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3 地域の特色を活かす定住・交流環境の整備
 
 北上川の上流域に位置し、豊かな森林を抱える本村の環境、その問題は、本村だけのものではなく、様々な恩恵を受ける都市の人たち環境であり、また問題でもある。村も人口減少、高齢化などが一層進むものと予測されるなかで、地域だけで地域環境を維持することはますます難しくなってくるものと考えられる。こうした状況において、都市、都市住民と交流・連携を深め、その力を村おこしに生かすことが必要である。
 環境の維持・保全や地域の活性化を図るため、本村を応援する−「援」、本村を楽しむ(遊ぶ)−「楽(遊)」、本村から学ぶ−「学」という3つの視点から、地域の特色を活かす定住・交流環境の整備の取組メニューとして、次の5つを挙げる。
 
(1)環境維持のための「むらづくり応援団」募集(「援」の視点)
(2)新しいグリーンツーリズムの展開(「援」・「楽・遊」・「学」の視点)
(3)地域の味の再発見と提供(「楽」・「学」の視点)
(4)田舎暮らしの再評価と共有化(「学」の視点)
(5)生活研修生の受け入れ(「楽」・「学」の視点)
 
(1)環境維持のための「むらづくり応援団」募集
 人口の減少、高齢化に伴って、従来は地域の共同体の作業として行われていた山林や草地の管理・整備、河川の土手の草刈などの活動が維持しにくくなっている。このような状況がさらに進めば、山林や農地などの水源涵養機能や土壌浸食防止機能などが弱まり、やがては災害の発生や土壌流出などの環境悪化につながる恐れがある。そして、その影響は村内にとどまらず北上川流域の町や都市にも及ぶであろう。
 村民だけでこの重要な環境を維持するというのは難しい。中山間地域の環境が維持されることによって恩恵を受ける都市住民を巻き込む対応を考えることで、環境保全活動の量と質を高めることを考えるべきである。
 都市住民の中山間地域の環境整備支援活動としては、すでに30年の歴史をもつ富山県の草刈十字軍が有名である。また、高知県梼原町や千葉県鴨川市など全国各地の棚田では、オーナー制度や援農による保全活動が展開されている。栃木県茂木町では、集落の環境維持そのものに人が集まっている。さらに、全国的に森林ボランティア活動も活発になっており、林野庁も森林法の改正により、森林ボランティアのNPO(民間非営利団体)が間伐などの施業に取り組むことができるようにすることを決めている。
 本村でもすでに、廃校を利用して、主として子どもを対象とした「衣川ふるさと自然塾」事業が行われている。この活動対象を大人にまで広げて行うことにより、地域のマンパワーの不足を補い、さらには衣川フアンとして、各自の経験や都会人の知恵を活かした村づくりへの提案を出してもらうネットワーク・仕組み−「むらづくり応援団」の募集・結成を考えるべきである。
 
【事例】栃木県茂木町の「郷づくり応援団」
 大学との連携により集落の環境維持のために都市住民に活躍してもらう「郷づくり応援団」事業を展開している。普段、自然と接することの少ない都市住民や学生は、木を切り倒したり薮を刈ったりする活動を嬉々としてやっている。彼らはボランティアとして参加しているのであるが、自然体験を指導してもらうということで、有料で参加している(参加費は地域のひとが提供するお握りなどの昼ご飯にあてられる)。例えば、荒廃した竹林をもつ地域では、竹林整備のボランティアを会費千円の「竹取応援団」として50名募集したところ、80名の応募があった。
 
(2)新しいグリーンツーリズムの展開
 都市住民は子供達に農作業を体験させたいなど、農村との交流に様々なニーズをもっている。農山漁村では、様々な形態・工夫でこうしたニーズを受け入れ、地域活性化を図っている。
 本村でも、前述の自然塾のほかに、都会の中高生の修学旅行を民泊で受け入れる事業−グリーンツーリズムを展開している。ただ、ヒアリングによれば、ついサービスを考え過ぎで疲れてしまい、次第に修学旅行生の受け入れを断る家が増えてきているなどの問題を抱えているということである。
 
図表3-11 都市住民の農村交流等に関する意識調査
項月 A. 平成2年 B. 平成11年 B-A
自宅の家や近くの市民農園で家庭菜園をしてみたい 59.5% 63.3% 3.8
体験的なものであれば田や畑などの農作業をしてみたい 45.5% 63.0% 17.5
もっと気軽に農家の手伝いができれば協力したい 45.0% 57.0% 12.0
自分の子どもや孫達に農作業を体験させたい - 81.3% -
もっと気軽に農村と行き来がしたい 54.0% 68.5% 14.5
もっと気軽に農家の人たちと交流をもちたい - 72.8% -
注)首都圏居住の非農業者400名対象のアンケート調査
資料:(株)博報堂生活総合研究所「食と農業に関する意識調査」より作成
 
 まず、グリーンツーリズムが地域にとってたんに新しい観光の一形態ではなく、外の人の目を通して地域の良さを再評価するきっかけとなる事業であること。また、地域の将来や子どもたちの将来に大切な機会だということ−つまり総合的な地域振興事業であることを再確認して取り組むとともに、適切な支援を行うことが必要である。
 そのうえで、一流の資源を持たない本村のグリーンツーリズムを考えると、本村全体をフィールドとして、人材や農業、豊かな自然環境、伝統芸能・食文化など様々な資源を有機的、総合的に活用すること−フィールドミュージアム化することが必要である。こうした視点から事業のあり方を考えると、環境省の「地域の自然や文化を観光に生かすエコツーリズム」に代表される地域全体の環境・資源活用型のグリーンツーリズム、エコツーリズム(下記の(3)類型)の導入などを図ることが望まれる。
 
【環境省「地域の自然や文化を観光に生かすエコツーリズム」の概要】
 対象は市町村単位で1カ所でも複数でも可能。モデル地区は、(1)原生的な自然が残されている地域、(2)観光客ら多くの人が訪れる地域(3)里地・里山など身近な自然が残された地域−の3類型に分けて選ぶ。平成16年5月に地区を選定し、6月から自然や文化の保全と利用についてのルール策定や、ツアー実施に向けた作業に着手する予定となっている。
 
【事例】京都府美山町
 町内の自然、人文資源を活用したグリーンツーリズムの受け入れを行っているが、その特色はガイド付きの体験ツアーを多様に実施していることにある。町民のガイドは、案内のために町の資源について勉強するとともに、観光客から教えられることも多いと言う。また、280戸の茅葺き民家が残り、都市住民から「かやぶきの里」として評価されている。この景観を守るために、町外の人たちが「かやぶきの里美山と交流する会」を結成し「茅葺きの里保存基金」を積み立てるなど、美山町応援団の役割を果たしている。
 
【事例】新潟県川西町
 夏休みに都会の子どもたちの山村留学を受け入れているが、都会の子どもたちを自然の中で遊ばせる前に、まず地域の子どもたちが体験し、都会の子どもたちが来るときには、リーダーとして活躍できるように鍛えている。地域の子どもたちが、都会に出て都会の子どもたちと勉強や仕事で競うことになる場合に、たとえ勉強で負けても山や川での活動では自分たちの方が上だったという体験が、自信につながる。こうした想いが、やがては地域に帰って暮らしたいという想いに結びついていく可能性もある。
 
【事例】大分県安心院町
 家が旅館業の認可を取らず気軽に民泊の受け入れができるよう、会員制農家民泊(会費を貰い、会員は親戚の家に泊まるように、農家にとめてもらうことができる。)の仕組みをつくっている。
 
【事例】宮崎県西米良村
 たんに休暇を過ごすだけではなく、ゆずや花き栽培などで季節的に人手が不足するときに、仕事を手伝ってもらって報酬を払うという「ワーキングホリデー」を導入している。その結果、現在では、年間20名近くの若者のUIターン者があるほどになっている。
 
(3)地域の味の再発見と提供
 情報技術によって5感のうち、視覚や聴覚はすでに距離をおいても到達しうる知覚となった(例:テレビ)。しかし、触覚や味覚、臭覚はそうはいかない。とくに「味覚」の情報化は難しいといわれている。つまり食は、その場所に出かけなければ体験できない情報として残り続ける。「食」で地域を訴えかけることが、人を呼び集めることにつながると考えられる。この「食」であるが、自分たちにとっては当たり前の料理が、他の地域の人、都市住民には新しい価値をもっていることに気づくことが必要である。
 今では全国区になった<宇都宮の餃子>も、市の職員が研修の場で「再発見」する以前は、その価値をみいだせなかったものの1つである。また、愛媛県内子町の事例は、地元の食材をふんだんに使った素朴な料理で人を集めている好例である。
 かつて東北地方の貧しい山村であった本村には、派手な食文化はないが、山菜やきのこ、新鮮な農作物、豊富な保存食品を用いたおふくろの味があるはずである。これが、現代社会では貴重な価値をもっている。
 また、年間5万人を超える利用者(日帰客と宿泊客)がいる国民宿舎衣川荘の入口付近には、古民家を移築して造った民芸屋敷の郷土料理レストラン「んめぇがすと」が運営されている。しかしながら、ヒアリングによると、メニューの内容やサービスに不満の声が出ている。
 本村では、新たな農産物を生かした食材(ガルギール製品など)が提供されているが、昔からの本村ならではの食材、味・食をもう一度見直し、時には発掘して提供することも大切である。これらを「んめぇがすと」をはじめ、地域の人が共同で経営する農村レストランなどを設けて提供することが望まれる。
 食に関しては口コミ情報が極めて重要な役割を担うことから、サービス−「もてなし」にも配慮することが必要であるし、前述の〔むらづくり応援団」のネットワークを活用することも忘れてはならないであろう。
 
【事例】愛媛県内子町「石畳の宿」
 山村集落の主婦たちが共同で運営する宿泊施設「石畳の宿」は、おいしい料理と温かいもてなしが評判で予約が相次いでいる。
 1泊2食のサービスが基本であるが、頼んでおけば、1人3千円の昼食を食べることもできる。昼食の内容は、山女の塩焼きのほか、山野草のてんぷら、豆腐、こんにゃく、野菜の煮物、漬物、うどんで、季節の食材を用いたてんぷらや煮物の種類の多さは驚くべきものである。まさに山川と畑の幸を用いた山村料理フルコースで、3千円の値段に恥じないものである。また、各料理や食材については、主婦が1品1品説明するとともに、質問にも親切に対応してくれる。料理の価値を知る人に食べてもらいたいという主婦たちの気概と自信が伝わってくる。
 
(4)田舎暮らしの再評価と共有化
 自らの地域の暮らしに誇りをもち、それを広く共有化すること、その情報を発信することが、地域づくり、地域活性化には欠かせないと考えられる。農山漁村では田舎暮らしそのものをきちんと再評価し、その評価を共有化して田舎暮らしを楽しむゆとりも必要である。
 本村の人は、6割が定住意向を示した村民アンケート結果やヒアリングから、村の生活にかなり満足しており、田舎暮らしを楽しんでいることが窺える。しかし、その満足感、背景・資源の評価、共有化、情報発信という点では、まだ対応すべき課題が残っていると思われる。
 こうした田舎暮らしの評価、共有化などについて、全国的に様々な取り組みが行われている。こうした事例を参考にして、本村なりの取り組みを進めることが必要である。その1つとして、本村にはすでに、この村の環境や暮らしを好きになって移住してきた人(Iターン者)が何人も居る。こうした人たちと話し合い、また一緒に活動することで、地域の資源にさらに磨きをかけて、村で暮らすことの喜びを多くの村民で共有化していくことが考えられる。
 
【事例】
○山梨県早川町:「千年の学校」と名づけて、現代の人々が、ふるさとで暮らしてきた先人の知恵を学ぶ事業を展開。
○福島県飯舘村:「カントリーライフ大賞」を設け、田舎暮らしを本当に楽しんでいる人を自薦他薦で選び、表彰するという事業を展開。
○熊本県小国町:ふるさと景観の写真コンテストを行い、入賞作品については、撮影者とともに、その景観を維持・創出している人も表彰するという事業を展開。
 
(5)生活研修生の受け入れ
 農山村で暮らしたい、自然環境を守りたい、自らの創意・工夫が生かせる第1次産業に携わりたいと考える人たちが増えてきている。農業に関してみると、非農家出身者の若者の農業・就農に対する関心は高く、何らかの形で「農業に携わりたい」、「田舎で暮らしたい」という潜在的需要が相当高いことが知られている。
 
図表3-12 全国新規就農ガイドセンターに来た相談者へのアンケート集計
農業体験 (%) 訪問動機 (%) 年齢 (%)
全くなし 54 本格的に農業に取り組む 43 19歳以下 2
体験程度 36 農業法人等で働きたい 20 20〜29歳 32
研修済み 10 田舎暮らしをしたい 17 30〜39歳 32
    有機農業をしたい 16 40〜49歳 19
農業を体験したい 4 50歳以上 15
資料:農林統計協会「図説 食料・農業・農村白書 参考統計表 平成14年度」
原資料:全国新規就農相談センター「新規就農関係資料集」
 
 こうした潜在的な需要を背景に、都市住民などを対象とする農業や地域の生活技術などを学ぶ研修の場を設けている事例が数多くある。もともとはたんに研修の場を設けるものであったが、その地域を訪れ、地域にふれることで様々な波及効果−定住者の増加、嫁不足の解消、観光振興などの効果が生まれている。
 本村にも、農業や林業などに限らず自給自足の生活ができる技・智恵をもつお年寄りなどがたくさんいることを、ヒアリング調査でも多々指摘された。
 こうした人材を生かした研修の場、機会を設けることは、第1に本村の生活様式、生活・生産の智恵と技などを、村の次世代に受け継いでいくうえで不可欠なことと考える。また、都市からの生活研修生を受け入れることは、都市住民との交流、これを契機とする地域活性化を図るうえで、大きな効果をもつものと考えられる。
 
【事例】島根県石見町の「女性農村研修制度」
 毎年6名の都会の若い女性を募集して村の生活を学んでもらう、「女性農村研修制度」を導入している。農家の嫁不足の対策として行っている事業ではないが、平成14年度までの100名の研修生の中で17名が定住し、うち6名が地域内で結婚している。それよりも地域住民にとって、都会の若い女性が畑仕事や染色、織物など、自分たちが日常行っている活動に興味を持ち学んでいる姿に感激するというのが、この事業の大きな効果である。さらに村の宣伝効果があがり、年間30万人もの観光客が来るようになり、農産品の販売が飛躍的に拡大するなどの副次効果も生まれている。
 
【事例】和歌山県那智勝浦町の、「町立籠ふるさと塾」
 「町立籠ふるさと塾」を設置し、都市住民の農業体験指導を行っている。気軽に参加できる3日コースから、1週間、1ヶ月、1年と多様なコースを選択でき、現地定住を希望する人のための本格コースもある。地域住民の協力もあり、540世帯の集落に累計で30世帯が新規に定住している。
 
【事例】島根県弥栄村の「農芸学校」
 平成8年(1996年)春に開校。自給の技を身につけることをはじめに、その技を仲間に伝えるシステムづくり、醸造文化をベースにした地場産業の起業化や地域文化の掘り起こしを通して村の再生を考えたい、という意図からはじめられた。当初20名程度の1募集に90名以上の応募があった。第1回は23名を受け入れ、卒業後も4〜5人が研修生として残り、さらにそのなかの1人の女性は村で結婚することになった。
 
 
 村に住む人々の生活の豊かさを支える1つの要素は、自らの地域づくりに参加しているという意識、満足感であろう。この点で小規模自治体は、住民と行政の距離が近く、住民の顔がみえるというメリットがある。こうしたメリットを生かした行政運営を進めることが、地域活性化には必要である。
 また今、地方は合併や「三位一体の改革」など大変革期を迎えている。小規模地方自治体の財政は今後ますます厳しいものになることも明らかである。小規模自治体は小規模自治体として、こうした変革、動向に応じ、向き合った行財政の改革・運営を進めていかなければならない。
 こうした観点から、行財政の効率化と合併問題への対処に関して、次の4つの取組メニューを挙げる。
 
(1)住民の参画・協働の推進
(2)自治の原点としての集落活動の活性化、地域自治支援の仕組みの導入
(3)広域的連携・対応、アウトソーシング(外部委託)、行攻のスリム化
(4)税源の確保
 
(1)住民の参画・協働の推進
 むらづくりへの住民参画の第一歩は、住民と行政が情報を共有するところから始まる。本村においても、より実効的な情報公開と、村民の参画・協働のあり方が、自治の基本として問われている。そのことを自覚した行政が、これから必要である。
 しかし、今回の本村における調査で、小さい村でありながら、行政のもっている情報が村民に伝わりにくい状況があることを強く感じた。たとえば合併の問題に対して、行政は様々に考え、議会も検討を進めており、村の広報紙に説明的な記事が載せられている。しかし、合併のメリット、デメリットや、周辺の市町村や県との話し合いの経緯は、村民にはほとんど伝わっていないというのが現実である。村民は、広報紙の記事を精読することはまれである。
 村民は、行政から情報を得るのではなく、新聞やテレビのローカルニュースで、情報を得ることの方が多い。したがって、村民への情報提供は、広報紙や議会便りなどの役場によるメディアのみに頼ることなく、新聞やテレビなどのマスコミの利用を積極的に考えるべきである。また、ホットな話題については、「政策広報」の形で、一つのテーマに絞ったリーフレットを発行するのも有効であろう。一つの政策について、村民の生活にどのような影響が出るかを分かりやすい形で広報する手段である。また、議員は地域政策課題と議会での検討の経緯を村民に説明する責任をもっている。
 むらづくりに関する会議のやり方も、従来型の、資料を事務局ですべて用意してその承認を求めるような審議会のようなやり方ではなく、参加者が全員で意見を出し合いながら成果を固めていく「ワークショップ型の会議」を導入すべきである。
 
【事例】北海道ニセコ町の「もっと知りたいことしの仕事」
 北海道ニセコ町では、毎年、村の事業計画を詳細に説明するために、100頁を超える冊子、「もっと知りたいことしの仕事」を全戸配布し、行政の仕事への周知と理解を図る取り組みを行っている。この取り組みについては、全国各地の自治体で追随する動きが広がっている。
 
(2)自治の原点としての集落活動の活性化、地域自治支援の仕組みの導入
 住民が村寄り合いで地域の将来を考え、行動するというのが自治の基本である。たとえば「頑張るかあちゃんの会」のように、生活者の立場から集落を見直し、楽しく豊かな生活を組み上げていこうという意欲的な活動もみられる。こうした活動を参考にしながら、もう一度、自治の原点に立ち帰った集落活動の活性化が必要である。
 
【事例】静岡県大井川町「地域参加のまちづくり条例」
 大井川町は、「地域参加のまちづくり条例」を制定し、集落ごとに設置された「まちづくり委員会」の運営費と事業費を助成する仕組みをつくっている。
 
 地方自治の原点が集落自治にあるとすると、それを新しい基礎的自治体(合併後の新市町)の全域で包括的に検討する前に、住民からみえる範囲での比較検討を行うことに意義があるものと考えられる。最近の総務省の意向では、後掲の国の施策動向にみられるように、地域自治組織を時限措置として、その設置を合併後一定期間に限るという方向にまとまりつつある。しかし、地域自治組織の設置に関する問題は、地域の将来にとって、大きな可能性を秘めているものとみるべきである。基礎自治体が条例で地域自治組織の恒久的設置を定めるという方策も視野に入れての対応が求められる。
 旧町村単位の自治については、すでに全国で取組が進んでおり、熊本県小国町などの例が有名である。アウトソーシングの項で掲げた、岐阜県山岡町のNPO設立という方法も考えられる。さらに、行政の中に地域自治支援の仕組みを組み込んでしまう福島県只見町のようなやり方も考えられる。







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