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シンボルツリー:花水木
ごあいさつ
 財団法人ライフ・プランニング・センターが発足して、2003年5月で満30年を迎え、ピースハウス病院は9月で満10年を迎えるに至りました。
 ピースハウスは独立型ホスピスの日本における第一号の施設として、当初はさまざまな困難に遭遇いたしましたが、ここ数年、地域の方々からホスピスケアに対する高い関心が寄せられるようになり、ケアの需要が高まり、入院ケアに加えて外来部門や在宅ケアサービスも活発になってまいりました。ピースハウス病院と1999年4月に開設した当財団の訪問看護ステーション中井とのスタッフの人的交流も定着し、継続ケアの充実が図られてまいりました。また、地域ホスピスケア研究会や緩和医療研究会には、近隣の医療福祉関係施設・団体の専門職の方々にお集まりいただき、学習の場が共有され、地域ホスピス運動の推進力となっています。
 10年の歳月を経て、施設設備の改修工事も随時行っておりますが、特に大きな工事として、2002年度には駐車場の設備拡大を行うことができました。庭の景観を損なうことなく、駐車スペースを広げられたことは大変幸いなことでした。
 
 さて、ホスピス緩和ケアが全国的な広がりを見せる中、教育の必要性がいっそう高まっております。教育研究所の主催する教育プログラムには多数の参加者が集い、特にこれから緩和ケアに従事する医師や看護師の研修依頼は急増し、教育的役割も一段と大きくなっています。
 2002年4月からは、全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会の事務局が、静岡県浜松市聖隷三方原病院よりピースハウスに移され、事務的連絡や年次大会の開催など、国内全体を視野に入れた活動も担っています。また、当財団が発足に寄与したアジア太平洋ホスピス緩和ケアネットワークの事務局はシンガポールに設置されましたが、西立野院長は理事として活動に協力し、当財団は財政的な援助も行っています。
 
 ピースハウスの活動には、常時約70名のボランティアがホスピスでの直接的な働きをしておられますが、そのほかにもホスピス運営のためのご寄付やフレンドの会員からの会費など、多大な経済的支援を寄せていただいています。さらに、ホスピスサポートチームの奉仕や府中花みずきの会の援助、そして、姫由美子さんによるチャリティーショーなど、大変多くの方々に支えられてきました。
 この秋には満10周年の祝いの行事が企画されています。また、10月には世界的規模のホスピス運動として、ハレルヤコーラスで地球を結び、ホスピスケアを支援する「BTボイシース2003」が企画され、これに対して当財団は日本における中心的役割を演じることとなっています。
 このように順調な歩みをたどり、発展をとげている状況をここに報告できることは当財団の非常な喜びであり、感謝でもあります。
 
(財)ライフプランニングセンター
理事長 日野原 重明
ピースハウスの役割
ピースハウスの理念
 
 ピースハウスはやすらぎの家である。ここで時を共にする人は皆それぞれの生き方を尊重する。
 
基本方針
 
1. 痛みなどの心身を悩ます不快な症状が緩和され、患者と家族がその人らしく時を過ごすことができるように、患者と家族の希望する場において、全人的ホスピスケアを提供する。
2. 愛する人を失う悲しみや、その他の心身の反応は自然なことと考え、ケアを始めたときから死別後まで、患者の家族への支援を行う。
3. 患者と家族のニードに応えるために、多職種の職員とボランティアでチームを構成し、互いに協力してケアを提供する。
4. 日本の実状に即したホスピスのモデルとなるように、より良いケアの実践、研究、教育を進める。
 
(1998年10月改定)
(2003年6月改訂)
 
 ホスピスケアのもっとも大切な目標は日常性の回復維持です。家庭的な雰囲気を醸し出す配慮が求められます。スタッフやボランティアは、患者・家族という主役・脇役を支える黒衣として、良い環境を提供し、苦痛を緩和し、思いやりを届けたいと思います。
 ピースハウスの活動は1993年9月の開院から満10年を過ぎようとしています。疾風怒濤の年代を過ぎ、成熟の年代になったところです。人の交代もあり、ケア提供の仕方にも変遷がありました。建物の改修や、庭園の整備、駐車場の拡張なども行ってきました。シャトルバスも運行できるようになりました。
 日本のホスピス運動の歴史は30年余に及びます。緩和ケア病棟は2003年6月には117施設、病床2229床に達しました。どこでも同じようなケアを提供することができるのであればこれは喜ぶべきことです。現実には内容が伴わない施設もあるようです。緩和ケアの質を保証するためのシステムの構築が目下の急務です。また、緩和ケアの専門家を育てる教育も欠かせません。これには、個々の施設における努力も大切ですが、全国規模での施策も必要です。
 ピースハウスは2002年4月から全国規模での施策に関わる全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会の事務局を引き受け、業務を鋭意遂行しています。開院10周年を迎え、地域社会との結びつきを強め、デイケアや在宅ホスピスケアの拡充、緩和ケア適応の拡大を目指してなお一層の努力をしてゆきたいと思います。今後ともどうかよろしくご支援ください。
 
院長 西立野 研二







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