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小規模自治体における自治の拡充に関する研究

 事業名 小規模自治体における自治の拡充に関する研究
 団体名 地方自治研究機構 注目度注目度5


(4)子育て支援
 少子化対策は全国的な課題であるが18、とくに本村のような中山間地域の町村にとっては深刻な課題である。こうした地域においては、若者の流出、農家の嫁不足など、子育て支援以前の問題が山積しているが、安心して子どもを産み育てられる環境の整備を率先して行うことにより、若者を村に引き寄せるほどの取組をしなければ、問題の解消には至らない。
 村民アンケート調査によれば、全体としては3割の人が本村の子育て環境は充実していると回答している。しかし、子育て世代の20〜40代では「そうは思わない」という否定的な回答が肯定的な回答を上回り、厳しい評価をしている。ヒアリング調査においても、幼稚園のサービスに対する要望が聞かれた。先にみたように「子供の養育・教育」は人口移動要因の1つであり(図表3-6参照)、子育て環境が整っていなければ、子育て世代は子育て環境のより整った他市町村に転出することも十分予想される(いわゆる「足による投票」)。子育て環境の充実を図ることは、本村での人口の定着という点で重要な取組ということができる。
 
図表3-7 子育て環境に関する村民アンケート結果
 
 地域コミュニティがまだ機能し、大家族(多世代)で暮らす傾向19の強い本村における子育て支援は、家庭を含む「地域の子育て環境」と「子育てサービス」の2つの充実を図ることが効果的であると考えられる。
 「地域の子育て環境の充実」では、次の2つが考えられる。
 
【地域子育て環境の充実例】
(1)元気な高齢者の活用
 元気高齢者の豊かな子育経験や智恵などを生かし、地域の子供を見守ることができるような仕組みをつくる。
(2)地域による「ファミリーサポート・センター」の運営
 時間に余裕のある人が登録しておき、必要な時にそのうちの誰かが対応できる体制を作る。そして例えば、勤務が延びたために保育所に子どもを迎えに行く時間に間に合わない、子どもが急に発熱して保育所に預けられない、少しの時間面倒を見て欲しいなど、家庭で発生する小さなトラブルに、こうした地域人が救いの手を差し伸べる仕組みである。
 
 「子育てサービス」では、保育所の保育時間の延長など子育てニーズに柔軟に応えられるサービスの提供が必要である。このためには、多くの自治体で採用されてきている保育園などの民営化なども検討が必要である。また、コスト削減など行政の効率化の視点に加えて、幼稚園利用者のニーズの多様化に対応するうえでも幼稚園と保育園の一体化(いわゆる「幼保一元化」)を検討する必要があろう20
 なお、深刻化する児童虐待に対応するため、厚生労働省は、虐待を受けた子どもが、家庭的な環境で過ごすことができるよう、小規模児童養護施設の拡充や里親制度の普及などを進めている。本村は、自然や景観、伝統文化などに恵まれ、地域社会の定住性も高い。家庭や地域社会の教育力も期待できるし、とりわけ農業体験修学旅行生を受け入れてきた実績がある。こうしたハンディキャップを負った子の教育の場として最適であろう。少子化対策の1つとして、こうした施設の整備や制度の受け入れなどを考えてみても良いのではなかろうか。
 
(5)芸術・文化・芸能に対する取組と継承
 文化芸術活動へ参加することやこれらを鑑賞することは、生活の質を高めるうえで重要な役割を担う。
 しかし「鑑賞」は、<大都市−地方>、<小規模自治体−都市>間で、享受機会の格差が大きいものがある。小規模な自治体と都市と格差の背景のひとつは、大規模なホールや美術館、博物館などの有無によるところがある。「文化に関する世論調査」(平成15年11月内閣府)によると、「地域の文化活動の振興に関する要望」で最も高い項目は「文化施設を整備・充実する」(35.4%)であるが、小規模自治体では財政負担や費用対効果などからこれらを整備することは難しいし、その必然性も少ない。
 この問題を解消する方法は、敢えて財政の負担になる建築物をつくらなくても、住民に不便を感じさせない工夫をすることである。本村の住民は、新幹線を使えば盛岡や仙台まで1時間弱、東京にも3時間弱で着くことができる。例えば、福島県飯舘村では、村民が高度な芸術に接したいということで東京などに行く場合に交通費や鑑賞費用を補助する制度を持っているが、こうした補助制度も選択肢の一つと考えられる。
 
図表3-8 公演の概況
都道府県 1997年 1999年
公演回数(回) 全国比(%) 公演回数(回) 全国比(%)
岩手県 375 0.4 574 0.6
宮城県 1,053 1.1 1,230 1.2
東京都 32,832 32.8 38,969 37.4
大阪 12,975 12.9 12,513 12.0
全国 100,244 100.0 104,319 100.0
注)能楽、文楽、民俗舞台芸能、歌舞伎、現代演劇、邦楽、クラシック、ポピュラー、舞踏、演芸、外来クラシック、外来舞踏の合計である
資料)芸能文化情報センター編「芸能白書2001」より作成
 
 一方、本村は、中尊寺・毛越寺を擁し世界遺産登録が検討されている平泉町に隣接し、陸奥の覇者となった藤原三代の祖で、永承年間に奥六郡の長として、みちのくを治めた安倍一族の本拠地であり、衣河関や安倍一族の居館などの史跡をもつ藤原文化ゆかりの地である。安倍一族のみならず遡っては蝦夷の英雄アテルイなど、中央に服わぬ独立自主の気風や自律(自立)政治の考え方を継承する傑物を多く排出してきた。昭和45年には村全体を歴史公園とする条例(歴史公園設置条例)が制定されている。
 
図表3-9 村内の安倍一族、藤原氏ゆかりの史跡
一首坂 「衣の舘はほころびにけり」との義家の呼びかけに、貞任が「年を経し糸の乱れの苦しさに」と和歌問答した坂
古戸古戦場 前九年の役の中、天喜5年と康平5年の2度の古戦場(当時の集落の中心地)
駒場 安倍氏が乗馬5〜600頭を繋いだ場所
古舘(安倍新城) 上衣川の安倍舘を下衣川に移した後、貞任が築いた城という
馬駆 安倍氏時代の乗馬訓練場の後で、字名として残る
磐神社 延喜式内奥州一百社、胆沢七社の一つで、男石大明神とも称し、安倍氏の守護神「荒覇吐神」を祀る
女石神社 松山寺境内にあり、磐神社(男石大明神)の陽神に対する陰神であり、この両社は陰陽一体の神として崇敬された.
安倍舘西郭 安倍忠頼、忠良、頼良3代の城郭と伝えられ舞鶴舘、落合舘とも称された
安倍舘東郭 前記3代が常時移住した場所という
八幡山 この山には田村麻呂が勧請したと伝えられる八幡神社があり、天喜5年には、安倍舘と相対するこの山に源氏軍が布陣した
雲際寺 慈覚大師開基。義経、北の方が再興したと伝えられ、両者の位牌が安置されている
八日市場 藤原時代の市街地西端にあった市場後
上衣川の安倍舘から頼良がこの地に移転し、その子貞任までの居舘となる
和我叡登挙神杜 上衣川の磐神社と同様延喜式内社で、奇石をご神体とする「荒覇吐神」
月山神社 慈覚大師の勧請、中尊寺奥の院として崇敬された
衣河関 前九年の役時点における関跡であり、同役の中心舞台となる。今その上を東北自動車道が走る
並木屋敷(衣川柵) 安倍氏の政庁跡。清原氏の本拠ともなり、その時点で柵がめぐらされ衣川の柵とも称した
業近柵(和泉ヶ城) 康平5年時点では業近柵であったが、藤原秀衡の三男和泉三郎忠衡の居舘となり和泉ヶ城の名がついた
衣の関 藤原清衡が中尊寺建立後奥の大道を境内に通し、南は白河の関から北は外が浜までの中間に設けた関
関道 衣の関から衣川を渡り、北上した主要道にこの名称がついた
七日市場 中尊寺建立後、関道の周辺に栄えた繁華街と伝えられる
長者ヶ原廃寺跡
(吉次屋敷跡・県指定史跡)
通称金売り吉次の屋敷跡と言い伝えられているが、平泉藤原時代以前の寺院跡と考えられる
渡船場後 吉次屋敷と関連する水上交通遺跡と考えられる
室の樹 京都御室の樹を移し植えた植物園と伝えられている。義経が住んだともいう
接待館 藤原秀衡の母堂の居舘で、平泉府の迎賓館であったともいう
六日市場 平泉藤原時代の市場跡
九輪塔 藤原清衡が、祖父の頼良の菩提を弔うため九輪塔を建立し、周辺に大きな池を造り、築山の朝日の森、夕日の森を設けたともいう
資料:衣川村
 
 また、伝統文化の領域では、国指定重要無形民俗文化財「川西大念仏剣舞」を始め、「大平念仏剣舞」「川西神楽」「池田胴念仏」等村指定無形民俗文化財や、学校教育の一環として子供たちに伝承されている郷土芸能がある。
 
図表3-10 本市の指定文化財の状況
区分 国指定 県指定 村指定 件数計
有形文化財 彫刻 - 1 2 3
工芸品 - - 2 2
歴史資料 - - 2 2
民俗文化財無形民俗文化財 民俗文化財 1 - 7 8
記念物 史跡 - 1 - 1
天然記念物 1 2 32 35
資料:衣川村
 
 本村において郷土芸能を学校教育に取り入れた最初のきっかけは、本村大森地区の過疎化が進み、衣川小学校大森分校の児童数が減少し、活気を失いかけた昭和45年(1970年)、児童に元気と自信を取り戻させようと、当時分校の教員であった佐々木久雄氏が、「大原神楽」の小坂盛雄師匠(当時の衣川村教育長)に、「みかぐら」の伝授を依頼し、教科外活動として「みかぐら」に取り組み始めた事に始まる。この佐々木先生が後の作家三好京三氏で、大森分校を舞台にした小説「子育てごっこ」で直木賞を受賞した。昭和53年(1978年)「子育てごっこ」が映画化された時には、この撮影は実際に大森分校で行われ、大森分校の児童がエキストラで「みかぐら」を舞った。
 大森分校は、平成10年(1998年)3月に廃校となったが、平成13年(2001年)日本人初の宇宙飛行士である秋山豊寛氏を塾長に迎え「ふるさと自然塾」として再出発した。ふるさと自然塾は、廃校などを活用して、ふるさとの山村の自然と暮らしを学ぶ施設を作ろうという、環境省初の事業として指定されたもので、米、野菜づくり体験等を通して、資源循環型自給自足の暮らしを構築する拠点である。
 こうした、伝統芸能や文化資源等の地域の宝を独自の方法により継承する取組は今後も継続し、さらに豊かに発展させていくべきである。
 

18少子化対策をめぐる国の動き:「次世代育成支援対策法」が平成15年の通常国会で成立している。「少子化の流れを変えるため、従来の取り組みに加え、もう一段の対策を推進する」ことをうたった同法は、企業や自治体に対し、少子化対策の具体的計画を盛り込んだ行動計画の策定を義務付けている。
 これを受けて、全都道府県・市町村は、平成16年度中に子育て支援事業の数値目標などを示した、5年を1期とする行動計画を策定しなければならない。計画策定に当たっては、子どもを抱える家庭を対象とした「ニーズ調査」を行うことになっており、現在その作業が進行中である。厚生労働省は、これらのニーズ調査の結果や、各自治体の示した数値目標を積み上げ、現在策定中の平成17年度からの新たなエンゼルプランの計画値に反映させたい考えをもっている。
19平成12年の国勢調査によると、本村の1世帯当たりの人員は3.99である。これは岩手県で最も高い値である。
20「幼保一体化」については、現在、中央教育審議会が集中審議を行っており、幼稚園と保育所の機能を併せもった「総合施設」の可能性を検討している。なお、平成16年度からは公立保育所運営費が一般財源化されることになっており、一体化などの方針を定める好機と思われる。







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更新日: 2020年8月8日

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