日本財団 図書館


附属書
 
有害水生生物及び病原体の移動を、防止、減少及び除去するためのバラスト水及び沈殿物の制御及び管理規則
 
A節 一般規定
 
規則A-1 定義
 
この附属書の運用上:
 
1 “基準日”とは、証書失効日に対応する各年における月日をいう。
 
2 “バラスト水容量”とは、バラスト水運搬ができるように設計されたいかなる多目的タンク、スペース又は区画をも含む、バラスト水の運搬、積載又は排出に用いられる船内タンク、スペース又は区画の総容積をいう。
 
3 “会社等”とは、船舶所有者、あるいは、船舶所有者から船舶運航責任を任され、かつ、国際安全管理(ISM)コードにより課せられたすべての義務及び責務を引受けるという合意の下の責任を担う経営者、裸用船者等の組織又は個人をいう。
 
[4 “協調水域”とは、地域又は亜地域協定を通じて行動する単独又は複数の締約国により指定された、バラスト水交換が管制される海域又は海域の一部をいう。]
 
5 “建造された”とは、建造段階の次のいずれかのものをいう。
 
.1 キールが据え付けられた段階
 
.2 特定の船舶と確認し得る建造が開始した段階
 
.3 当該特定の船舶について、50トン又は全建造材料見積もり重量の1パーセントのいずれか少ないものが組み立てられた段階
 
.4 大改造中の段階
 
[6 “主要な改造”とは、[後日作成]をいう。]
 
7 “最も近い陸地”
‘最も近い陸地から’の用語は、1973年海洋汚染防止条約及び1973年海洋汚染防止条約の1978年議定書、あるいは他の後続条約におけるものと同じ意味である。
 
規則A-2 一般適用
 
 他に別段の規定がない限り、バラスト水排出については、この附属書の規定に従ったバラスト水管理を通じて実施しなければならない。
 
規則A-3 適用除外
 
 以下のいずれか場合にも、規則B-3の要件又はC節に従って一締約国が採用したいかなる追加方策も適用してはならない。
 
1 緊急状況下における船舶安全及び海上人命救助確保のために必要な、バラスト水及び沈殿物の取入れ又は排出
 
2 船舶及びその設備の損傷により生じた偶発的なバラスト水及び沈殿物の排出
 
.1 損傷発生又は排出発見前後に、損害又は排出を防止又は最小化するための、あらゆる合理的予防措置手段がとられたことを条件とする。
 
.2 船舶所有者、会社又は責任士官が、故意又は無謀に損傷を引き起こした場合を除く。
 
3 船舶からの汚染事故の回避又は最小化を意図した、バラスト水及び沈殿物の取入れ又は排出
 
4 船内のバラスト水及び沈殿物のすべてを取り入れた場所と同じ場所における、当該船舶からの、取入れ場所で取込んだバラスト水及び沈殿物の排出。 ただし、他の場所からのバラスト水及び沈殿物と混合していないことを条件とする。 当該混合が発生した場合には、他の区域で漲水されたバラスト水については、この附属書に従ったバラスト水管理が必要になる。
 
規則A-4 一締約国による特別許可
 
1 単数又は複数の締約国は、それらの管轄下水域内において、この条約の他の個所に含まれる要件に加えて、[いかなる規則D-1又はD-2適用要件]の除外も許可することができる。
 しかしながら、次のすべての条件を満足すること。
 
.1 [2つの]特定の港又は場所の間を航海中の船舶、あるいは、もっぱら[2つの]特定の港又は場所の間を運航する船舶への許可。
 
.2 [1年を超えない期間で有効][定期的見直し条件]
 
.3 第1.1項で特定の港又は場所の間以外のバラスト水又は沈殿物を混合していない船舶への許可
 
.4 機関策定の危険性評価ガイドラインに従った許可
 
2 第1項に従った許可については、締約国々に関連情報を回章に付すために機関に連絡した後[6ヶ月]までは、有効としてはならない。
 
3 この規則の下のいかなる許可も、近隣又は他の国々の環境、人間健康、財産又は資源に対し、危害又は損傷を与えてはならない。 当該締約国は、不利な影響を与えるであろうと判断するいかなる国に対しても、確認された懸念事項の解決を目指し、相談しなければならない。
 
4 この規則の下のいかなる許可についても、バラスト水記録簿に記載しなければならない。
 
規則A-5 同等の応諾
 
 長さ50米未満で、最大バラスト水容量8トン(metric tones)の、単に娯楽又は競技に用いられるプレジャー艇、あるいは主として捜索救助に用いられる小型艇に対するこの附属書への同等の応諾については、機関策定のガイドラインに従って決定されなければならない。
 
B節 船舶の管理及び規制要件
 
規則B-1 バラスト水管理計画
 
 各船舶は、主官庁が承認したバラスト水管理計画を、船内に所持かつ履行しなければならない。 バラスト水管理計画は、機関が策定したバラスト水管理計画ガイドラインに基づいたものでなければならない。バラスト水管理計画は、個々の船舶について具体的なものであり、また、少なくとも以下の各要件を満足しなければならない。
 
.1 条約が要求するバラスト水管理作業に関連して、船舶及び乗組員の安全対策を詳述すること。
 
.2 条約で明示の、バラスト水管理要件及び補足バラスト水管理実施の履行のためにとるべき措置について、詳細に記述すること。
 
.3 沈殿物の処分についての手順について詳述すること。
 
(a)海上
 
(b)寄港国要件に従った、港内又はdry-dock
 
.4 船上バラスト水管理作業を実施する水域の沿岸又は寄港国の当局と、当該作業について調整する手続きを含むこと。
 
.5 当該計画の適切な履行を確保する船上責任士官を任命すること。
 
.6 条約の下に規定される船舶のための報告要件を含むこと。
 
.7 船舶の日常語で記載すること。 使用言語が英語、仏語又はスペイン語でない場合、これらの一言語による翻訳文を含むこと。
 
規則B-2 バラスト水記録簿
 
1 各船舶は、船内に、バラスト水記録簿を所持しなければならない。当該記録簿については、電子記録システムとすることもでき、少なくとも付録IIに明記の情報を記載しなければならない。
 
2 バラスト水記録簿への記入については、最後の記入がなされた後、少なくとも2年間船内に保持し、その後少なくとも3年間は会社等の管理下におかなければならない。
 
3 規則A-3、A-4又はB-3.6に従ったバラスト水排出が生じた場合、あるいはその他の点で条約により除外されない例外的バラスト水排出が生じた場合、当該排出の状況及びその理由について、バラスト水記録簿に記述しなければならない。
 
4 バラスト水記録簿については、曳航下の無人船舶の場合を除き、すべての正当な検査時に容易に応じられるように保管し、かつ、船内に保持しなければならない。
 
5 バラスト水管理関連各作業については、遅滞なくバラスト水記録簿への記録を完全なものとしなければならない。各記入については、一人又は複数の当該作業関連責任士官が署名しなければならず、また、船長は、終った頁毎に署名しなければならない。 バラスト水記録簿には、船舶の日常語で記入しなければならない。バラスト水記録簿への記入語が、英語、仏語又はスペイン語でない場合、これら3ヶ国語の内の一言語による翻訳文も記入しなければならない。
 
6 締約国により正式に認可された職員は、この規則が適用されるいかなる船舶について、当該船舶が当該締約国内にある港又は沖合ターミナルにいる間に、船内のバラスト水記録簿を点検し、当該記録簿記入事項のコピーをとり、かつ、船長に対し、正コピーであることの証明を要求することができる。 このように証明されたいかなるコピーも、司法訴訟手続きにおける記入内容の事実証明として、取り扱われるものとする。 バラスト水記録簿の点検及び証明付コピーの取得については、船舶に不当な遅延を生じないよう、できる限り迅速に実施されなければならない。
 
規則B-3 船舶のバラスト水管理
 
1 [発効日+3年][2009年]より前に建造された船舶:
 
.1 [1,500〜5,000]m3 のバラスト水容量の船舶については、[発効日+3年][2009年]の当該船舶引渡し基準日以前に、規則D-1又はD-2に規定の基準以上のバラスト水管理を実施しなければならない。 [[発効後8年][2014年]の引渡し基準日までは、規則D-1又はD-2に規定の基準以上のバラスト水管理を実施しなければならず、その後については、規則D-2に規定の基準以上を満足しなければならない。]1
 
.2 [1,500]m3未満、又は[5,000]m3 より大きなバラスト水容量の船舶については、[発効日+3年][2009年]の当該船舶引渡し基準日以前に、規則D-1又はD-2に規定の基準以上のバラスト水管理を実施しなければならない。 [[発効後10年][2016年]の引渡し基準日までは、規則D-1又はD-2に規定の基準以上のバラスト水管理を実施しなければならず、その後については、規則D-2に規定の基準以上を満足しなければならない。]2
 
2 [発効日+3年][2009年]以後に建造された船舶:
 
.1 [5,000]m3未満のバラスト水容量の船舶については、規則D-2に規定の基準以上のバラスト水管理を実施しなければならない。
 
.2 [5,000]m3 より大きなバラスト水容量の船舶については、[発効日+5年][2011年]以前に、規則D-2に規定の基準以上のバラスト水管理を実施しなければならない。
 
3 この規則の第1及び2項については、機関により策定されたガイドラインを考慮してデザインされた受入施設に排出されるバラスト水には適用されない。
 
4 この規則の第1及び2項に従ってバラスト水管理(すなわちバラスト水交換)を実施するか、又は規則D-2 の基準を満たすバラスト水交換を用いる船舶については、以下の事項を遵守しなければならない。
 
.1 可能な場合には常時、機関策定のガイドラインを考慮して、最も近い陸地から[200]海里以上かつ水深[200]メートル以上の水域で、バラスト水交換を実施すること。
 
.2 第4.3項に規定されている場合を除き、この規則第4.1項に従ったバラスト水交換実施が不可能な船舶の場合には、第4.1項に述べられているガイドラインを考慮して、最も近い陸地からできる限り離れて、また、すべての場合において、[最も近い陸地から[12][50]海里以上離れて][かつ、水深200メートル以上で]バラスト水交換を実施しなければならない。 3
 
[.3 協調水域:
 
.1 協調水域を設置しようとする単独又は複数の締約国は、バラスト水交換の実施可能区域又は禁止区域を指定することができる。
 
.2 協調水域については、関係国の水文学的、生態学的又は文化的特徴に関する理由から指定することができる。
 
.3 協調水域には、バラスト水で運搬される生物の影響を有意義に制限するであろうという海洋学的理由により、バラスト水交換に適した明細な区域を含むことができる。
 
.4 協調水域の緯度経度及びバラスト水交換のため指定された区域明細については、協調水域内における船舶への要件の効力発生日の少なくとも[6ヶ月]前に、機関に連絡しなければならない。]
 
.4 第4.1又は4.2項に記載の距離又は水深におけるバラスト水交換実施が不可能な船舶の場合、寄港国は、当該船舶に対し、第4.1項に述べられているガイドラインを考慮して、寄港国管轄下の指定区域でのバラスト水交換実施を許可することができる。ただし、近隣又は他の国々の環境、人間健康、財産又は資源に危害を与えないことが寄港国許可の条件となる。
 
.5 船舶に対し、この規則第4.1項の個々の要件に応諾するため、予定航路からの離路又は航海の遅延を要求してはならない。
 
.6 バラスト水交換実施船舶に対し、その船の船長が、当該交換について、悪天候による船舶の安全性、復原力、乗組員又は乗客への脅威、あるいは船舶建造上のデザイン、設備故障又は他の例外的条件に脅威を与えることになると合理的に判断した場合、適用される第4.1、4.2又は4.4項への応諾を要求してはならない。
 
.6 船舶は、第6項に述べられている事由で、第4.1、4.2又は4.4項を遵守できない場合、その理由をバラスト水記録簿に記入しなければならない。
 
規則B-4 船舶の沈殿物管理
 
1 すべての船舶は、バラスト水を運搬するよう指定された区画から、その船舶のバラスト水管理計画の規定に従って、沈殿物を除去又は処分しなければならない。
 
2 規則B-3.2 で述べられている船舶については、機関が策定するガイドラインに基づいて、沈殿物の取入れ及び好ましくない策略を最小化し、沈殿物除去を助長し、かつ、沈殿物の除去及びサンプリングができるアクセスを提供するように、設計かつ建造しなければならない。 規則B-3.1 で述べられている船舶については、実行可能な限り、この規定を遵守しなければならない。
 
規則B-5 士官及び乗組員の義務
 
 士官及び乗組員は、当人が乗船する船舶固有のバラスト水管理の実施における当人の義務について、また、義務に応じてその船舶のバラスト水管理計画を熟知しなければならない。
 

1 最終節の鍵括弧内文章は、緩和(grand fathering)選択肢を反映している。全鍵括弧が取り除かれ場合には、船舶の寿命に対する緩和が示される。
2 脚注1参照
3 括弧内選択肢については、組み合わせも可能。これら選択肢間の最終的選択時においては、短航海問題も検討されるべきである。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION