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4-3-4 船舶輸送ルート及び貨物の特定
《市場拡大のための方向性》
 前記したデータ等で良く分かるように、タイにおける沿岸海運の役割拡大のために肝要な点は現在道路にて輸送されている貨物をいかに取り込むかである。鉄道輸送貨物の役割は小さく、考慮しなくても良いと考える。
 道路が担う輸送貨物、即ち現在取り扱われているおよそ年4億トンの内、対象となる回廊を通過している約1億6,500万トンまたは総貨物量の41.4%が、沿岸海運が道路に代わって担うべき目標市場として想定される。
 現在の沿岸海運の輸送貨物量規模、約2,300万トンと比較すると、この目標市場がいかに大きいかが明確に分かる。仮にタンカーを利用して殆ど独占的に沿岸海運にて輸送されている撤積石油製品を除けば、沿岸海運で現在輸送されている貨物量は約122万トンにしかならない。
 この潜在目標市場においてその他海運の中で、なかんずくRO-ROフェリーネットワークの需要を明確にするためにRO-RO船の運航航路及び対象貨物品目を決定しなければならない。
 
《目標市場》
 前出の表4-6,7はRO-ROフェリーネットワークの潜在的目標市場である。各欄の数値は2000年における各地域間の道路輸送貨物量を示し、対象となる地域の道路輸送貨物量は1億64,66万トンまたは総量の41.4%である。しかし、この対象地域はRO-ROフェリー網が道路輸送に代わり得るための実現性を更に考慮しなければならない。
 一般的に、どのような場合にRO-ROフェリーの運航が道路輸送コストより優位になるかは、大量の貨物を、より長い距離を運ぶ必要がある場合である。日本の内航海運業のデータによると沿岸海運は1トン−キロメータの貨物を運ぶ場合、商業トラック輸送の僅か5分の1のエネルギーしか消費しない。対照的に船舶調達のためには大掛かりな初期投資、貨物積み込み、積み降ろしのためのインフラストラクチャーを必要とし、運航速度は遅い。
 このため、一般的に船舶投資における最適な条件は次の3条件を考慮しなければならない。
■出発地から目的地までの距離が100海里(または185.2km)以上であること。
■大量の貨物が期待できること
■港湾施設が利用可能なこと。
 
●条件1: 航続距離が100海里以上あること
 この観点から、先の表4-6に示すように例え大量の貨物量が潜在的にあっても、その理由だけでは目標地域は設定しない。加えて、中部県は地理的な特徴を考慮する必要がある。何故なら、中央県域に出入りする貨物は東部県、西部県及び南部県域に運ばれ、バンコクまで内陸水運で主に運ばれるからであり、目標とされる貨物はほとんどバンコクで積み降ろしされるためである。
 
表4-9: 高速道路による各地域間の距離
注:ソンクラー及びスラータニーへは主要道路により更に308kmが必要。
 
 この結果、航続距離の観点から下記の10航路を目標地域として抽出した。
・バンコクと西部県の間(往復)
・バンコクと南部県の間(往復)
・東部県と西部県の間(往復)
・東部県と南部県の間(往復)
・西部県と南部県の間(往復)
 
●条件2: 大量の貨物がある
 表4-6に示した2000年における各地域への道路輸送貨物量の配分から2005年における地域間の貨物輸送量を前章で記したGDPの伸び率を適用して予測した。予測では2003年から2010年の間の年平均成長率は4.4%、2000年から2002年の成長率は1.0181×1.06であったため、最終的に1.21倍となった。
 計算の結果、バンコク発で各地域に向かう貨物量は十分な量が見込まれ、西部県発でバンコクへ向かう貨物も相当量あるが、しかし東部県、西部県と南部県域間の貨物量はさほど多くない。これはバンコク地域が公式な統計でいわれるよりも貨物の発生地及び目的地として、もっと重要である事の証明でもある。外部の南部地方へ出入りする一般貨物トラックの荷動きの詳細な調査によれば、全荷動き量の70%強が首都圏バンコク地域発またはバンコク地域行きで(同地域の域内総生産GRPはGDPの約50%にもかかわらず)、同地域にはバンコク、サムットサコン、サムットプラカン、ナコンパトム、パツム、ターナイ、及びナチャブリを含んでいる。
 
表4-10 2005年の地域別道路貨物輸送量
(単位:千トン)
 
 西部及び南部県域内の品目別の道路輸送比率は表4-11に示すとおり。RO-ROフェリーにより取り扱う目標貨物は既に前章で設定済みであるため、目標貨物は表中の対応した網掛け欄で示す。表中に選定済みの品目がある場合、更に詳細な目標貨物量は表4-13に記述する。
 主要な目標市場の範囲内の、仮定された10海上航路は、新しい沿岸輸送サービスの主要な潜在市場をほぼカバーしていると考えられる。
 また、輸送貨物の形態を次の大きな形態に分類した。即ち、「バラ積」と「一般貨物」である。
 この2つの輸送形態の概況をそれぞれ表4-12に示す。
 
表4-11: 道路輸送貨物毎の比率
輸送貨物 比率(%)
金属製品 4.2
化学製品 0.8
その他製品 7.8
鉄鉱石、砂、砂利 1.3
一般貨物 12.6
加工食品及び飲料 7.7
その他農産物 10.0
海産物 13.4
建設材料、セメント 7.5
肥料 4.5
液体燃料 2.5
木材、合板 15.9
ゴム 4.7
油椰子及び関連製品 2.3
ココナッツ及び関連製品 1.9
米、トウモロコシ、タピオカ 2.9
  100.0
 
表4-12: 貨物グループの形態による分類
バラ積貨物 比率(%) 一般貨物 比率(%)
化学製品 0.8 金属製品 4.2
鉄鉱石、砂、砂利 1.3 その他製品 7.8
建設材料、セメント 7.5 一般貨物 12.6
肥料 4.5 加工食品及び飲料 7.7
液体燃料 2.5 その他農産物 10.0
油椰子及び関連製品 2.3 海産物 13.4
米、トウモロコシ、タピオカ 2.9 木材、合板 15.9
- - ゴム 4.7
- - ココナッツ及び関連製品 1.9
合計 21.8 合計 78.2
 
 この分類の結果として、目標市場で現在道路輸送されている約22%がバラ積貨物に分類され、78%が一般貨物に分類された。外洋航行用の曳船とバージによる運航は、バラ積貨物については競争力があるとし、一方RO-RO船は一般貨物の輸送において競争力のある地位を確保できると仮定した。
 道路輸送貨物別のシェア及び目標の10航路を考慮して、潜在的な貨物量は次の表のように計算できる。
 
表4-13: 目標10航路における潜在的貨物量
(単位:千トン)
 
 計算の結果、道路輸送による貨物をRO-ROサービスへと奪取可能な潜在的航路として、下記の6航路が挙げられる。
・バンコクと南部県間(往復)
・バンコクと西部県間(往復)
・東部県と南部県間(往復)
 
 既存の海上荷物の航路を表4-8に示したが、既に幾つかの定期船または不定期船サービスがある航路がある。その航路は下記のとおりである。
・バンコクとソンクラー間
・バンコクとスラータニー間
・チョンブリ〜ラヨーンとソンクラー〜スラータニー間
 
 これらの航路で現在運ばれている貨物は米、トウモロコシ、ゴム、木材(材木)、その他農産物、食料、鉱物及び建設材並びに肥料である。
 
●条件3: 港湾施設が利用できる事
 様々な貨物を運搬できる、ある程度の大きさのRO-ROフェリーは、少なくとも十分な水深でRO-ROフェリーが貨物の揚げ降ろし可能な岸壁を持つ海洋または河川港が必要である。
 現在、RO-ROフェリーが利用可能と思われる目標サービス地域の港湾は次の通りである。ただし、船舶のサイズによる。
 
表4-14: 目標サービス地域の港湾の能力
港湾名 水深(m) 岸壁長(m) 備考
バンコク 8.2 1,660 西岸壁
レムチャバン 14.0 350 一般埠頭
マプタプット 12.5 330 ラヨーン
スラータニー 4.0 96.8 タートン港
ソンクラー 7.2 1500 一般貨物
パッタニ 5.0 98 -
バンサファン 15.0 450 旧プラチュアップ







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