日本財団 図書館


7. 現在の技術状況
 
7.1 メトロ
 
大カイロの地下鉄、メトロプロジェクト
 
−1号線(ヘルワン、タハリール、ラムゼス、エル・マルグ)
 
 この路線は1989年4月に全線開通して以来、路線の効率は輸送量の増加と共に向上し、以下の事項が達成された。
 
・路線の最適利用のために、ヘルワン〜サイダ・ゼイナブ間のすべての地上駅が修復された。たとえば、開業時に使用されていた仮の施設に代わり、13の駅が建設された。
・増加する輸送需要に対応するために、この路線で使用される車両の数を開業時の100台から1997年末までに130台に増加した。
・車両の運転間隔を、開業当初の7分からピーク時で3.5分へと短縮することで効率を向上させた。トリップの総数は、開業当初の300トリップから1日当たり400トリップになった。これにより開業した年の旅客数1日当たり57万人から1997年には140万人へと増加した。
 
 
−2号線(ショブラ・エル・ケイマ、ラムゼス、タハリール、カイロ大学、ギザ)
 
 ショブラ・エル・ケイマからギザまでの地下鉄メトロプロジェクトの2号線は、大カイロ圏における最大の都市交通プロジェクトの1つと考えられている。この路線は、市の中心を通過して、カイロと、カルビアとギザの行政地区を結んでいる。また、エジプトの歴史上はじめてのナイル川を横切るトンネルルートでもある。
 
・この路線の長さは19kmに達し18の駅がある。そのうちの12の駅が地下、4つの駅が地上、2つの駅が高架式の駅である。この路線は、路線の周辺に居住し働く400万以上の市民のために、高速で快適かつ安全な交通手段を提供している。この路線は1993年から建設中である。
 
7.2 バス
 
 次の表はバス網の主な特長を示している。
 
Operator Unit CTA GCBC Total/Average
Number of lines Lines 344 104 448
Line length (total) Km 5858 2598 8456
Average line length Km 17 25 18.9
Commercial speed (kph) Km/h 17.7 21.7 18.8
Vehicle x km supplied (million) V x km 177.5 70.5 248
Average distance between stops M 650 710 668
Average headway Minutes 24 28 25
Fleet Vehicles 1887 674 2561
 
7.3 ミニバス
 
 ミニバス網のサービスは、1985年にCTAにより開始され、乗客が全員座れるより快適な交通モードとして提供され、マイクロバス(相乗りタクシー)と競っている。
 
 当初、ミニバスの方が、すべての乗客が座れてバスより質がよかったが、その分料金は高かった。ミニバスは、相乗りタクシーに対抗するために相乗りタクシーより快適なものであった。1986年から1998年まで供給は70%増加し、トリップ数も3.5倍になった。現在では、ミニバスサービスは成功が災いして、立ちスペースの乗客が座席の妨げとなり、サービスの質の低下を招いている。現在、平均乗車率は110%である。収容能力の不足を考慮すると、ミニバス路線の幾つかを従来路線に変更する可能性は検討するに値するが、輸送する旅客数は少ない(全公共交通旅客の3%)。
 
 ミニバスは車両の運転間隔の点ではバスよりもサービスが良いが、速度の点ではそうではない。これは、ミニバス路線が主として交通渋滞が他より激しい人口密集地帯で運営されているということに関係している。ミニバスサービスでは、車両あたりの旅客の収容能力が低いために旅客数は少ない。次の表はミニバスサービスの特性を示す。
 
  1998 1986
Operator CTA CTA
Number of lines 74 42
Line length (total) 1012km 380km
Headway (average/min/max) 13min/5min 30s/48min 11min (average
Commercial speed 15.4km/h 15km/h
Annual vehicle x km (million) 42.4 24.8
Annual trips (million) 135.7 37.4 (107000/day)
Annual passengers x km (million) 1180  
Number of seat / minibus 25  
Average number of passengers/minibus 28  
Average occupancy rate 111%  
Fleet 750 minibus 498 minibus
TC Modal split 3% 1.9%
 
7.4 相乗りタクシー
 
 相乗りタクシーは、別名マイクロバスとも呼ばれ、民間ベースで運営され、時には、車の運転手が運営する大衆のための交通手段である。各行政地区は、1つの決まったルートに対してタクシーのライセンスを発行する。カイロとギザの行政地区の相乗りタクシーサービスの特長を次の表に示す。
 
  1985 1988
  Greater Cairo Cario Governorate Giza Governorate Greater Cairo
Operator Private companies Private companies Private companies Private companies
Number of routes 133 262,54 of which don't register any licenses 62 >324
Line length (total) 330 N/A N/A N/A
Commercial speed 21.3km/h N/A N/A N/A
Fleet 14000 9266 4300 >14000
Daily trip (Million) 1.27 N/A N/A 4.33
 
7.5 郊外鉄道
 
 郊外鉄道網は、実際には国有鉄道の一部である。郊外サービス専門の路線はないが、大カイロを通過する国有鉄道の路線は興味を引く郊外交通網を構成している。
 
 これらの路線は都市部の近くにあり、市の中心にもサービスを提供している。しかし、郊外鉄道のサービスの役割は、他の公共交通モードに比べあまり小さい。1日当たりの郊外サービス網の利用者数(カイロの主要駅を除く郊外のすべての駅で乗車する利用者数)は、15,000人を超えることはない。つまり、エルマルグまたはナセルなどの駅で乗車する1日当たりの乗客数は、地下鉄の五分の一にも満たない。エルマルグ、ショブラ・エル・ケイマまたはギザなどの最も乗降頻度の高い駅でも、1日当たりの乗客数は僅か3,500人である。
 
 列車の運行速度は主に保守の質に影響され、車両と軌道共に貧弱である。運転間隔が長く、快適性も理想とは程遠い。このように高価なインフラが、適切に運営された場合に得られる便益が、今も、カイロ市民の手の届かないところにあるのは残念なことである。しかし、郊外鉄道は、交通渋滞を解決するためには非常に有用である。平均トリップ距離が増加している一方で、道路の移動速度は交通の混雑のために急速に減少している。
 
7.6 連絡船
 
 ナイル川を渡る連絡船の8路線をCTAが運営している。連絡線の路線を2種類に分けることができる。1つは、ナイル川を横切る路線(4路線)でナイル川の2つの堤防の間を接続し、もう1つは、ナイル川に沿って運行する路線(4路線)である。連絡船網は1966年に6路線のサービスを開始した。当初、これらの路線は2つの堤防を接続するためにナイル川を横断した短い路線であった(路線当たり2km)。現在ではサービスが向上し、中にはナイル川を横断するだけでなく、ナイル川に沿って(北から南に)運航する連絡船もある。連絡船の速度は、時速約9.6〜14kmである。
 
 わずか8路線の連絡船網は、あまり発展せず、船着場の数も少ない。路線の平均距離は4.5kmと短いが、ナイル川(1〜2km)を横切るためである。ただし、1路線のみ10kmを超える。この路線の運行間隔は長いが(1時間を超える)、他の路線の運行間隔は短い(10〜20分)。
 
 連絡船網は、CTAの交通モード内では、開発が遅れ、最も速度が遅い。CTAが提供する車両キロは0.17%で、CTAが登録する旅客キロは0.03%である。
 
 その結果、1連絡船当たりの座席数は140あるが、平均乗船者数は12人で、乗船率が非常に低い。時間的にゆとりのある船を好む乗客がレジャーとして連絡船を使用している。
 
  1971 1986 1998
Number of lines 4 11 8
Line length 8.12 56 36
Vehicle x km per year 300000 870000 (estimated) 500000
Annual trips (million) 4.75 7.33 (estimated) 2.53
Modal split (TC) 0.30% 0.40% 0.17%
 
8. 大気汚染
 
 カイロは、交通が原因でもある大気汚染問題を抱えている。亜硫酸ガス、粒子状物質、窒素酸化物などの汚染物質の環境濃度が、常に世界保健機関(WHO)のガイドラインを超え、人間の健康に害があると考えられる濃度レベルの倍になることもある。政府は、いろいろな方法で大気汚染問題に取り組んではいるが、交通からの排出量を制限することは、車両の老朽化により難しい。車両の約30%が20年を超えており、これらの車両の生産のベースとなった技術は、さらに古いもので、排出量を削減するためにできることは極め少ない。交通による汚染減少に向けた努力が行なわれている。たとえば、無鉛燃料の導入、大気環境の監視と同時に検査・保守の実施、圧縮天然ガス(CNG)およびバイフュエル(複燃料)使用の車両への転換などである。しかし、平均交通速度の向上とその維持、車両の平均使用年数の短縮、クリーン燃料の技術の導入、使用車両数削減の促進など、さらに改善の余地がある。
 
9. 駐車場の管理
 
 路上駐車管理プログラムの開発を成功させることが、交通渋滞軽減戦略にとって重要である。巧みに練られた路上駐車管理プログラムは、交通管理と旅行需要管理という両刃の剣を組合わせたものである。このプログラムは、車両や歩行者の物理的障害となる駐車車両の問題を軽減することに役に立つ。旅行需要管理のツールとしても、自家用車使用の緩和に役立てることができ、車の利用者が他の交通モードに切り替えるのを促進する。
 
 地域のグループが、全般的な駐車場管理の戦略の一部として関わることが必要である。地元グループが単に駐車場計画の促進を支援する、あるいは、当局が地元住民や企業に対し販売することを支援するだけでなく、効果的な路上駐車の管理計画が、地元地域への再投資を可能にする収益をあげるようにするためである。適正に組織化された地元グループが、地元の駐車計画にとって最善の管理を行ない、料金を徴収することで、駐車場などの施設への投資が可能となり、その結果地域に利益をもたらすこととなる。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION