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○案件形成事業
調査団名:ミャンマー連邦国・港湾整備政策調査計画
対象国:ミャンマー連邦国
調査分野:港湾、内陸水運
調査期間(日数):15.3.9.〜15.3.15.(7)
 
【調査の概要】
 
調査の目的
 ミャンマー連邦国は、1948年にイギリスの植民地から独立して後、一貫して親日的な国であり我が国と緊密で良好な関係を有していた。また同国には大きな開発ポテンシャル・ニーズがあるため、他の東南アジア諸国と並んで我が国援助の重点国の一つとして位置付けられていた。しかし、1988年の軍事政権による政変以降は、我が国をはじめ西欧諸国からの経済・技術協力はベーシックピューマンニーズ(BHN)などの一定分野を除いて実質上停止している。
 本調査は、こうしたミャンマー連邦国における上記のような背景を踏まえつつ、同国の経済活動を支える上で重要な役割を果たしている水上輸送システム(ヤンゴン港とその他の8地方港湾ならびにイラワジ川を中心とする内陸水路網)の現状や課題を把握し、今後のあるべき姿について港湾・内陸水運関係者、日本国大使館および国際協力事業団と意見交換の上、わが国が関与できる技術協力等の方向を相手国政府に提案することを目的とした。
 
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調査内容
 ミャンマーの港湾取扱貨物(2001年;約1140万トン)の約9割はヤンゴン港(ヤンゴン川の河口から32km上流に位置する)で取り扱われているが、日本の1.8倍の面積の国土に生活する約5000万人の生活を支える物資の輸送にヤンゴン港以外の港湾が必要であることは言うまでもない。
 また、現在のヤンゴン港はヤンゴン川の水路の水深や急な曲率、あるいは河口部と港の入り口にある浅瀬(水深4〜5m)のため、入港可能な船舶の船長は167m、喫水は10mと制限されている。そのため、ヤンゴン港に入港できるコンテナ船はマレーシアのクラン港やシンガポール港からのフィーダー船に限られている。現在のヤンゴン港が抱える物理的問題点を解決することも当面の大きな課題である。
 大きな国土と人口を抱える国として、コンテナ輸送がフィーダー船のみであるという現状には問題があると言わざるを得ない。そのため、自国のみならず周辺諸国にもインド、ヨーロッパと西アジア地域との輸送距離を短縮することに活用できる大水深港の必要性が叫ばれてきた。ミャンマー港湾公社(Mynmar Port Authority: MPA)はその候補地として、ベンガル湾側に面するチャウピュー(Kyaukpyu)大水深港、ヤンゴンから南のアンダマン海側、アジア東西回廊に近いカレグアク(Kalegauk)大水深港、さらに南に位置するダウェー(Dawei)大水深港およびボクピン(Bokpyin)大水深港を挙げている。
 一方、ヤンゴン港とイラワジ川を結ぶトンチー運河は内陸水運網の一環として水上輸送に重要な役割を果たしている。運河建設当時は河床や堤防は良く防護され、内陸水運を支える水路として十分な機能を果たしてきた。しかし、近年、水路の維持管理が十分行われないなどが原因で堤防が崩れたり、洗掘などで一部の河床が深くなったため、ヤンゴン川との合流点の手前3.5km付近で広範囲に亘り大きな渦が発生し、旅客船の転覆事故が発生するようになった。このため、渦の発生を無くすることを目的とした事業も実施されてきたがその効果は発揮されていない。そこで、ミャンマー運輸省水資源河川改修局はヤンゴン港からイラワジ川に繋がる新しい水路の開発構想を立て、その実現を図る等の対応策を模索している。
 以上のように、水上交通網の整備はミャンマーの経済発展を図るためには欠くことができないものであるが、上記のような問題点を総合的に考慮した計画は策定されていない。
 
我が国技術協力の必要性
 港湾分野において、港湾当局以外の役所がそれぞれの管轄の施設を利用して民営港湾施設の建設・運営をさせている。そのため、投資された施設が必ずしも有効に活用されていないという状況が発生している。このような状況が発生している背景は、港湾全体の施設配置や運営政策について全国的な総合政策が無いことに起因していると考えられる。また、港湾・水上交通分野における専門知識が不十分であるため、時機を得た適切な対応策が取れないということも一因であると考えられる。
 ミャンマーにとって欠くことのできない水上交通全般について、内陸水運と港湾との連携を含め、全国的観点からの政策(航行安全の向上策を含む)を策定し、更にその政策に基づいて個々の港湾の整備計画を策定し、実行していくことが必要である。そのため、“Comprehensive Strategy Study on Water-borne Transport and its Safety”と題したTORのドラフトを作成し相手国政府と協議を行うとともに港湾・水理分野の専門家を派遣することについても意見交換を行った。これらのことによって人的交流を促進し、港湾分野における全体状況及びに問題点の解決を図るとともに、ミャンマー政府の本分野における技術レベルの向上を図ることが出来るものと思料する。
 
ブレークバルク貨物を扱っている
 
内陸交通用小舟







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