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6. おわりに
 大量生産・大量消費・大量廃棄社会では、生産・消費のあとの捨てられるゴミの処理を考えてこなかった結果、生産物が大量のゴミとして残され、今や陸に限らず海洋もゴミで景観・環境・生態系の破壊など深刻な問題になっている。
 海洋のゴミ問題は、一国・一地域の問題ではなく国、企業、個人のあらゆるレベルで取り組まなければならない社会問題にもなっている。
 わが国では、全国各地で十数年ほど前から全国約160カ所の海岸で約14,000人が年数回の海岸清掃活動を行っていますが、海洋のゴミ問題は解決されないばかりか、ますますゴミが増える傾向ある。
 本事業では、この様な状況の下できれいな昔の海を取り戻すことを願い、地域の人々が海洋環境に係わり易い活動の場として、「地域の海洋環境貢献活動プロジェクト」(健康な海づくりプロジェクト)を地域の海岸清掃組織、NPO、自治体等と協働で行い、地域活動の核となる拠点づくりを進めてきた。
 また、国内内外の海洋ゴミの機械による集積技術や処理技術について、調査・検討を行い、次の様な成果が得られた。
1)全国5カ所の活動拠点に地域活動の指導者と組織が構築でき、16回の活動プロジェクトに約2,400人が参加したことにより、地域における海洋環境貢献活動プロジェクトが実証され、ほぼ活動プロジェクトのシステム構成ができたことにより、継続的な実施体制の基礎固めができた。また、7回の活動プロジェクト説明会を開催し、数カ所の活動候補地が構築できた。
2)活動プロジェクトに地域通貨の一種である環境チケットを導入した事により、地域の海洋環境保全に対する市民、ボランテア、地域産業(商工会、観光協会等)、自治体等の積極的な参加を促進することができ、地域経済の活性化を図る効果があることが分かった。
3)海浜清掃と海の工作教室・海洋環境教室等を組み合わせたことで、海に関心が低かった地域の人々に海の環境に目を向ける機会を与えることができた。
4)国内外の海岸清掃機械は、平坦な海浜を対象にした機械の開発が主である。海洋ゴミが最も多く堆積し清掃作業がし難い岩礁・岩場等の危険地帯の清掃機械の開発例は見あたらなかった。
5)岩礁・岩場等の清掃技術について概念設計を行った結果、既存のロボット技術を組み合わせる事で対応可能であることが分かった。
6)国内外の海洋ゴミ処理技術について、問題提示の例はあるが塩分を含んだ海洋ゴミ処理装置の開発例は見あたらなかった。
7)海洋ゴミの内、海岸に大量に打ち上げられる海草・海藻等の自然ゴミの処理に苦慮している地域が多いため、その処理技術について検討を行った結果、塩分を含んだ海草・海藻の微生物分解が可能であることが分かった。
8)微生物分解処理装置の概念設計を行い、小型実験装置による基礎実験を行った結果、微生物分解による最終処理液が植物の肥料等に有用な硝酸塩等のミネラル成分を含み、海草・海草のリサイクルが可能なことが分かった。
 
 今年度は、稚内、気仙沼、常滑、加世田、宮古島において、地域と協働で「地域の海洋環境貢献活動プロジェクト」を実施し、地域社会が海洋環境貢献への係わりを持てる様な活動を進めると共に、海洋ゴミ集積・処理技術の検討を進めてきた。
今後、これまで培ってきた地域社会との信頼関係を基礎に、更に発展的活動を行うと共に、海洋ゴミ問題の解決のため地域の海洋環境貢献活動プロジェクトと機械力による海洋ゴミの集積・処理システムを組み合わせた循環型社会運用システムの構築を進め、海洋ゴミ問題解決に向けた循環型社会活動システムが実現する事を期待する。







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