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2.3 陸上工事の実態調査
 陸上工事における電線布設に関わる実態調査を2種類の物件について調査した。調査対象物件の選定にあたっては以下の要件を満たすことを条件とした。
 
i. 工場など布設電線が外的要因により損傷を受けやすいと思われる物件
ii. オフィスビルやマンションなどの居住スペースを中心とする建築物件
 
 その結果、関係各位の協力を得て、以下の2つの物件について電線布設状況および端子台設置状況を調査した。
調査実施日:平成15年8月5日
a. 大井埠頭コンテナターミナル変電所(二次・三次)
b. フジクラ開発株式会社社屋
調査委員:神浦、木船、楠野、菅原(代理)、新田、村山、柳沢(代理)
事務局:関、東島、荒木
 
2.3.1 陸上における電線布設関係規則
 陸上における電線布設関係規則の調査として、「電気設備の技術基準」について調査を実施した。以下にその調査内容について、記述する。
 
規則条項 主要な規定内容
「電気設備に関する技術基準を定める省令」
第1章 総則
第3節 保安原則
第1款 感電、火災等の防止
 
【電気設備における感電、火災等の防止】
第4条
電気設備は、感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないように施設しなければならない。
【電線等の断線の防止】
第6条
電線、支線、架空地線、弱電流電線等(弱電流電線及び光ファイバケーブルをいう。以下同じ。)その他の電気設備の保安のために施設する線は、通常の使用状態において断線のおそれがないように施設しなければならない。
【電線の接続】
第7条
電線を接続する場合は、接続部分において電線の電気抵抗を増加させないように接続するほか、絶縁性能の低下(裸電線を除く。)及び通常の使用状態において断線のおそれがないようにしなければならない。
第3章 電気使用場所の施設
第1節 感電、火災等の防止
【配線の感電又は火災の防止】
第56条
配線は、施設場所の状況及び電圧に応じ、感電又は火災の恐れがないように施設しなければならない。
「電気設備の技術基準の解釈について」
第5章 電気使用場所の施設
第1節 屋内の施設
 
【低圧屋内幹線の施設】
第170条
低圧屋内幹線は、損傷を受けるおそれがない場所に施設すること。
【低圧屋内配線の施設場所による工事の種類】  
【がいし引き工事】
【合成樹脂線ぴ工事】
【合成樹脂管工事】
【金属管工事】
【金属線ぴ工事】
【可とう電線管工事】
【金属ダクト工事】
【バスダクト工事】
【フロアダクト工事】
【セルラダクト工事】
【ライティングダクト工事】
【平形保護管工事】
 
【ケーブル工事】
第187条
・電線は、ケーブル・・・であること。

・重量物の圧力又は著しい機械的衝撃を受けるおそれがある箇所に施設する電線には、適当な防護装置を設けること。

・電線を造営材の下面又は側面に沿って取り付ける場合は、電線の支持点間の距離をケーブルにあっては2m(人が触れるおそれがない場所において垂直に取り付ける場合は、6m)以下とし、かつ、その被覆を損傷しないように取り付けること。

・低圧屋内配線の使用電圧が300V以下の場合は、管その他の防護装置の金属製部分及び電線の被覆に使用する金属体には、D種接地工事を施すこと。300Vを超える場合は、C種接地工事を施すこと。ただし、人が触れるおそれがない場合は、D種接地工事によることができる。
【低圧屋内配線と弱電流電線等又は管との接近又は交さ】
第189条
・低圧屋内配線をケーブル工事により施設する場合、弱電流電線等又は管等と接触しないように施設すること。
【作業船等の室内の配線工事】
第197条
・作業船等の低圧屋内配線のケーブル工事には、JIS C3410「船用電線」に適合した、定格電圧0.6/1kVの船用ケーブルを使用することができる。
【高圧屋内配線等の施設】
第202条
・ケーブル工事による高圧屋内配線は、電線にケーブルを使用し、管その他の防護装置の金属製部分及び電線の被覆に使用する金属体には、A種接地工事を施すこと。ただし、人が触れるおそれがない場合は、D種接地工事によることができる。

・高圧屋内配線が他の高圧屋内配線、低圧屋内配線、弱電流電線等又は管等と接近し、又は交さする場合は、相互の離隔距離は、15cm以上であること。ただし、ケーブル工事により施設する場合において、ケーブルとこれらのものとの間に耐火性のある堅ろうな隔壁を設けて施設する等の場合はこの限りではない。
 
2.3.2 損傷を受けやすい箇所の保護状況
 陸上の電線は見学した範囲ではすべて無がい装電線を使用していた。陸上の電装工事は船舶の電装工事から見ると「やり過ぎ」、「手抜き」両方混在した工事法である(船舶と陸上のルールの違いにより、やむを得ないのかもしれない)。
 
(1)居住区以外の環境における保護状況
・暴露部の配線工事はすべて コンジット工事で施工している(参照:写真2.3.1)。
・電気室等は特に保護していない(ラック配線)。(参照:写真2.3.22.3.52.3.132.3.14
・屋外に設置されたキュービクル部への配線は 専用の電線トランクが確保され、電線は単に流し込んであるだけであった(参照:写真2.3.6)。
・船舶では水平部でも固縛が必要
・電線固縛は船舶では原則的に金属バンドを使用しているが、陸上はビニール(インシュロック)を使用していた(参照:写真2.3.2)。
・電線の固縛方法について気づいた点として、船舶では固縛幅が約100mm〜200mmで10本程度まとめて固縛するのに対し、陸上ではほとんど1本ずつ固縛していた(参照:写真2.3.6)。
 
(2)居住区での保護状況
・大井埠頭及びフジクラ開発(株)オフィスビル内の電装関係はケーブルラックを使用していた。
・居住区においてケーブルは天井、床下などにいんぺいされており、損傷を受けにくい。
 
2.3.3 電線布設時の引張り方法
 調査した陸上建造物内において「がい装あり電線」の使用は見られず、全て「がい装なし電線」であった。また、調査した陸上建造物内における電線布設工事では、以下の点が特に留意されているようであった。
 
(a)布設ルートの要所に多数個のコロを設置する。
(b)ウィンチによる布設には、引張り先端にはスイベル(より戻し器)等を用いて、電線にねじれが加わらないよう留意する。
(c)布設ルートの曲がり部には人員を配置し、ケーブルにしごきや極度の曲げ(許容曲げ以上)が加わらない様にする。
 
 特に太い動力線や引き込み線などは、外装のビニールシースが損傷しないよう工夫がなされており、引張らずに複数の人員が配線を手で持って移動しながら布設するなどの工法がなされている。
 以上の陸上建造物における電線布設工事に関する調査の結果を参考にするならば、船舶電装工事において「がい装なし電線」の布設を行う場合、上記の(a)〜(c)がそのまま有効かつ必要な手段となりうると考えられる。
 
2.3.4 電線布設材料・接続端子・工事方法
 調査対象物件:2件行い屋内・屋外を調査した。
 
(a)電線は陸上のためJIS Cによる単心及び多心線電線が使用されて「がい装有り電線」はなかった。特にフジクラ製6600V CV電線が目に入った(写真2.3.7、2.3.82.3.15参照)。
(b)電線の布設にあたり、屋内ではケーブルラック式で金属製の余裕あるバスダクトを使用し、屋外では金属管とプルボックスを使用して防雨性を有し雨水のたまらない構造になっていた(写真2.3.12.3.32.3.5、2.3.62.3.92.3.13参照)。
(c)接続端子は全て圧着端子となっており、導入部は防水性・防塵・ねずみ侵入等の対策を行っていた(写真2.3.10、2.3.11、2.3.122.3.16参照)。
 
 工事方法はわからなかった。







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