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(19)船体ビルジ部の座屈・最終強度と縦曲げ最終強度に対する寄与に関する研究
前野嘉孝、藤井康成(サノヤス・ヒシノ明昌)、
山口弘志(三井造船)、矢尾哲也(大阪大学)
 
 船体の最終強度を求めるために、Smithの方法は簡便な手法として広く用いられているが、円弧部は完全弾塑性体として挙動する要素として取り扱われ、過大な評価となっていることも考えられる。本研究ではビルジ部を対象として、有限要素法による一連の弾塑性大たわみ解析を行い、その座屈・塑性崩壊挙動を明らかにするとともに、この平均応力〜平均ひずみ関係を表す推定式を構築した。さらに、船体縦曲げ最終強度解析を実施し、従来の完全弾塑性要素を用いる場合と比較して、最終強度に関してはほとんど差が現れないが、最終強度後の耐力に差が現れることを確認した。
 
パルクキャリアーの曲げモーメントと曲率の関係
 
鈴木克幸、澤村淳司、大坪英臣、吉田博俊(東京大学)
 
 海氷に対する衝突の設計指針としては平坦氷に対する衝突ではなく、より条件の厳しいリッジに対する衝突荷重が用いられる。本研究では海氷リッジと構造物との衝突時の氷荷重推定のため、個別要素法による考え方に基づく解析手法を開発した。クォータニオンを用いた運動表現および撃力による衝突を用いることにより、より効率的に任意形状の剛体に対応することが可能となった。リッジ内部の融着強度によって氷荷重が大きく影響を受けることがわかった。
 
傾斜型構造物と海氷リッジの衝突の様子
 
毛利雅志(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)、
角洋一、川村恭己(横浜国大)、松田宏之(NK)
 
 船体構造に生じた疲労き裂の伝播挙動を高精度に予測するためには、複雑な応力状態やき裂進展に伴う構造不静定性などを考慮する必要がある。そこで本報では著者ら開発してきた自動き裂進展シミュレーションプログラムを改良し、実船のFEMモデルを取り込むことができる疲労き裂進展経路予測システムを開発した。予測システムの溶接構造物に対する適用性を検討するため、船体構造の一部をモデル化した構造試験体を用いた疲労試験を実施した。実験により得られたき裂伝播経路および挙動と解析により得られた結果を比較したところ、両者が良く一致ことを確認した。
 
疲労き裂進展経路予測システム 実験と推定結果の比較
 
(22)鋼材組織による溶接構造物の疲労寿命改善
―疲労特性に優れた船体用鋼板の開発第3報―
誉田登、有持和茂(住金)、
廣田一博、渡邊栄一、多田益男(三菱重工)、
福井努、北田博重(NK)、山本元道(広島大学)、
高允宝、矢島浩(長崎総大)
 
 疲労き裂進展抵抗性に優れた新開発鋼の船殻構造部材としての適用性を検討した。プラズマ切断面を起点とする試験片、突合せ継手、ガセット継手、片側広幅ガセット継手、サイドロンジモデル試験体の各試験片に対し、開発鋼を適用した場合の疲労強度を従来鋼(KA36、KE36)と比較した。その結果、疲労き裂進展寿命が疲労寿命の大部分を占める、実船を模擬した試験体において、顕著な疲労寿命延伸効果のあることが確認された。また、開発鋼はプラズマ面を起点とする疲労特性にも優れることも確認された。本結果も含め、他の一般的な特性を証明し、本開発鋼はNKより製造法承認を得た。
 
サイドロンジモデル試験体の疲労試験結果







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