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(14)速度ポテンシャルのsecular解とnon-secular解
―波漂流付加質量の理論計算―
吉田基樹、鮑偉光、大下健(東京大学)
 
 波漂流減衰係数又は波漂流付加質量の計算に必要な各オーダーの速度ポテンシャルのいくつかは、ポテンシャルが遠場で発散するいわゆるsecular挙動を示す。この問題を解決するためにmultiple scale摂動法を応用して新しい境界値問題を設定し、それらを解いた結果、ポテンシャルのnon-secular解を得ることができた。浮遊1本円柱の場合のsecular解とnon-secular解との対比を下図に示すが、物体表面上(r=1)のポテンシャル振幅値(約8.6)は両者に差はなく、従って、物体表面上の圧力積分によって流体力を計算する場合(near-field法)にはsecular解を用いたとしても問題はないことが分る。
 
 
三田重雄、庄司邦昭(海洋大)、
山下勝久、野々村千里(東洋紡)
 
 橋脚防護用樹脂緩衝工への船首衝突に対し、緩衝特性に及ぼす船首寸法影響をPEL緩衝工とウレタンフォームを用いて船首衝突の模型実験と静的な数値解析で調査し、速度影響についても検討した。この結果、反力−侵入量曲線はひずみ0.65付近まで侵入量にほぼ比例して増加した後増加割合を増す特性を示し、船首の開き角がある程度大きくなると反力が増した。この傾向は静的侵入時と同様に開き角が大きくなるほど顕著であるが、反力は大きくなった。また、PEL緩衝工は素材自身の持つ速度影響が元となって衝突時は静的侵入時より大きな反力を示すことがつかめた。
 
PEL緩衝工への船首衝突時の反力に及ぼす船首開き角の影響
 
三田重雄、庄司邦昭(海洋大)、
山下勝久、野々村千里(東洋紡)
 
 船舶の衝突に対する橋脚防護用緩衝工として開発された形状復元性のある樹脂緩衝工に、楔形船首船が船首から衝突したときの船首ならびに緩衝工の変形挙動を静的な模型実験で検討した。この結果、船舶が船首から橋脚のような剛性の高い平面に衝突するような場合の船首強度を、薄板構造物の均一圧縮に対する簡易推定式で推定できることが確認でき、緩衝工の強度に対して船首側の強度の方が大きい場合の双方の変形挙動がつかめた。また、小型船舶が樹脂緩衝工に船首から衝突する場合を想定して変形挙動と吸収エネルギーの検討を行った。
 
樹脂緩衝工に船首衝突した楔形船首と緩衝工の変形挙動
 
川村恭己、藤田英里、菊地泰史、角洋一(横浜国大)
 
 近年、船舶のライフサイクル全般に渡り構造保全情報を管理し、適切な評価対処を行うための船体構造保全情報システムが提案されている。本研究では、システム実現のための要素技術として、船体構造保全情報モデルから強度解析モデルを生成する手法を提案した。具体的には、STEP技術の一つであるEXPRESS-Xを用いた強度解析モデル生成のフレームワークを提案した。解析モデル生成例を示すことにより、本手法が、損傷を有する船体の強度解析モデル作成や、未来における強度予測に有効であることを示した。またこのような考え方を用いることにより、解析モデル生成の知識の長期的・汎用的な利用が期待できる。
 
提案する強度解析モデル生成のフレームワーク
 
柳原大輔、藤久保昌彦(広島大学)、原田実(NK)
 
 著者らはこれまでに、面内圧縮荷重と同時にパネル側からの横圧を受ける連続防撓パネルの最終強度推定法の提案を行っている。本研究では、この推定法を防撓材側からの横圧を受ける場合にも適用できるように拡張することを目的とする。はじめにFEM解析を実施し、防撓材側からの横圧を受ける場合の崩壊モードが、横圧の大きさに応じて、防撓材の降伏に起因するSI崩壊と、曲げが支配的で3点塑性関節を形成するHI崩壊に分類できることが分かった。次に得られた知見に基づき上述の最終強度推定法に改良を加え、さらにFEM解析結果との比較から本提案手法の有用性を確認した。
 
横圧と圧縮最終強度の関係
(tee-bar防撓材、高さ150mm)







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