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4・6 表示器(指示器)
 現在最も多く用いられている表示方式は、PPI(平面位置表示:Plan Position Indication)表示である。これは、図4・28に示すように、CRTの掃引線をパルス電波の発射と同時に中心から外側に向かって一定の速度で偏向させ、かつ、掃引線の回転する方向を電波の発射される方向、すなわち、空中線の回転と常に一致するようにしたものである。このようにすれば物標の位置を表示面上に極座標として現すことができ、これをPPI表示といっている。
 表示系統の回路は、図4・29に示すように、トリガが発生回路、ゲート回路、掃引回路、アンブランキング回路、マーカ回路、ビデオ回路、船首方位輝線回路、回転同期回路、CRTとその付属装置等によって構成されている。
 
図4・28 送受信パルスとCRT偏向波形
 
図4・29 従来方式の表示系統図
 
 トリガ発生回路はマグネトロンで発振するパルスの繰り返し周波数を決定する発振回路で、このパルスがレーダーの動作の時間的基準となっている。したがって、このパルスは変調回路やSTC回路の起動パルスとしても、また、表示系統の他の回路の時間的基準としても用いられる。
 
 CRTの中心から外周までの距離、すなわち探知距離範囲は、0.5海里、1海里、3海里や10海里のように、探知したい物標の距離に応じて切り替えることができるようになっている。これを掃引時間について考えてみると、0.5海里では6.17μs、1海里では12.35μs、10海里では123.47μsの時間内に輝点を中心から外周まで掃引しなければならないことになるが、この探知距離に応じて時間幅を決める回路がゲート回路である。また、この掃引時間以外に生ずる不必要な映像は写し出さず、さらに掃引線の帰線を消去することも必要となる。これには、送信が休止している間はCRTがカットオフになるような電圧をかけ、探知時間の間だけカソードに負の電圧(あるいは第2グリッドに正の電圧)を印加してバイアスを浅くして、第1グリッドに信号入力があれば掃引線が輝点となって光るようにすればよい。これらの時間関係を図4・30に示す。
 一般にゲート回路には、トリガに同期したワンショット・マルチバイブレータ回路が使われている。
 
図4・30 表示回路の時間関係
 
 掃引の時間軸を作るための回路で、図4・31に掃引回路を示す。
 偏向コイルには、図4・32に示すような直線性のよいのこぎり波電流が必要である。これは、電磁偏向型のCRTを使用する場合、電子ビームは磁力線で偏向されるので、その偏位量が時間的に正しく比例するためには、磁力線の強さもまた一定の割合で増加しなければならないからである。そのためには、偏向コイルに流れる電流の大きさが時間的に比例すること、すなわち、その電流波形が直線的なのこぎり波であることが必要である。
 
図4・31 掃引回路と各部の波形
 
図4・32 偏向コイルに流すのこぎり波電流と掃引の関係







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