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5. 平成15年度事業の概要
 
(1)SR: 船舶技術の研究開発
 基盤技術の高度化・効率化、環境保全・省エネルギー対策、ニューコンセプトの創出等の当面する技術課題に関して、次の研究開発を会員と学・官の共同研究として実施しています。
 
(1)大口径機関の信頼性向上と運航経費削減の研究(SR801: 平成14〜16年度)
 大口径の舶用2サイクル舶用ディーゼル機関のシリンダ内に注油する潤滑油は挙動が明らかでないため、常に必要以上の注油が行われていると推察されます。このため、本研究ではシミュレーション等によって各種条件と潤滑油の関係及び挙動を明らかにし、最適な注油条件と注油量等を設定するものです。これによって、高価な潤滑油の注油量を1.2g/pshから0.7g/pshまで低減し、排ガス中の有害成分を約30%低減させる等他国の機関との差別化を図るための研究を行います。
 
大口径機関の信頼性向上と運航経費削減の研究(SR801)
本研究の具体的内容
 
 
成果適用の具体例
 
(2)先進的海洋・造船塗装の開発研究(SR802: 平成15〜17年度)
 平成14年4月から管理が義務づけられたPRTR(有害物質の排出と移動量の登録制度)は、周辺住民の有害物質使用量開示要求に対応するものです。特に大気に開放して行うことの多い船舶の塗装中のVOC(揮発性有機物質)は、塗料の取扱量が多いこともあって大きな問題です。本研究では、現存する塗料と同等の性能を維持した上で、VOCの使用量が最少となるような海洋・船舶用塗料を開発するとともに、この塗料のための塗装機器を開発することにより塗装作業の効率化と経済性の向上を図るための研究を行います。
 
(3)多量水噴射によるNOx低減技術の開発研究(SR803: 平成15〜17年度)
 2サイクル舶用ディーゼル機関に最大で燃料油の80%に相当する水を添加し、煤塵の発生低減にも考慮しつつ最高燃焼温度を適切に低下させることにより、NOxを現在検討されているIMO基準案に比べて80%程度低減(世界最高水準)する機関の開発を目指すものです。しかも、熱効率の低下は、3%程度にとどめます。この機関を世界に先駆けて開発することにより他国の機関との差別化を図ることが期待できます。
 
世界のNOx規制の動向とSR803の数値目標
 
(2)RR: 船舶関係諸基準に関する調査研究
 船舶の安全確保と海洋の環境保全に寄与することを目的として、国際海事機関(IMO)における海上人命安全条約(SOLAS条約)及び海洋汚染防止条約(MARPOL条約)等の基準の制定・改正作業に対応して必要な基準案を作成し、また、条約化された基準の適切かつ合理的な国内取入れのための作業、その他安全・環境に係る国内基準案の作成等を行っています。
 平成15年度は29の委員会、延べ約440名の委員によりIMOの作業計画、議題に沿った調査研究を行い、基準案の作成等を行うこととしています。
 
RR事業内容
(拡大画面:243KB)
 
IMO国際会議等への参加
 基準研究関係の委員会で作成された基準案が条約基準として採択されるようにIMOの委員会及び小委員会等に出席して我が国提出文書の趣旨説明等を行うとともに国際動向の調査及び各国関係者との意見交換を行っています。
 
 
(3)GS: 低環境負荷型外航船の研究開発
 地球環境対策が焦眉の急となっている現在、船舶からのバラスト水の漲排水に起因する外来生物の拡散を防止するとともに、次世代型帆装船を開発して大幅なCO2の削減をめざして次の研究を会員と学・官の共同研究として実施しています。
 
(1)ノンバラスト船等の研究開発
i ノンバラスト船の開発(平成15〜16年度)
 荷積港海域で排出されるバラスト水により、バラスト水に含まれる海洋生物も必然的に移送・排出され、移送先海域の生態系変化を引き起こして問題となっていますが、ここではバラスト水の海域間移送を伴うことなく安全航行が可能な船型(ノンバラスト船型)の研究開発を行います。
ii 船舶搭載型高速バラスト水浄化システムの試験研究(平成15〜17年度)
 バラスト水の海域間移送の問題を解決する方策として、バラスト水内の生物を分離・除去してから排出する方法も有力な方法であるため、低イニシャルコスト、低ランニングコストで、既存船にも容易に装備が可能なバラスト水浄化処理装置の開発を行います。
 
(2)次世代型帆装船の研究開発(平成15年度)
 近年、温室効果ガスの排出抑制又は削減が強く叫ばれており、外航船舶でも風をエネルギー源として利用する次世代型帆装船が考えられています。
 従来技術として存在する硬帆(鋼製の帆)の欠点を改善し、帆による省エネ効果を飛躍的に高める帆装システムとして硬帆、軟帆、スラットからなる高揚力複合帆システムの開発を提案し、帆走による利得を最大限に活用するための研究開発を行います。







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