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シアターキャンプ in 北海道プロジェクト
KUSHIDA WORKING in 北海道
2001  2005
コーカサスの白墨の輪 preview
本番一週間前の夜中に・・・。
串田和美(KUSHIDA WORKING 代表)
 皆さん、「コーカサスの白墨の輪」プレビュー公演にようこそいらっしゃいました。
 これはプレビューですからすなわち、試演会であり、同時に予告編のようなものでもあります。ですから、何を試演するのか、何を予告しているのか、我々にとってそのことが最も大切な問題なわけです。今、8月25日の夜、このパンフレットの原稿を催促されパソコンに向かいながら、そのことを考えています。というのは、今までに本番がいつなのか定かではないプレビユー公演など行ったことなどなく、自分で目論んでおきながら、なかなか潔くなれないのであります。40年も芝居をしているせいか、生まれつきの性分かとりあえず面白いものを作りたい、なるべく大勢の人たちに喜んでもらいたいという芝居屋の性が初日が近づくにしたがって頭をもたげ、稽古場を支配し始めるのです。そしてうっかりするとちょいと気の利いた演出的処理みたいなものや、戯曲の正しい読み込み方のようなものが、目論みを曖昧なものにするのです。そんなことを、本番一週間前の夜中・改めて思い直し、明日稽古場でみんなとどんな話をしようか、もう一度すべてを壊してみようかなどと大胆なことを想うわけです。
 今回の、二年かけてまだ芝居を作らないという、贅沢な作業を支援してくださる大勢の方々、見届けてくださる今日ご来場の皆様に心より感謝いたします。そして三年目には、できれば晴れ晴れしい姿となって再会することを、お約束します。
 
演劇もキャンプをしよう。
平田修二(北海道演劇のまちづくり実行委員会 事務局長)
 人は、今日と違う明日を生きたいと願っている面があります。演劇に関係する人は、特にそのような願望を強く持っている人たちだと思います。だとすれば、決まっている作品を創るために稽古をし、公演をすること以外にも演劇的行為があるのではないか。演劇人、サポーターが集まって、「俺は演劇をこういうためにやっているよ」「私の演劇は、今こんな形をしているのだけれど、皆はどう」「演劇の周辺にいるのはこういう訳」というような話をしたら、面白いだろうと思います。
 そんな折、2001年の『ゴドーを待ちながら』北海道公演の合間に、串田さんといろいろお話しました。もっとじっくり芝居を創りたいと思っていた串田さんと想いが交錯し、この三年がかりのシアターキャンププロジェクトが始まりました。
 北海道は少しずづ変わってきています。演劇がまちと社会と人を豊かにすると思う人たちがいます。行政にも民間にも演劇をサポートする態勢があり、熱心な活動を展開するホールが増えてきました。今なら、プロ野球のようなキャンプの演劇版が北海道でやれる!
 茨城、千葉、東京、神奈川、京都、兵庫など、全国で演劇をやっている人たちが自らの演劇を再点検するために北海道に集まりました。北海道の演劇人も大勢参加しました。札幌、富良野、朝日のホール、サポーターの方々にはお世話になりました。
 まだ、二年目です。今回のプレビューの舞台を覚えていて下さって、来年の本公演の舞台を観ていただけると嬉しいです。そして、来年以降の「シアターキャンプ in 北海道」参加をお待ちしております。
 本日はご覧いただきありがとうございました。
 
プロジェクトの記緑と今後
前史
 2001年7月。「ゴドーを待ちながら」札幌公演の打ち上げの席上、富良野公演の合間などに、北海道に長期滞在し、ワークショップで芝居を創ろうという夢が語られる。この後、何度も中止を考えるなど、紆余曲折があった。
 
1年目
 2002年8月〜9月。ワークショップ(最終日、成果発表会)
 
富良野市
富良罫演劇工場
(8月12日〜31日)
 
札幌市
TPSスタジオ
(9月2日〜8日)
 
 
●大自然の懐でどんな花を咲かせるのか
篠田信子(NPO法人ふらの演劇工房)
 2000年秋「富良野演劇工場」がオープンし、演劇文化の生産工場、発信基地を目標にNPOが運営に当たった。地元以外の演劇集団にもこの工場でソフトを創ってほしいと願っていた矢先に串田さんとの出逢いがあった。「この大自然の中で今までの創り方ではない方法で芝居を創ってみたい」と当地を訪れた串田さんが想いを語ってくださった。創作活動のどこかに市民も参加したいと言い続けてきた演劇工房としては願ってもない機会だが正直不安もいっぱいあった。だが市民はボランティアとして力いっぱい舞台裏で支えてくれた。
 1年目、炎天下の野原で輪になり延々と続くディスカッション。今年2年目、公演の台本はまだない。一体いつ芝居になるのだろ。この一見無駄に思える時間が役者にとっていかに貴重かを串田さんは伝えたいのだろう。
 市民応援団は、食事づくり、健康の心配、宿舎からの送迎、自宅に招待などでワークショップを応援し、またへそ踊りに一緒に参加したりして交流を深めた。
 富良野は野外での公演と決定。大自然の懐でどんな花を咲かせるのか楽しみである。小さなまちからの発信、これはふらの演劇工房の挑戦でもある。







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