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海事の国際的動向に関する調査研究事業報告書(海上安全) 別冊 AISの国際的動向に関する調査研究

 事業名 海事の国際的動向に関する調査研究
 団体名 日本海難防止協会 注目度注目度5


4 AISを活用した運河内の航路管制
(1)AIS関連施設
イ 基地局
A 現在運河中央に送受信局1基、運河出入り口にそれぞれ受信局1基の計3局が整備・運用されている。これにより、運河内はもちろん、運河入り口約40海里沖合いまでカバーしている。今後それぞれのバックアップ用として1基づつ対に整備し最終的には6基体制とする予定。
B これら基地局はスウェーデン・サーブ社製を採用。他社のAIS機器は未だ開発中の部分が多く信頼性に欠けるため安定性のあるサーブ社製のものとした。
ロ 船舶移動AIS局
A パナマ運河通航船
・ACPは2003年7月1日以降、パナマ運河を通航する総トン数300トン以上又は全長20m以上の船舶はAISの搭載を義務付け、SOLAS条約に基づく搭載期限までは未搭載船にはACPが携帯式のAISを150ドルで貸し出している。
・運河通航中、本船に乗船したパイロットがAIS搭載船の場合には持参した専用PCを接続し使用、未搭載の場合には携帯式AISを船橋内にセットアップして使用する。
・専用PCにはパナマ運河における詳細な情報(浅瀬、航路標識など)を掲載したパナマ固有の電子チャートがインストールされており、右海図にAIS搭載船等の位置情報が表示される。
B 運河内の航行船
現状、運河内を航行する小型船等に対しては、通航船優先の原則を内容とする運河内の航法の規定を設けている。将来的には、これらの船舶に対してクラスBのAISの搭載を義務付けることとしている。
ハ レーダー位置情報・気象情報
A 運河出入り口にあるレーダーで取得した船舶の位置情報や気象情報等は、デジタル化されAISシステムに取り込まれ、バイナリーメッセージにより送信されAIS情報と同一画面で表示される。
B 日本のゼニライトブイ社がブイなどにAISを整備し気象情報などを発信するというアイディアは非常に興味があるが未だ高価なため、今後安価になれば採用の可能性もある。
(2)CTAN(Communication, Traffic Management and Navigation system)
イ パナマ運河では、従来から米国運輸局のヴォルペ(VOLPE CENTER、Department of Transportation, USA)とパナマが共同開発したCTANというシステムを採用している。CTANは自動的に位置を発信するシステムという点で基本的にはいわゆるAISと機能を有す。ただし船首方位がCTANでは確認できないこともあり、その点でAISには劣る。CTANはセントローレンス水路でも使用されている。
ロ CTANシステムの基地局は6局あり今後1局増設する予定。現在ACPが保有するタグボートにはCTAN送受信機が整備済であるが、CTANシステムとAISシステムは完全に情報の融合が図れており、MTCCをはじめ陸上で監視するPC、現場のタグボートのPC、パイロットが使用するPCの画面上においては、双方の情報を同一のディスプレイで表示することができる。
ハ 船上でのAISアンテナ搭載位置の入力が正確でないと狭い場所では使えない。
(3)AIS搭載義務化の効用とAISの活用
イ パイロット、タグボートの運行管理
 これまでパイロットが乗船した段階からでしかAISを通じての船舶の位置が把握できなかったが、AIS搭載義務のおかげで運河入域前から船の位置を把握でき、運河通航サービスを提供する上でのパイロット・タグボートの効率的な配備に貢献している。
ロ パイロットの負担減等
 これまでは、AISコンテナをパイロットが持参して乗り込み、自分で配線等を行い使用しているが、コンテナ自体の重量が重く、またセットアップと解除に手間がかかる点、更に頻繁に持ち運ぶため機器の故障が多数あり維持管理に時間とお金がかかる。その意味から、AIS搭載船がパイロットPC用ソケットを設けることにより、パイロットは専用PCを持参するだけでAIS情報を活用しながらパイロットできるようになった。
ハ パイロット上の情報ソースとして活用
 運河内の狭い箇所を行き会うとき、事前に会合予定船の詳細、会合予定時刻、場所についてパイロットが情報入手できるので、現場においてパイロット同士で通過方法(どちらが先にいくか)につき調整を行ない、速力調整、待機場所の決定など無駄のないかつ安全な運行に大きく貢献している。
ニ 通航の完全事前予約制
 AIS、ロングレンジトラッキングを活用することで、飛行機チケットの事前予約のように通過順序、出入域時刻の完全事前予約制をとることも考えている。これにより、会社側としては人、物、閘門の運用の効率化が図れる。
ホ システム・セキュリティ
A バイナリーメッセージはプロトコールなので、普通に受信すれば数字の羅列。特別なソフトをPCに組み込み見えるようにしている。これも一旦暗号化することも可能だが、今はやっていない。
B VHFは簡単に干渉できるので、その意味で脆弱だとは思っている。
(4)AISを通じての情報入手・提供
イ 通航船からの情報
 船からAISを通じて送信されてくる情報の信頼性は極めて低く、本船の長さなどの要目の入力ミスや、積荷、目的地など航海士がマニュアルで入力する部分もでたらめなものが多い。今は運河公社としては特に厳しく指導等を行ってはいないが、マーケット部が物流に関する情報取り纏めする上で、今後厳しくしていくことが考えられ、例えば誤った情報を発信している船にはレターを出して改善要求する等の措置を行うこととなる。
ロ MTCCからの情報提供
A 現在は気象レーダーや観測点から収集した気象情報や、浚渫船の情報(航路のどの位の海域を占有しているかなど)等をMTCCから定期的に、また、パイロットからの求めに応じ種々の情報を、UHFを使ってボイスで提供している。
B 今後は、バイナリー・メッセージを使い、風向・風速等の気象情報、浅水部情報、衝突の可能性を警告するアラート、仮想ブイ情報、浚渫地や地すべりの発生した海域をマーキングした情報などを発信し、パイロットのPCで閲覧できるようなシステム構築を行う予定。バイナリー・メッセージのフォーマットは、セントローレンスで使用しているものを参考とする予定。
ハ 情報の共有
 現在パナマ運河内で構築されているCTAN、及びAISのネットワークには、ACPの職員、つまりMTCC、及びパイロット等からしかアクセスできない排他的なネットワークとなっている。運河内の航行安全と効率的な運用に責任を有するACPの情報であるとの立場から、システム・セキュリティの面からも今後も外部からのアクセスを可能とする予定はない。
 運河の最狭隘部を航行するパナマックスに乗船し、運河内でのパイロットのAIS活用状況を視察しパイロットから情報収集したところ次のとおり。
イ AISのディスプレイには、航行船舶が電子チャート上に表示され、○は通行船、□はタグボート、△はランチで表示される。通航船は閘門通過順に北向きは奇数の数字で、南向きは偶数の数字でナンバリングされる。パイロットは、画面上のアイコンを操作することで、行き会い船の船名等及び該船との会合位置及び時刻が瞬時に計算され表示される。
ロ 最狭隘部での大型船同士の行き会いが生じないようにMTCCで予め調整されているが、その他の海域では、AISの機能を活用し、パイロット同士が無線を使い最終的な航過位置・待機場所の調整を行う。
ハ ちなみに、最狭隘部では運用実験として、船社の協力を得てパナマックスを行き会い航行させる実証実験を実施し、行き会う場合の相互干渉の検証及び操船に関し、速力や深さなどを考慮した技術的な検討・検証を実施し成果を得ている。
 
5 パナマ運河内のセキュリティ
(1)SOLAS条約改正に伴う体制強化
イ 従来からACPでは、閘門施設やMTCCなど重要施設にはフェンスを張り、施設の出入り口には拳銃を所持したガードマンを配置し入門規制等を行ってきた(拳銃使用実績はないとのこと)。またCCTVにより遠隔地の要所を中央監視センターで集中警戒するとともに、施設内の定期パトロールを実施、事案発生時には要員の派遣を行ってきた。
ロ 今般、セキュリティ強化についてのSOLAS条約改正を契機に、監視対象を拡大とフェンス増設、CCTVの増設(増設後、カメラ総数は500台にのぼる)、熱による進入感知器の新設など所要の体制強化を実施した。
ハ 同時に、SOLAS改正に伴い、PSFOの対象者に海外の要請研修を受講させ、帰国後PFSOに指名するとともに、職員に対する研修を計画的に実施している。
(2)運河通航船舶に対する警備
イ 米原潜や核廃棄物輸送船など警備を対象とする船舶の通過をHigh Value Transitと呼称し、ACPではエスコート・ボートを配備し、ACPガードマンを本船に乗船配備する等のサービスを提供し右サービスに対しチャージしている。同時に、船主側が特別な警備関係者本船やACPエスコート・ボートに乗船させる等の便宜をはかっている。年に数回この種船舶の通過があり、核廃棄物輸送船の通過にあってはグリーンピースなどの環境団体が騒ぐのは承知のとおり。
ロ 今般、在パナマ米大使館が機銃付き高速艇4隻を米国からパナマに搬入してきた。右は米原潜のエスコートに使用するとのこと。他国の警備艇がパナマ国内に停留することとなる点については、政府間で何らかの取り決めがあった模様だ。
ハ 米大使館は、所属の武官を通じACPとは緊密な連携を図っている由。
(3)事案発生時の対応
イ 中央監視センター内には、通常監視を行うオペレーション室に隣接したスペースに、統合オペレーション室があり、大型スクリーン数個が前面に配備し運河内各所のCCTV映像が表示されていた。
ロ セキュリティ上の緊急事態が発生した場合には、警察、マリンサービス(海上警察)、ナショナル・セキュリティ・ガード、航空局、スペシャル・セキュリティ・フォースが集まり、政府としての対応を検討する。ACPセキュリティ・ガードは事務局として機能。
ハ セキュリティ事案事態への対応は関係政府関係の責任事務であるが、運河の開閉や通行船への指導等は最終的にはACPが決定する。







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