日本財団 図書館


○案件形成事業
調査件名:カンボディア国 国鉄近代化経営改善計画調査
対象国:カンボディア
調査分野:鉄道
調査期間(日数):15.2.26〜3.6(9)
 
【調査の概要】
カンボディア国鉄路線図
 
背景と現状
 カンボディア国鉄は、軌間1,000mm、単線、非電化の鉄道で、プノンペンからタイ国境ポイペトを結ぶ北線386km(ポイペト〜シソフォン間48km欠線)及びプノンペンからシアヌークビルに至る南線264kmの合計650kmの路線を有している。
 しかし、施設の老朽劣化、保守不足、内戦による破壊により線路状態が悪く、平均列車速度は20〜30km/hである。また、車両も不足しており、輸送力が小さく、列車運行の安全確保のための緊急復旧の投資が不足している。国鉄は、経営努力しており、赤字額が減少傾向であるが、さらなる経営改善を必要としている。
 
調査事項
 鉄道近代化および鉄道経営の観点から短期、中長期の行動計画を作成するため国鉄の財務状況、輸送および施設の現状、施設、将来計画等の調査を行った。
 カンボディア国鉄は総裁の下に4局17部からなる。組織全体として人員は1989年の2,700人をピークに減少し、現在1,300人程度である。収入の内、貨物輸送が全体の91%、旅客輸送は6%(2001年)と貨物輸送の比重が大きい。近年貨物収入が増加し、収支改善に寄与している。
 軌道、橋梁、車輌等あらゆる設備が不十分なため、北線、南線あわせて2日に8本の列車を時速30km程度の低速で運行している。この運行を今後も確保するためには軌道の修復、木製サンドルで仮受けした橋梁の修復が急務である。車輌は貨車主体であり、客車は少ない。旅客輸送の比重は小さいが、客車の整備状態は悪く旅客輸送量増加のためのネックになっている。車輌工場は近代化が遅れており、また補修部品不足のため車輌修繕の進捗が遅い。カンボディア国では道路によるトラック輸送が果たす役割が大きく、今後鉄道輸送の役割を高めることが必要である。カンボディア国鉄は車輌の導入、軌道、橋梁等の改善、トランスアジア鉄道の一部としてのミッシングリンクの復活等の短期、中長期の計画を有している。資金の調達方法、技術的問題の解決方法を含め、実現性を高めるための方策が今後必要である。
 
問題点
 内戦による破壊のため、軌道、橋梁、駅、車輌、通信設備等のあらゆるハード面で整備が必要である。また、現在の列車運行を維持する要員の資質も十分でなく、国鉄経営の近代化を達成するためには要員の教育及び増強も必要である。近年貨物輸送量が伸びており、国鉄の収支改善に貢献している。このため、貨物輸送における鉄道の優位性を確立し、貨物輸送量を増加させる必要がある。また、軌道・車輌等設備の改善を進め、安全確実な輸送環境を実現することで貨物輸送需要を喚起することが重要である。
 
今後の見通し
 南線は、現在円借款で整備中の「シアヌークビル港の増加する輸出入貨物輸送」を、また、北線は「アジア横断鉄道ルートの一部に位置づけられている」ことを考慮し、鉄道の緊急復旧、或いは近代化を図る必要がある。これらの実現のために、国鉄リハビリ・近代化のマスタープランを策定し、鉄道の役割を明確にしたうえで、ソフト面の強化及びハード面の段階的整備を図ることが重要である。段階的整備実現の方策として以下を提言する。
(1)国鉄リハビリ・近代化マスタープラン調査の実施
(2)鉄道経営専門家の派遣
(3)鉄道経営コースの集団研修(JICA)への参加
 また、これらとは別に毎日の安全確実な運行を確保するため、緊急プロジェクトとして緊急軌道修復の実施が必要である。
 
シアヌークビル行きの列車(南線)
 
内戦で破壊され橋梁(北線)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION