の利用方法について、授業内で児童に考える力を養うことを目的としている時に、副読本がその障害となることもあった。
 ワークシートは、無機質なゆえに児童の反応は良くなかった。小学校で採用している漢字ドリルや算数ドリルなどを参考に再考しなければならない。また、1回または1コマの授業で1枚を仕上げることができるように工夫することも必要である。
2)授業内容と構成
 授業内容および構成に関する問題点と課題を整理すると以下のとおりである。
a. 作業量の軽減
・同一作業の繰り返しは、児童に飽きられる。
・計算量が多く、時間を多く費やす結果となった。
b. 保護者への負担軽減
 本プログラムは学校と保護者など地域コミュニティとの協働体制が重要であり、保護者への協力依頼は欠かせないものであるが、プログラムを進める上で、保護者への負担量が大きい面があったと思われる。







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