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最近の造船産業構造の変化に対応した造船技術の共同研究と開発の仕組み及びそのあり方

 事業名 造船技術研究開発課題の調査
 団体名 日本造船研究協会 注目度注目度5


2. わが国造船業の現状と技術開発
2.1 造船環境の変化と活路
(1)主役交代
 日本の新造船シェアは、1956年に世界一になってから最近までトップシェアを維持してきた。しかし、79年のオイルショック以降、設備過剰が明らかになり、官民一体となって80年の第一次建造設備削減、続く88年の第二次削減で79年に960万CGTになっていた建造設備を460万CGTまで削減し、市場の回復を期待したが、この隙間を縫って韓国は80年代に除々に設備を増加し、90年代半ばに大規模な設備投資を行ってからは、競争力も強化され、シェアと共に品質面でも日本と肩を並べる状況になっている。
 一方、舶用工業の分野でも韓国は87年にB&W、Sulzer等のライセンシーによる大型ディーゼル機関の国産化に着手し、13年後の2000年には生産馬力で日本を追い抜き、世界第一の座を占めるに至っている(2002年時点で、2サイクル低速エンジンの分野で韓国は馬力ベースで世界の約51%、日本は約34%)。大型プロペラ、中型ディーデルエンジン、甲板機械、電動機、配電盤、艤装品といった分野でもヨーロッパの舶用メーカー及び日本の舶用メーカーと技術提携或いは合弁という形で国内生産比率を高めてきているため、一時期のように韓国の建造量が増加すれば、日本から韓国向けの舶用機器の輸出が直ちに増加するという傾向は薄れつつある。
・・・表2-1 参照(50年間の推移)
 また、中国の造船は、現在のシェアは7%程度であるものの「20世紀における世界造船業の趨勢に関する分析と研究(海事産業研究所)」によれば、新規造船所が渤海湾地区、山東省地区、上海地区及び広州地区に建設されており、コンサルタント等ヨーロッパからの技術支援と安い労働力を武器に2010〜2015年には2,000万G/Tの建造能力向上が見込まれ、シェアが伸びると予想している。
 又、同報告書は、世界の造船業が拡大・発展・最盛の場合には、韓国は2020年までに日本の造船量の減少に対し、技術と生産性を向上し、日本を凌駕し始め、中国は21世紀央年までに緩やかに韓国を凌駕し、世界最大の造船量を誇ることになると報告している。また、世界の造船業が下降・縮小・衰退した場合には、21世紀央までは、日本・韓国・中国の3大造船国時代が続くが、その後中国・韓国の2大造船国時代に変化すると報告されている。
 国内大手においては、平成14年10月に石川島播磨重工業の造船部門、住友重機械工業の艦艇部門及びマリンユナイテッドが統合しアイ・エイチ・アイマリンユナイテッドに、日立造船と日本鋼管の造船部門が統合されユニバーサル造船に、川崎重工業から造船部門が独立し川崎造船に、さらに平成15年4月に、住友重機械工業から商船部門が独立し住友重機械マリンエンジニアリングになった。しかし、このうち経営統合はユニバーサル造船のみであり、日本のハーフィンダール指数(H.1.)は700程度から794に押し上げたに過ぎず、韓国の3,171に比べはるかに低く、スケールメリットを発揮しにくい構造は残ったままになっている。
・・・表2-2参照
 中手造船所については、近未来に予想される韓国、中国との死活を賭けた熾烈な競争を考えると、中手企業群の更なる活性化なしに日本の造船業を語ることは避けて通れないと考えられる。
 これまでのわが国における基礎的基盤的共同研究の主たる推進母体は、専ら大手造船会社が中心となって技術開発を進めてきたが、中手造船の中には、多くの船主の支持を得て大手が手を出せない船種を拡充し、建造量も拡大して規模においても大手を凌駕し、中には船種を限定して同型船の連続建造を図り、かってない生産性を実現することによって、強いコスト競争力を獲得した、いわゆる近年、強手と呼ばれる造船所が出現した。
 これら中手の企業群は、技術研究開発に関しては、大手企業からの優秀なOB技術者によって支えられている面があり、また、技術開発に参加しても開発の主導者とはならず専ら情報収集的参加に止まっていた。しかし、大手造船所が強手造船所を競争相手と位置付け又、大手の技術者自体が先細りとなっている現状では、従来のように大手のOB技術者を確保するのは困難となることが予想される。
 わが国の造船産業構造を考えるにあたっては、中手も大手同様に正面から採り上げられることは必至の流れである。今後は単なる協力的参加に留まらずに研究開発プロジェクトの提案から実施を含む当事者としての参画が必要になると考えられる。
 
(2)韓国の高付加価値船受注戦略と低船価攻勢
 円高、ウォン安による韓国の受注量増加、2次元CAD設計を飛び越えた3次元CAD設計の導入及び設備投資による生産性向上、建造実績増加に伴う韓国独自のノウハウの蓄積が計られ、現在では品質及び信頼性においても日本と互角になっている。従来は日本のみで建造していた高付加価値船であるLNG船や超大型コンテナ船等も韓国で受注し、日本は低価格攻勢を受けている。現在の韓国の攻勢は、円高とWon安に支えられている面が大きく、日韓が同じドル船価で受注したとしても、国内的には韓国の船価(Won 換算船価)は上昇し、日本の船価(円換算船価)は下降しており、高賃金体質と相俟って日本の造船業に薄利多売体質を強いる原因となっている。
・・・表2-3参照
 80年には600Won/$で推移していた為替レートは、97年央のタイ通貨減価の影響から下落し、97年1月には1,700Won/$を超える安値を記録した。98年以降は金大中政権による経済改革が順調に推移したため危機は去り、ノムヒョン政権後のレートも1,200Won/$前後で推移している。日本の造船業界には今後のWon高を期待する向きもなくはないが、Won高になって韓国の競争力が低下したとしても、韓国の後ろには新しい設備、豊富な労働力、建造経験の積み重ねによって習熟度を高めつつある中国が控えている現実を直視すべきである。
 日本の大手は韓国の得意とする大型船でコスト競争する状況になっているが、中手は中型船主体の分業体制でそれぞれ得意とする船種に特化し、連続建造によりコスト競争力を維持しているものの、新卒者の減少、従業員の高齢化、設備の老朽化、高賃金といった状況を考慮すれば現在の状況が長続きするとは考えにくいものがある。
 
(3)需給ギャップ
 OECDによる需給バランス予測によれば、2005〜2009年平均の新造船建造需要は18〜19百万CGTとなる一方で、2005年時点の供給能力は26〜27百万CGTと見込まれており、需給ギャップは7〜9百万CGTと予想される。さらに、高賃金化の傾向はあるものの現在は、日本の20分の1程度と言われる中国の安い労働力により船価水準は大幅な下落が見込まれ、日・韓・中の価格競争は熾烈を極めることが予想される。
 
(4)造船所の活路
 価格競争に耐えられる体質作りとして、以下の3点がある。3つを満足するには
(1)各造船所毎に中手と同じ様な特化船の連続建造を計る。
(2)これら特化船の種類を数多く持つ。
(3)系列に縛られないドライな経営(艤装品、舶用機器の購入では価格競争以前に系列への配慮が働き、価格を押し上げる要因になっていると指摘されている)。
 上記(1)のみを満足する中手並を目指すか、この3つを満足する従来の大手を目指すかの岐路に立っている。ここで、3つを満足させるにはさらなる再編が必要になってくる可能性も否定できない。
 一方、韓国、中国との価格競争の俎上に乗らない様な船種に特化することも考えられるが、現状では需要量が非常に少なく需要の掘り起こしが必要になってくる。
 なお、国内大手の造船所の問題としては、同じ社内でありながら造船部門、造機部門、電計部門、艤装部門といった部門間の意見交換が少なく、特に技術に関しては互いに関心がないということが上げられる。これは人的資源、研究資源、経費の無駄である。部門間の積極的な交流の場がない限り合理的な船舶の技術開発は不可能と思われる。
 
(5)舶用工業
 舶用工業に対しては、現在、全国に700数十社存在する舶用製品を製造する事業所のうち、舶用比率70%以上の事業所は40数社程度、30年前には100社近いと言われた90%以上の事業所は20数社程度に減少したと推定され、舶用だけに依存しているメーカーは非常に少なくなっているが、これはオイルショック以降多角経営化を進め、景気の波を受けにくい構造を目指してきた結果と考えられる。生産品目別事業所のハーフィンダール指数も次第に上昇して集中度を高めている。
・・・表2-4参照
 一方、価格の面では韓国との競争価格で受注した船舶に納入するため、安値で納入せざるを得ない状況が続いているが、この事情は船価と同様である。
 舶用工業は、業種も多く形態も様々であるため一括して論じることはできないが、現状の厳しい環境に対応するためには次の対策が考えられる。
(1)大型舶用エンジン
 2サイクル大型舶用エンジンのように三菱UEを除くと、ブランドの大部分は韓国と競合するB&WとSulzerのライセンシーエンジンであり、国内の90%(馬力ベース)を現代重工とHSDの2社で製造している韓国に対し、日本は三井、川重、DU(IHI+住重)、日立、神戸、三菱の6社で製造している。ハーフィンダール指数でみても韓国が4,368であるのに対し、日本は2,184で中国の3,580よりも低く、韓・中との比較において過当競争の起き易い体質(特に需要の減退時)になっている。
 ハーフィンダール指数では、高位寡占型になっているが、韓国、中国に比べれば低いため、経営に多少でも余裕のある今、需要減退期に備えた集約化を考慮すべきかも知れない。
・・・表2-7参照
 なお、2サイクル大型エンジンではB&WとSulzerが世界市場の95%以上(馬力ベース)を支配している現状では、新たなブランドのエンジンを送り出すのは困難な状況にある。このため、ライセンシーエンジンのメーカーでも、日本で実施された改良・開発技術がライセンサーをとおして公開されたとしても、韓国、中国が容易に追従できないような戦略を持った先導技術(例:他国を大きく凌駕した環境対応型エンジン、セラミック溶射技術を使用した高耐久エンジン等)を開発する必要がある。
(2)中・小型エンジン(船外機を除く)
 4サイクルエンジンは付加価値の高い高速部門ではMTU等のヨーロッパのエンジンが圧倒的なシェアを持っている。又、ブランド数、エンジンメーカー数も多い。このため、国内の高速エンジンの技術力を高め、海外でも通用するような信頼性を確保する必要がある。環境対応についても然りである。国内メーカーのハーフィンダール指数も高くはないため需要減退期には集約化の必要が出てくる可能性がある。
(3)補助機械類
 業態が多種多用であるため、一括りにして論じることはできないが、全般的に見ればかなり集約化が進んできており、その歩みも留まってはいない(表2-6参照)。又、早くから韓国に合弁企業として進出し成功をおさめているメーカーもあるし、日本以外では部品の調達が困難であったり(航海機器の一部)、圧倒的な技術力を背景に海外進出(生産面)せずに世界の市場を押さえているところもある(例:カーゴオイルポンプ)ため、ケースバイケースの対応が求められる。IMO、IEC、ISO等の国際基準に対しては他国に先行した技術開発と基準作りへの戦略が必要である。
(4)艤装品類
 概して付加価値の低い製品であり、既に海外に進出して成果を上げている企業もある。
 海外へ一部の製品(又は部品)の生産基地をシフトするのは必然と思われる。
 わが国の造船業が40年以上の長期に渡って世界の海運業界の信頼を勝ち得てきた背景には、舶用工業が、品質、納期、価格、メンテナンス等の面で造船所の各種の要求に柔軟に対応してきたことが大きな要因の一つであり、そのことが日本の造船の受注増に繋がるという好循環を形成してきたことは論を待つまでもない。
 建造面では、韓国が日本を凌駕するまでに成長し、続いて中国が台頭しつつある今日、ホームランドとしての造船業が縮小すれば、舶用工業も大きな影響を受けるのは必至である。今後の舶用工業が、コスト高等の理由から国内の実情に会わなくなった生産の一部を海外にシフトしたり、縮小しなければならないのは止むを得ないかも知れないが、従来のように造船業に従属するのではなく、海運・造船の現場のニーズを熟知し、造船業を牽引できるような技術を開発・蓄積すべきである。いずれにしても舶用工業と造船業は協調しつつ両輪で前進すべきである。協調体制が崩れればそれは日本の基幹産業としての造船業が失われることになることを意味する。
 
表2-1 
船舶建造量とわが国舶用工業生産輸出入の50年間の推移
(拡大画面:222KB)







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更新日: 2019年8月10日

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