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第4章 静脈物流の問題点の整理
 循環資源の輸送機関を選択する上での問題点を把握するため、アンケート調査ならびに関連業者へのヒアリング調査に基づき、静脈物流の問題点の整理を行った。
 
4.1 アンケート調査による静脈物流の問題点の整理
(1)輸送機関選択上の問題点
 循環資源を輸送する際、輸送機関を選択する上での問題点は、以下の通りである。
 
・輸送機関を利用、選択する上での問題点は、「輸送機関別の料金を比較検討するための情報がない」ことであり、回答者の約3割が選択している。
・輸送機関の中では、「その他船舶」の料金がわからない企業が多い。次いで「フェリー」、「トラック」、「鉄道」の順に料金がわからないという企業が多かった。
 フェリーや鉄道などでは、基本料金をホームページ、業界誌等で公表しているが、必ずしも担当者には伝わっていないこと、また貨物船等の船舶やトラックによる収集運搬については、標準的な料金の公表もないこと、さらに営業担当者との接触がないことが要因と考えられる。
・「低コストで適正な輸送をする業者がわからない」についても、約2割弱の企業が選択している。産業廃棄物収集運搬業界では不法投棄等が問題となっている状況の下で、利用企業が、信用できる産業廃棄物収集運搬業者を選択したい、というニーズが大きいと考えられる。
 
表−4.1 循環資源を輸送する場合の輸送機関選択上の問題点
問題点 回答数 割合
ア.輸送機関別の料金を比較検討するための情報がない 35 29.4%
フェリー 7 5.9%
その他船舶 13 10.9%
トラック 6 5.0%
鉄道 5 4.2%
イ. 低コストで適正な輸送をする業者がわからない 21 17.6%
ウ. その他 22 18.5%
回答なし 41 34.5%
合計 119 100.0%
注:回答のあった北九州市の許可を取得した産業廃棄物処理業者、関東、九州離島の排出業者の合計119社に対する回答数の割合。
資料:北九州市の許可を取得した産業廃棄物中間処理業者、関東、九州離島の排出業者へのアンケート結果より
作成。
 
(2)輸送機関利用上の問題点(海上輸送、鉄道輸送)
(1)海上輸送
 海上輸送を利用して循環資源を輸送する場合の問題点は、以下の通りである。
 
・最も多い回答は、「営業担当者との接触がなく、循環資源の海上輸送を行っている企業がわからない」という点であり、少なくとも海上輸送を含む検討のニーズが多いと考えられる。
・「輸送する貨物量が少ない」「排出事業所、リサイクル事業所から港湾が遠い」という問題から、海上輸送に不向きであると考えている企業が多い。
・ある程度海上輸送を認識している企業においては、「ロットをまとめるための保管場所の確保が困難である」、「港湾を利用する際の手続が複雑である」等の問題点が指摘されている。
・海上輸送を利用したことのない企業からは、「港湾を利用する際の手続方法がわからない」という回答が多く寄せられた。
 
表−4.2 循環資源を海上輸送する場合の問題点(利用企業)
問題点 回答数 割合
エ. 営業担当者との接触がなく、循環資源の海上輸送を行っている企業がわからない。 23 19.3%
オ. 他の輸送機関に比べてコストが高い。 4 3.4%
カ. 他の輸送機関に比べて積替え回数が多い。 8 6.7%
キ. 混載が困難である。 6 5.0%
ク. ロットをまとめるための保管場所の確保が困難である。 16 13.4%
ケ. 輸送する貨物量が少なく海上輸送に適していない。 13 10.9%
コ. 輸送する循環資源の荷姿が海上輸送に適していない。 2 1.7%
サ. 港湾を利用する際の手続方法がわからない。 12 10.1%
シ. 港湾を利用する際の手続が複雑である。 5 4.2%
ス. 荷主、物流業者など関係者の同意を得られない。 0 0.0%
セ. 排出事業所、リサイクル事業所から港湾が遠い。 9 7.6%
ソ. その他 11 9.2%
注:回答のあった北九州市の許可を取得した産業廃棄物処理業者、関東、九州離島の排出業者の合計119社に対する回答数の割合。
資料:北九州市の許可を取得した産業廃棄物中間処理業者、関東、九州離島の排出業者へのアンケート結果より
作成。
 
(2)鉄道輸送
 鉄道輸送を利用して循環資源を輸送する場合の問題点は、以下の通りである。
 
・海上輸送の場合と同様に、「営業担当者との接触がなく、循環資源の鉄道輸送の窓口がわからない」という回答が最も多く、少なくとも鉄道輸送を含む検討のニーズが多いと考えられる。
・「鉄道輸送用容器と貨物量が合わない」「鉄道輸送用容器は種類が少なく、貨物の大きさに合わない」「排出事業所、リサイクル事業所から駅が遠い」という問題から、鉄道輸送に不向きであると考えている企業が見られた。
・海上輸送ではあまり見られなかったが、「他の輸送機関に比べてコストが高い」という問題点が目立った。
 
表−4.3 循環資源を鉄道輸送する場合の問題点(利用企業)
問題点 回答数 割合
タ. 営業担当者との接触がなく、循環資源の鉄道輸送の窓口がわからない。 19 16.0%
チ. 他の輸送機関に比べてコストが高い。 8 6.7%
ツ. 鉄道輸送用容器は種類が少なく、貨物の大きさに合わない。 4 3.4%
テ. 鉄道輸送用容器と貨物量が合わない。 7 5.9%
ト. 排出事業所、リサイクル事業所から駅が遠い。 8 6.7%
ナ. その他 12 10.1%
注:回答のあった北九州市の許可を取得した産業廃棄物処理業者、関東、九州離島の排出業者の合計119社に対する回答数の割合。
資料:北九州市の許可を取得した産業廃棄物中間処理業者、関東、九州離島の排出業者へのアンケート結果より
作成。
 
(3)業種別の主要意見
 アンケート調査における業種別の主要意見は、以下のとおりである。
 
・北九州市の許可を取得した産業廃棄物中間処理業者、産業廃棄物収集運搬業者への意見としては、その事業概要、輸送可能な品目を知りたい、より具体的に輸送費、見積書がほしい、という意見がほとんどである。
・行政機関への要望としては、循環資源の海上輸送に関する規制緩和と支援が多かった。
・港湾・船舶利用への意見としては、公共岸壁を利用できるようにしてほしい、という点と具体的に利用できる岸壁、その料金を知りたい、という意見が多かった。
・その他の意見としては、輸送コストが高い、保管場所が足りない、という指摘があった。
 
表−4.4 業種別の主要意見
資料: 北九州市の許可を取得した産業廃棄物中間処理業者、関東、九州離島の排出業者へのアンケート結果より作成。
 
4.2 ヒアリング調査による静脈物流の問題点の整理
 北九州市の産業廃棄物中間処理業者(リサイクル業者)、産業廃棄物収集運搬業者、関東、九州離島の関連業者が考えている、北九州市への循環資源の輸送に関する問題点は、以下の通りである。
 
(1)北九州市の中間処理業者
(1)循環資源の広域集荷について
・他地域において排出された循環資源を自地域へ広域輸送することへの抵抗感が、行政、一般市民にある。
・広域輸送に係わる収集運搬、積替え・保管の許可に時間がかかる。
・(コンテナやベール状での輸送ではなく)ばら積みによる輸送は、飛散、こぼれ等が生じることから、行政、一般市民には抵抗感がある。
・北九州市のリサイクル企業ということでは、関東などでは、知名度、信用がない。
・広域集荷のためには、帰り荷が確保されないと高コストになってしまう。
(2)規制緩和について
・船舶登録制度を見直し、同一の船舶を複数の会社が登録できる規制緩和が必要である。
・公共岸壁でのばら貨物である産業廃棄物の取り扱いできるような規制緩和が必要である。
・港湾への入出港時間制限の緩和が必要である。
・公共埠頭での産業廃棄物の積替え・保管の取得の条件の緩和が必要である。
(3)行政への要望
・港湾利用料金を低減してほしい。
・公共岸壁においてばら荷の産業廃棄物の輸送を行えるようにするなど、ハード、ソフト両面での支援をしてほしい。
・公共埠頭背後での循環資源の保管施設を整備してほしい。
(4)その他
・各市町村単位での廃棄物処理、リサイクルではなく、より広域的、オールジャパン的な枠組みでの仕組みやルールが必要である。
・日本各地で産業振興の視点からリサイクル施設が設置・増加し、リサイクル企業が過当競争を強いられる状況にある。
・国内で発生した廃棄物は、国内で処理、リサイクルを行うという考え方が重要である。
 
(2)北九州市の収集運搬業者
(1)循環資源の広域集荷について
・顧客は、コスト第一主義であり、輸送単価の低い輸送モードが採用され、環境を意識した輸送の実現が難しい。
・利用できる公共岸壁がないため、積出港、(私設)岸壁の選定が難しい。
・海上輸送の場合、大量ロットとなるため、公共埠頭での仮置き場の確保が必要であるが、難しい。
・港湾での積替え・保管場所の確保、許可の取得が困難であるため、排出地から多種・少量の循環資源を回収、リサイクル拠点への混載輸送ができない。
(2)規制緩和について
・廃棄物処理法における一般廃棄物、産業廃棄物の区分を見直して、一般廃棄物、産業廃棄物であれ同一の性質、状態の廃棄物の処理・輸送を可能とすることにより、廃棄物の輸送量を増やす必要がある。
・港湾、鉄道ヤード内において、コンテナの場合は、積替え・保管を可能とすることが必要である。
・収集運搬や岸壁利用等についての許認可、申請の統一化、簡略化、短縮化が必要である。
(3)行政への要望
・大ロットの集荷を行うために、排出する港湾においてストックヤードを確保してほしい。
・公共埠頭の直背後において積替え・保管施設を整備してほしい。
・関係省庁、自治体による一体となった取り組みをしてほしい。
・海上輸送ニーズのあるリサイクル企業の発掘、情報提供が望まれている。
 
(3)関東、離島の関連業者
(1)北九州市への輸送、リサイクルについて
・北九州市のリサイクル業者、輸送業者の情報がなく、判断ができない。
・リサイクル、輸送の企画書、見積書を提示する仕組みがないと、関東での集荷は難しい。
・九州離島から博多港経由で北九州市内のリサイクル施設に輸送しているが、北九州港へ直接、海上輸送したいものの、北九州港の公共岸壁の利用が難しい。







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