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海洋白書 2004創刊号 日本の動き 世界の動き

 事業名 海洋シンクタンク事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


第6章 急ピッチですすむ海上・港湾テロ対策
 2001年9月11日の同時多発テロ事件の結果, とくに米国は, その直後から翌2002年にかけて数多くの新たな国際テロ対策を次々と打ち出した。同事件が運輸手段を利用したこと及び将来大量破壊兵器の使用の可能性も懸念されたこともあり, これら対策には海上輸送分野も大きな位置を占めるに至った。とくに懸念されたのは, 船舶, 積荷, 乗客, 乗組員等に対するテロ攻撃, 船舶のテロ手段としての利用, 積荷(とくにコンテナ)に隠された危険, 世界の通商・貿易に対する威嚇等の可能性である。米国政府のイニシアチブは国内的なものから, 2国間及び国際海事機関(IMO)を通じた国際的なものまであり, いずれも異例のスピードで実行に移されたかまたは移されつつあり, ことに海運・物流関係各界に大きなインパクトをもたらしている。
 以下においては, これらの措置の主なものを, まず米国の立法的及びその他の措置を対外的効果の面を中心に概観し, 次いでIMOの動きをみることとする。なお, この他にも, 米国は, 国際労働機関(ILO)において新たなバイオメトリックス情報を含んだ船員の身分証明書の必要性を説いて, 現存関係条約(第108号条約)の改正を交渉中で, 近く新条約が採択される見込みである。
 
第1節 米国の対策
1 2002年海運保安法(Maritime Transportation Security Act)
 米国議会の上院には9.11事件以前から海事・港湾保安法案が提出されていたが, 同事件後, 同法案はテロ対策を盛り込んで修正され, さらに下院で別途提出・審議されていた海運テロ対策法案との調整が図られ, のちに一つの法案として一本化された。そして2002年11月14日, 議会はこれを「海運保安法」として採択し, 11月25日大統領の署名により成立した。
 同法は, 米国の船舶・港湾施設の保安強化を狙ったもので, 対象施設には水上輸送に関係したあらゆる種類の構造物・施設が含まれる。
 主な措置としては, (1)すべての施設のテロに対する脆弱性の評価, (2)これら施設及び米国水域内の船舶や貨物をテロ攻撃から守るための「海事安全保安チーム」の設置, (3)米国港湾に寄港する船舶の乗組員による米国指定の身分証明書携帯要求, (4)米国水域運航の商船等による船舶自動識別装置(AIS)の搭載, (5)米国領海を含む国際航路を航行する船舶による定期的位置情報送信を義務付けるための自動船舶追跡システムの開発・適用, などがある。
 さらに, 対外的に問題になりうる条項であるが, 国土安全保障長官に, 米国籍船が寄港するか, または米国に向けて船舶が出港する外国港湾において, テロ対策の有効性を評価させ, 当該外国港湾が効果的なテロ対策を講じていないと判断される場合には, 当該国に対してテロ対策強化の措置をとるよう提言させるとし, また当該港湾から到着する船舶の米国港湾入港の条件を規定できるとしている。
 
2 コンテナ保安イニシアチブ(Container Security Initiative)
 米国関税庁(現在, 関税国境保安局)は, 9.11事件後, 外国の米国向け貨物の積出港でハイリスクのコンテナをあらかじめ選別し, セキュリティ・チェックを行うことでそのテロリストによる利用を防止することを目的とした「コンテナ保安イニシアチブ」(CSI)を導入した。これは特定外国の関税当局との間の協定に基づいて実施されるもので, わが国関税局も2002年9月, 協定に署名した。米国に到着する海上コンテナ(毎年約600万個)の約3分の2は世界の20の主要なコンテナ積出港(メガポート)を出発ないし経由することから, とりあえずこれらの港を中心にCSIが実施されている。日本では東京, 横浜, 名古屋及び神戸各港がこれに含まれ, まず横浜港には数人の米国係官が2003年3月から派遣され, わが国係官によるチェック作業を支援している。(CSIは相互主義の下に行われ, 参加国は米国の港湾に同様作業のため係官を派遣することができ, わが国もすでにロサンジェルス・ロングビーチ港に派遣済み。)
 米国関税当局は, コンテナに関する機密情報を当該参加国と2国間ベースで共有するとされており, 大量破壊兵器等の疑いがあれば, 当該コンテナの米国への輸送は拒否され, 船舶の米国領海内への航行も禁止される。
 CSIには, すでに20のメガポートのうち18港, それ以外も合わせて23港が参加しており, 今後その他の主要港にも拡大することが予定されているが, EUにおいては, ロッテルダム, アントワープなどの参加港が他のEU港湾よりも対米向けに有利になるおそれがあるとして, 大きな政治問題となっている。なかには, 参加協定を結んだEU加盟国はEU法令に違反するとして, 訴訟を起こす動きも出ている。他方, 世界関税機関(WCO)は, 加盟国の全ての港湾において, CSIモデルに沿った制度の策定が可能としており, 同様制度の今後の拡大が予測される。
 
図1-6-1 東京港大井・青海ふ頭
わが国の主要な港湾でもCSIが実施されている
 
3 積荷目録事前提出規則(24時間ルール)
 米国関税国境保安局は, 上記CSIに加え, 2002年12月, 米国海域へ海上輸送される予定の貨物(バルク貨物を除く)に関する貨物申請書式を, 外国港での船積みの24時間前に米国税関に提出することを求める新措置を導入した(暫定期間を経て, 2003年3月より全面施行)。提出情報は, 貨物の明細, 運送人, 荷主の明細, 船舶情報など14項目にわたり, 原則として米国の電子自動マニフェスト・システムの利用が要求される。米国税関は, 受け取った情報に基づき, 貨物のリスクを査定し, 検査が必要と判断される場合には, 船積みの差止め命令を出す。また, 情報提出のない貨物は全て米国での陸揚げが禁止される。
 このいわゆる24時間ルールについては, 貨物の搬入と積荷までのリードタイムの拡大による在庫コスト等の増大, 港湾に滞留するコンテナの増大とそれに伴う港湾機能への過大な負荷, いわゆる「ジャスト・イン生産管理体制」に基づくグローバルなシステムへの影響など, 多くの弊害が指摘されており, EU諸国は米国に対し正式に抗議を行っている。
 わが国においては, 本ルールは極めて迅速に導入・施行され, 比較的スムーズに適応措置がとられている模様であるが, 関係者にとっての負担は多大なものであることは否めない。
 
4 船舶到着事前通報義務
 米国沿岸警備隊(USCG)は, 9.11事件以前から, 密輸・密航の取締り等の目的で, 米国に寄港する船舶に対して, 到着24時間前までにUSCGへの通報を義務づけていたが, 事件後USCGの下に船舶移動センター(National Vessel Movement Center)が設置され, 暫定的に同センターへの96時間前までの事前通報にとって替えられるに至った。同規則はその後, 2003年2月28日に最終的なものとされ, 4月1日から発効した。
 本制度のもとで, 同センターに提出を求められる情報には, 船舶, 船主, 運航者, 用船主, 積荷, 旅客, 乗組員, 関係条約適合証書類, 直前の5つの寄港歴等が含められている。また, 積荷については, 別途その目録を, 2003年7月1日よりは電子様式で, 米国税関に通報することを要する。







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