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●情報収集事業
調査団名:中近東・アフリカ B班
対象国:トルコ共和国
調査分野:鉄道
調査期間(日数):15.1.22〜2.1(11)
 
【調査の概要】
 
 
 
背景
 トルコ共和国のイスタンブール市は、人口1,200万人を擁する同国最大の都市である。都市内の公共交通はバスを主体とした道路交通さ、地下鉄やLRTなどがあるものの十分発達していない。人口の急増と急速な都市域の拡大に対応するため、現在軌道系交通システムの計画・整備が進行中である。
 イスタンブール市はボスポラス海峡を挟んで東西に2分され、今までは海峡の西側(ヨーロッパ側)に都市交通網整備の重点が置かれてきた。一方、ボスポラス海峡の東側(アジア側)地区では、ハイダルパシャ駅を起点に東方のアンカラ方面へ通じるトルコ国鉄(TCDD)以外には、LRT、地下鉄、モノレールなどの軌道系都市交通システムはなく、ヨーロッパ側に劣らぬ人口密集地を持つにもかかわらず、交通手段は主としてバスに頼らざるを得ないのが現状である。従って、イスタンブール市当局は、アジア側にも軌道系都市交通網の建設を積極的に進めようと、種々の計画を検討しているところである。
 
調査事項
1. イスタンブール市関係局等との意見交換
(1)都市交通整備計画の全体構想は、アジア・欧州側あわせた36プロジェクトから構成され、その建設の優先順位、区間長、需要輸送量および進捗状況が明確になった。
(2)イスタンブール市財務局の建設資金の確保は、IMFの指導により、優先順位の高い建設区間でも困難な状況にある。このため、受注者自らが政府保証の無い建設資金を準備することを前提にした受注契約になる。
(3)2005年までに整備する予定のU-G線を含む5路線について、イスタンブール市当局より、当調査団宛てに、F/S調査の実施要望書が提出された(イスタンブール市助役署名)。
 
 
2. 現地踏査
(1)整備計画による建設の優先順位は、資金確保がなされた路線順から実施せざるを得ないものの、何れの路線も人口密集地区である。
(2)現地踏査の結果、アジア側ルートのK-K線、U-U線、U-G線、ヨーロッパ側ルートのM-M線の4路線は、相互に一様な人口密集地区(2次元的)であり、交通インフラが今後の人口増加傾向を踏まえると決定的に不足していることが判明した。
 
問題点
 現在の経済情勢から、多額の資金を必要とするインフラ整備の実現には外国の資金力に頼らなければならないことは明らかである。イスタンブール市においては、都市交通網の整備、特に都市部経済区域の交通基軸を整備することが緊急課題である。イスタンブール市長および市当局は、プロジェクトの実現に非常に積極的で、日本のODA要請を行う可能性は極めて高いといえる。一方、市財務当局は、海外からの資金確保条件として、政府保証および銀行保証がなくとも、市の保証だけで実行できるようにするため、関係各国と折衝する意向である。この点に関しては日本側の貸し付け条件と調整を図る必要がある。
 
今後の見通し
 U-G線建設の妥当性を総合的に判断するため、手順としてF/S調査を実施することを強く提案する。これに関しては今回の情報収集調査で、市当局から日本側へF/S調査実施の要望が書面で提出された。F/Sが実施されれば、引き続いてこのF/S調査の結果に基づき、当該路線の建設実現に向けた資金確保の支援を検討することとなる。







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