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3年目
 2004年。夏にワークショップ
12月、松本市新市民会館で本公演の初日。翌年1月、全国公演後、北海道で千秋楽。
 
●松本市から北海道の皆様に
渡辺 弘(松本市新市民会館プロデューサー兼支配人)
 来年秋、松本市に新しい市民会館がオープンします。大小二つのホールを持ち、オペラ、バレエから小劇場演劇に対応できる劇場となっています。その芸術監督に、この4月より串田和美さんが館長も兼務という立場で就任され、いよいよオープンに向け動き出しました。
 文化の発信が東京偏重になるなか、「自ら生み出し、国内はもとより世界に向けても発信していくような舞台芸術の拠点」を目指すという熱い思いを、串田さんは就任時に語っています。現在、新しい建物と思想を持った公共劇場が、全国に出来ています。元気のない地方をいかに文化で元気付けるか、それぞれが大きな課題を背負っています。そうしたなか、このシアターキャンプ、そこから生まれる作品は重要な役割を背負っているのではないでしょうか。地域と地域が同じ想いを持ち、全国の演劇人が集まり同じ課題に取り組む、そして作品として提示をする。こうした動きこそ地方活性化、文化の刺激剤として今後もっと必要とされることでしょう。
 松本は、北海道の皆様を応援します。そして来年、串田演出の「コーカサス」を同じ想いで北海道と松本から全国に発信させたいと願っています。
 
●伝説へいらっしゃい
加藤浩嗣(北海道新聞文化部 記者)
 胸がどきどきわくわくしている。「串田ワーキング in 北海道」1年目最終日の2002年9月8日、幸運にも立ち会えた無料発表会が“伝説”になった日から、この日が来るのを1年間待っていた。
 北海道で3年かけて芝居をつくる―。串田ワーキングは、串田さんが2001年に緒方拳さんとの芝居「ゴドーを待ちながら」で北海道を巡演した後、商業ベースにとらわれないまっさらなところから芝居をつくりたいと発案した。この無謀といえばいえそうな計画が1年後には北海道内の協力者を集め、富良野市と札幌市で計約1ヶ月のワークショップにこぎつける。参加者約30人が感動した物語を相手に伝え、それら物語が溶け合い新たな物語を生む体験に始まり、田園や川べりの散策、バーベキューパーティー・・・、それだけ聞けば実に楽しそうである。そして実際、身も心も芝居漬けの日々は、演劇を志す人には目標が高く遠くにあるほど幸せな時間だったろう。
 そんな混沌と調和の中から、「コーカサスの白墨の輪」は選ばれた。発表会会場、札幌・すすきのに近いビル2階の道演劇財団主宰劇団TPS(シアタープロジェクトさっぽろ)の狭いけいこ場は、参加者と駆けつけた観客の2重の輪で埋まった。役を複数の役者が交代で演じる芝居は、粗削りで脱線、転覆と軌道修正を繰り返しながら、参加者全員が歌い、思い思いの楽器(音の鳴る物)を奏でる“札幌バンスキング”的祝祭空間になった。ラスト、隣の寺を借景に、外の路上で演奏する参加者たちと、2階の窓から見守る観客の交歓は忘れられない。串田さんはにこやかに言った。
 「今日ご覧の方は自慢できます。伝説になるかもしれない。」この日の観客数は串田さん演出の名作「上海バンスキング」の初日とほぼ同数の30人余だった。そこからの始まりである。いかにも“伝説”にふさわしいではないか。
 3年がかりの“伝説”2幕目、開幕である。
 
■作 B.ブレヒト
 
■翻訳 池田幸子
 
■構成・演出・美術 串田和美
 
■出演
★はダブルキャスト、☆はトリプルキャストです。
内田紳一郎 いやぁ、大変、大変、大変。その一言です。
 
大月秀幸 研修センターの食堂で戯曲読んでると、隣でアメフトの選手がミーティングやってて、時々気合が入って「ハイ!」とか「オッス!」とかうるさかった割には、ブレヒトの人物描写の巧妙さに気づいたりした夏でした。
 
さとうこうじ 去年のワークショップから1年がたち、何か僕は変わったでしょうか?何本かのまったく違ったタイプの芝居もやり、どこか少しは大きくなったでしょうか?どうなんでしょう?皆はどうなのよ?
 
斎藤歩 夏のシアターキャンプが北海道に定着するといい。特に朝日町のような小さな町での滞在稽古は実にいい。富良野、札幌は二年目でしたが昨年の様々が土地に刻まれていて、これも良かった。継続の力。来年の本公演のべースが北海道で形成されたと思います。
 
滝沢修 串田ワーキング。2年目である。空気:時間に加速度がつく。ワーキングの内容は大きく変わっていないのだが、熱はどんどん上がる。体内の血液循環時間は速くなっている。まさにガストン・バシュラールの云う「時間は瞬間が屹立している」を感じるのだ。
 
北川徹 7歳の夏、うだる暑さの昼下がり、じいちゃんと高校野球を見ています。じいちゃんはビールを飲んでいて、私はサイダーを飲んでいるのです。あざやかに思い出しました。深い記憶と結びつく、夏のいかしたワークショップでした。
 
稲葉良子 富良野のカレーライス、朝日町のラムバーベキュー、札幌のおでん、と各地の人々に期待され、歓迎され、心から感謝しています。本当におもしろい芝居をと120%の力を振り絞っています。どうぞお楽しみに。
 
盛加代子 活力の、そして出会いの場。右も左も何も知らない私をこの様な場に入れて下さった串田さんは大恩人。演劇を愛する人々の集う場、それがKUSHIDA WORKINGです。
 
原子千穂子 去年。富良野の草っぱらで車座になり、みんなが童話や民話を話しました。毎日のように。富良野の空はどこまでも高く、風は透明でした。みんな確かに話したいのだと知りました。だから集まってきたのだと。今年。まだお話は続いています。
 
中澤聖子 緑に囲まれた青空の下で何かを感じながら何かをつくっていく。このことから何が生れていくのだろう。いっぱい考え、いっぱい感じたい。
 
★札幌・富良野・東京 朝比奈尚行 さあ作曲だ!と意気込んで札幌へ来た。とたん演出家から歌手役で出演してくれといわれた。え!?でも、ま、いっか。3年掛かりの作品づくりで音楽を担当する以上、歌手を演ってこそその役割を全うすることになる?
 
★朝日町 鈴木光介 去年の発表会、爆笑しました。一人一人がそのまんま出てきてて、役者であると同時に楽士であり、脚本家であり、演出家である。あ、これでいいんだ!って。え?僕も出るんですか?よ、よろしくお願いします!
 
☆札幌 草光純太 蒸し暑い関西を逃げ出して一夏北海道で芝居漬けの日々。なんだか罰があたるんじゃないかと思う程贅沢な企画。この二回のワークショップで色んな人に出会い、色んな刺激を受けました。
 
☆富良野・朝日町 谷山一也 二年目の夏がやってきた。新しい発見、ゆったりとした芝居づくり、色々な人との出会い、ふれあい。本当に賛沢な時間を過ごせました。
 
☆東京 中台明夫 日常から離れ、時間も空間もゆったりとした中で自分の芝居を見詰め直した充実した日々でした。今はまだぼんやりとしたモノですが、これから、ここから広がる表現を大切にしたいと考えています。
 
遠島立夫 自然発生してくるもの。まあるい円の中から突然出現してくるもの。いきいきとした空気をつれて、やってくる。昨年の経験から思った、僕が最終的に目指したいことだ。いまいち、言葉では表現できないけど。とにかく今回は、かなり真面目に考えているのだ。
 
永利靖 ワークショップは大変有意義な時間でした。久し振りにのんびりといろいろな事を考えることが出来ました。で、公演ですが、おもしろい作品です。ヨーロッパっていう感じです。行ったことないけど。
 
大川素子 ワークショップ初参加。北海道へ来るのも初めてです。頭も体も使ってなかった細胞が動き出す感じが快感でした。今回のワークショップの事は、おいしい空気や食べ物の事と一緒に、これから何度も思い出す事になると思います。
 
藤田るみ 今回初めて、朝日町からの参加です。芝居は天気もわからないような稽古場にこもって生み出される物と思っていたので、朝日町の環境は夢のようでした。人と自然からたくさん力をもらえたワークショップでした。
 
山崎広美 昨年、今年と参加させていただいて思うことは、芝居しか出来ない環境で楽しんだり、苦しんだり出来る人たちと、同じ場所にいられて、幸せだということです。本当に、幸せ。
 
串田和美 表紙をご覧ください。
 
■チラシ記載以外のスタッフ 照明:横原由祐 大橋はるな 大久保尚宏
■協力 高橋克己 黒丸祐子 フリースペースK2 新堂猛 阿部雅子 牧野丈太郎
細木美穂 谷口直子 吉田裕 加藤綾子 爺隠才蔵 伊東潤 山下翼 佐藤舞 林恭子







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