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バンコク・スカイトレイン
大嶋 薫
 平成15年5月にミャンマーとカンボジアヘ出張した際、飛行機の乗り継ぎの関係でバンコクに一泊しました。その際、彼の地の高架鉄道「スカイトレイン」に乗ってみました。都市鉄道は建設コストが高いので、一般的に採算を取るのが難しいのですが、スカイトレインでは利用者を増やす工夫、コストを下げる工夫がいくつも見られました。乗車券システムを中心に、その工夫のいくつかを報告します。
 
1 スカイトレインの概要
 タイ国バンコク市のスカイトレインは、全線道路上に建設された高架鉄道で、1999年12月5日に開業しました。スクムビット線17Kmとシーロム線6.5Kmの2路線25駅から成り、両線は都心のサイアム駅で接続しています。全線複線電化されており、軌間は1,435mm、電気方式は直流750ボルト第三軌条方式、運転間隔は最短3分です。設計上の輸送需要は1日60万人を見込んで最大6両編成対応で設計されていますが、現在は3両編成で運転しています。
 
スカイトレインの列車
 
2 軌道構造
 軌道構造に関しては、コストダウンのアイディアではありませんが、LRTなどではなく標準規格の鉄道いわゆるヘビーレールを道路上に建設するに当たって、道路への影響を出来るだけ少なくする工夫について報告します。
 道路上部に複線鉄道の構造物を建設していますが、路面から軌道桁下面までの高さは約12mあり、日本の高架鉄道の倍近くあります。そのため高架橋の両側から日光が十分に路面に達し、道路上では頭上にヘビーレールの構造物があることは余り気にならない状態でした。電化方式が第3軌条方式で電車線設備(電化柱、架線など)がないことも頭上の構造を小さくし周囲への影響を軽減しています。見た目は鉄道というより高速道路の様です。走行音もスラブ道床、コンクリート桁、側壁で効果的に遮音されているようで、路面を走るバスのエンジン音の方が大きいほどで、頭上を電車が走行することには殆ど気付きません。正直言って道路上数メートルに建設しただけの鉄道に「スカイトレイン」とは随分大仰な命名だと思っていたのですが、実際に見てみると頭上遥か上方に線路があり「スカイトレイン」と言う名称もあながちオーバーではないな、と思いました。
 
背の高い高架線
 
 曲線部は、道路内で収まるように道路幅を最大限に利用しつつ急曲線で抜け、民地は通らないようになっており、線形の設計には相当苦労したものと想像されます。これにより民地通過による大幅なコスト増、手続きの複雑化を避けたものと思われます。
 
民地ぎりぎりまで迫る
 

※当協会調査部長







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