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(5)前翼式WISESの翼間空力干渉と波浪中空力特性に関する研究(その二)
岩下英嗣(広島大学)
 
 前翼式WISESが固定波板上および進行波面上を飛行する場合に作用する非定常空力を時間領域境界要素法を用いて解析し、その非線形影響について考察した。飛行高度が低い場合には顕著な非線形影響が現れること、今回の解析結果が実験結果と良好に合致することなどを示している。また、WISESに作用する非定常空力の翼間干渉影響についても解析を行い考察を加えている。
 
波面上を飛行する前翼式WISESの時間領域計算用格子
 
 
固定波板上を飛行する前翼式WISESの主翼に働く変動力
(1次成分)
 
小林寛、木下健(東京大学)
 
 漕艇運動の解析の際には、オールブレードに加わる力を推定する必要がある。ブレードは水中で翼として働いているが、従来の研究では定常状態を仮定して翼に働く流体力が推定されていた。しかし、実艇実験の結果から推算したところ、ブレードに働く力は非定常であって、定常な翼と仮定した場合とは大きく異なり、水中での運動の過渡的な影響が大きいことが明らかになった。オールブレードを模した平板による回流水槽での試験の結果、迎角が過渡的に変化する場合では、平板に働く流体力は定常な場合に比べて、大変に大きな値を示すことが分かった。平板には板に直角方向の力が主に働き、その直角な方向の流体力係数は迎角とともに変化し、流速・迎角が変化する速度の関数となり、reduced frequencyによって良く整理される。これにより、ストローク過程中にブレードに加わる非定常力を定量的に推定することが可能になった。
 
換算周波数(fr)別の、迎角の変化に対する
流体力係数Cnの変化
 
小林寛、木下健(東京大学)
 
 『漕手のオールハンドルを引く力』および『漕手の重心移動』を入力することで、すなわち漕手の身体の動きと発揮する力を入力とし、全体の系のエネルギー方程式を解き漕艇運動を推定するシミュレーション法を開発した。シミュレーション中、オールのブレードに加わる流体力は、ブレードの運動の過渡影響による非定常性を考慮に入れ推定を行った。
 実艇実験の入力データから、実艇実験の船体速度が精度良く再現され、本シミュレーション法により漕艇運動を精度良く推定可能であることが確かめられ、本シミュレーションは、VPP(Velocity Prediction Program:艇速推定プログラム)として、漕艇運動の推定に有用であることが示された。
 
Simulation flowchart
 
小林寛、木下健(東京大学)
 
 漕艇競技は、船体・オール他多くの用具を使用する。それぞれの用具の寸法・特性をどのようにすれば、漕手のパフォーマンスをよりよく引き出すことが出来るのか、あるいは漕手がどのように漕げば漕手の出力が効率よく艇速に反映されるのかを定量的に推定することが、艇速・機械的推進効率の向上を図るために必要である。
 漕手がハンドルを引く力および身体の動かし方を入力とするシミュレーションを開発し、それをVPPとして用いて、漕艇運動に関する種々のパラメータを変更することにより、船体速度や漕艇の機械的効率にどのような変化が生じるか計算を行い、どのような方法が有効かを調べた。その結果、船体速度や機械的効率の向上のため、どのような改良を行うべきか指針を得ることが出来た。
 
ストローク過程前/後半でオールブレード流体力係数Cn
を変化させた場合の機械効率の変化







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