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海洋白書 2004創刊号 日本の動き 世界の動き

 事業名 海洋シンクタンク事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


第8章
大型海洋性テーマパークの経営破綻と今後の海洋ツーリズムの展望
第1節 大型海洋性テーマパークの経営破綻
1 ハウステンボスとシーガイアの経営破綻
 2003年2月, ハウステンボスが会社更生法の適用を申請した。大航海体験館や観光丸等の施設をそろえ, 一時は内外から年間380万人の入場者があったものの, 1992年3月の開業以来経常赤字のまま今日に至った。工事費が膨張して初めから過大な有利子負債を抱える一方で, 入場者数は景気の失速で計画を下回った。ハウステンボスの経済効果は, 日本銀行試算によると間接部分を含め長崎県内総生産の5%に相当し, 三菱重工長崎造船所本体での県内総生産が3%であることに比較してもその大きさがわかる。
 また, 2001年2月, シーガイアの運営会社であるフェニックスリゾートが会社更生法の適用を申請した。その負債総額は関連会社を含めて3,261億円と日本のテーマパーク史上最大規模の倒産となった。シーガイアは, 1987年に施行されたリゾート法(総合保養地域整備法)の適用第1号であっただけに, リゾート法のあり方にも関心が寄せられることとなった。シーガイアの目玉施設のオーシャンドームは, 自動開閉式の屋根の下に, 人工の砂浜と波がリゾート気分を演出するものであった。初期投資が2,000億円と当初計画の3倍あまりに膨らんだのに対し, 来場者数は年間550万人の集客目標に遠く及ばず赤字経営が続き, 第3セクター経営の限界を露呈した。
 
2 海洋性テーマパークの問題点
 テーマパークの建設・運営には, 広大な土地と多額の設備投資が必要であり, 投資回収のため滞留時間を長くして入場者一人当たりの単価を増やす必要がある。テーマパークが全国で次々と誕生したきっかけは, 1987年6月に施行されたリゾート法であった。ゴルフ場, ホテル及びマリーナといった「3種の神器」と呼ばれる施設を持つ大型海洋リゾートが, 自治体の資本参加により全国に建設された。国土の約18%にあたる660万ha, 42地域がリゾート地域の指定を受けたものの, バブル崩壊後, 整備進捗率は約24%にとどまっている。対象施設全体の利用者数も, 1999年度の1億6,950万人から2001年度には1億6,007万人に減少し, 雇用者はピークの1999年には54,000人あまりだったのが, 2002年には46,780人に減少した。ハウステンボスの総入場者数も, ピークの1996年度には380万人だったのが1999年度以降は350万人台になっていた(2001年度355万人(うち海外客18万人)2000年度354万人(うち海外客22万人))。当初の目標の年間400万人は達成できず, 最近では招待客などが増え, 宿泊や買い物も含め1人の客が落とす金額も1995年度の11,940円から9,010円にまで落ち込み, 経営を圧迫していた。
 テーマパークは, 一般に初年度は物珍しさも手伝って集客できるが, 金利を返済し開業時の巨額の設備投資を回収していくためには, 何度も訪れるリピーターの確保が不可欠である。リピーターを増やすには, 新しいアトラクションなどで魅力をつくる必要があるが, 経営に余裕がないと追加投資もままならない。首都圏から遠く離れ人口集積も少ない九州で, 数多くの集客を続ける計画自体がやや無理だったといえるかもしれない。
 国内リゾート産業の不調の原因は, バブル経済を背景に土地の騰貴を当て込み, 付属の土地を住宅や別荘地などにして売却, あるいはゴルフ場の会員権の売却利益で投下資本の回収を考えた。それが地価の下落で立ちゆかなくなった。リゾート法について国土交通省は, 事業の見直し, 見込みのない施設の計画からの削除, 基本構想自体の廃止等を内容とする報告書をまとめた。バブル経済崩壊後の長引く不況下, 閉鎖されるテーマパークが全国で相次ぎ, いわゆる勝ち組とそうでないところの明暗がより鮮明になりつつある。「テーマパーク冬の時代」といわれるゆえんである。
 
第2節 国土計画と海洋性リゾート
1 国土計画と海洋性レクリエーション
 ナショナルベースの法定計画として作成される長期の国土計画は, 国土総合開発法に基づき作成される全国総合開発計画がその代表である。地域間格差是正を目的とする全国総合開発計画の作成は, 池田内閣時, 政府の所得倍増計画を承認するに際して与党から, 農業・工業間格差の是正を目的とした農業基本法の制定, 大企業・中小企業間格差の是正を目的とする中小企業基本法制定とともに, 付帯条件とされた。
 1962年に閣議決定された全国総合開発計画では, 低開発地域の観光開発は, 地域格差の縮小に貢献し, 都市及びその周辺において過剰利用状態におかれていた既存の観光地の混雑が緩和されることとなり, 都市生活者にとってより快適な観光が可能となるとしていた。その一方で都市観光開発は, 都市への主な観光旅行者である農山村漁村生活者及び海外からの観光旅行者にとって, 大きな効果が期待できることも記述しているものの, 海洋性レクリエーション・リゾートの発想はまだみられなかった。
 1963年, 中小企業基本法に先立ち観光基本法が制定された。「物見遊山に基本法とは何事だ。おこがましい」との風潮もあったなか, 自民党, 民社党, 社会党の議員立法により5番目の基本法として成立し, 格調の高い前文があるものとしては, 憲法, 教育基本法, 農業基本法に次ぐものであった。
 1969年に閣議決定された新全国総合開発計画では, 海洋性レクリエーションの発想が明確化された。国民総生活時間に占める戸外レクリエーション時間が, 1985年には1965年の約2倍に拡大すると予測し, 大都市の100km圏レジャーが500〜1,000kmレベルの観光に変質するとの判断のもと, 1985年に全国で必要とされる海洋性レクリエーションのための海岸線延長は約1,000kmとし, 10kmに及ぶ人工海岸の構成を中心とした大規模海洋性レクリエーション基地を数ケ所整備するとしていた。しかしながら, 自由時間増大等の国民生活向上により海外旅行が増大するという発想はまだ生まれていなかった。
 
図1-8-1 
大勢の人で賑わう海水浴場(大洗サンビーチ)
 
 1977年に閣議決定された第三次全国総合開発計画では, 増大する観光レクリエーションやスポーツの需要に対し, 定住圏構想の一環として, 海洋性レクリエーション地区等の整備を行うほか, スポーツ施設等の整備を図るとしていた。
 
2 第四次全国総合開発計画と海洋リゾート
 1983年はテーマパーク元年といわれる。4月に東京ディズニーランドが初期投資額1,800億円をかけて開業し, 7月には長崎オランダ村が開業したからである。それと同時に1983年は, 消費者に対して生活の力点をたずねる旧総理府の調査において「住生活」よりも「レジャー・余暇生活」を重視する消費者の割合が初めて上回った年でもあった。「物質的な豊かさ」より「心の豊かさ」に生活の力点をおく国民がはるかに多くなってきており, 余暇活動に対する認識も, 仕事を離れた「休養」, 「骨休め」として捉える消極的なものから, 各自の目的に応じ, 自己の可能性を試し, 新しい自分を発見する場として多種多様な活動を行うなどの積極的な意義を有するものになってきていた。
 1987年に閣議決定された第四次全国総合開発計画では, 国民一人当たりの余暇活動時間は2000年には1985年に比べ1.6倍に拡大すると予測し, 日常的な余暇活動のための空間づくりのため, 多極分散型国土を構築するとしていた。同年は総合保養地域整備法が施行され, 第四次全国総合開発計画も期待感をもってむかえられた。リゾートとは元来保養所のことであり, 国民が余暇等を利用して滞在しつつレクリエーション等多様な活動が行える場所として整備が進められることとなった。新全国総合開発計画のレクリエーションから第四次全国総合開発計画のリゾートヘと進化が見られたわけであるが, 長期滞在を念頭におくものの, 国民の休暇実態が変化しておらず, レクリエーションもリゾートも実際はあまり区別して意識されることはなかった。
 
図1-8-2 国民の仕事と余暇に対する意識
(出典:レジャー白書2003, (財)社会経済生産性本部)
 
表1-10 リゾート法による全国主要海洋性リゾートプロジェクト
都道府県名 承認年月日 プロジェクト名
宮崎県 1988. 7. 9 シーガイア
三重県 1988. 7. 9 新鳥羽水族館, 志摩スペイン村
岩手県 1989. 3.30 シーサイドキャピタルホテル1000
千葉県 1989. 4.18 水産ポートセンター, 名洗港マリンリゾート
長崎県 1989. 4.19 ハウステンボス
福岡県 1989.10. 4 マリノア
京都府 1989.10. 4 天橋立宮津ロイヤルホテル
熊本県 1990. 6.29 樋合マリンプロジェクト
滋賀県 1990.12.19 ビワコマイアミランド
香川県 1990.12.19 仁尾港マリーナ
和歌山県 1990.12.19 千里海岸総合リゾート, 和歌山マリーナシティ
愛知県 1991. 3.29 一色さかな広場
 
3 美しい国土の創造及び観光立国
 1998年に閣議決定された「21世紀の国土のグランドデザイン」では, 美しい国土の創造をより明確化した。開発発想の観光振興ではなく, 観光の振興が文化の創造に関する施策の一つだという発想にたっていた。これまでの観光リゾートは国内の観光客しか相手にしてこなかったが, 外人客をも観光リゾートの中に取り入れていこうと国際交流圏構想を打ち出したことにより, ソフトにもウェイトをおいた観光(ツーリズム)の重要性の再認識にもつながることとなった。
 
図1-8-3 厳島神社
 
 2003年1月31日, 第156回国会内閣総理大臣施政方針演説において, 小泉総理は「観光の振興に政府を挙げて取り組みます。現在日本からの海外旅行者が年間約1,600万人を超えているのに対し, 日本を訪れる外国人旅行者は約500万人にとどまっています。2010年にこれを倍増させることを目標とします。」と演説し, 外客誘致の重要性を力説するとともに, 関係閣僚会議を設けて, 関係行政機関の緊密な連携を確保し, 観光立国実現のための施策の効果的かつ総合的推進を図っているところである。
 

リゾート法
 総合保養地域整備法(昭和62年法律第71号)の俗称。この法律は, 良好な自然条件を有する土地を含む相当規模の地域である等の要件を備えた地域について, 国民が余暇等を利用して滞在しつつ行うスポーツ, レクリエーション, 教養文化活動, 休養, 集会等の多様な活動に資するための総合的な機能の整備を民間事業者の能力の活用に重点を置きつつ促進する措置を講ずることにより, ゆとりのある国民生活のための利便の増進並びに当該地域及びその周辺の地域の振興を図り, もつて国民の福祉の向上並びに国土および国民経済の均衡ある発展に寄与することを目的とするものである。
 
定住圏構想
 第三次全国総合開発計画で打ち出された構想で, 大都市への人口と産業の集中を抑制する一方, 地方を振輿し, 過密過疎問題に対処しながら, 全国土の利用の均衛を図りつつ人間居住の総合的環境の形成を図る構想である。







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