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伝統的地場産業の再生・育成に関する研究

 事業名 伝統的地場産業の再生・育成に関する研究
 団体名 地方自治研究機構 注目度注目度5


はじめに
 低迷が続く経済情勢に加え、地方分権、構造改革の進行など、近年、自治体を取り巻く環境は大きく変化し、厳しさを増してきている。したがって、都道府県、市区町村、広域市町村圏などは、新たな施策づくりにおいてはアウトソーシングや広域的共同処理などを従来以上に追求せざるをえなくなっており、既存の施策についてもたえず見直し、行財政のスリム化に努めることを求められている。また、ここ数年、全国各地で、合併への模索がなされているところであるが、市町村合併特例法の期限切れまで一年を残すだけとなっている。以上のような状況のもと、自治体は、個性豊かで活力あふれる地域形成に向け、地域資源の活用や住民とのパートナーシップを基本理念とし、地域づくり・まちづくりに懸命に取り組んでいるところである。
 当機構では、自治体が直面している諸課題の解決に資するため、全国的な視点と個々の地域の実情に即した視点の双方から、できるだけ多角的・総合的に課題を取り上げ、研究を実施している。本年度は、7つのテーマを具体的に設定し、取り組んだ。本報告書は、このうちの一つの成果を取りまとめたものである。
 本研究では、沖縄県平良市を調査対象地域として、石工や瓦葺きなどの空間づくりの手わざから民具、工芸など宮古らしい風景や風情の要素となっている宮古独自の多様な技能・技術の現状や継承の状況などを把握、整理するとともに、これを観光資源として活用し、地場産業の再生・育成につなげるための展望と方策について検討を行った。
 本研究の企画及び実施にあたっては、研究委員会の委員長、委員及び幹事各位をはじめ、関係者の方々から多くのご指導とご協力をいただいた。
 また、本研究は、競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて、平良市と当機構とが共同で行ったものである。ここに謝意を表する次第である。
 本報告書がひろく自治体及び国の施策展開の一助となれば幸いである。
 
平成16年3月
財団法人 地方自治研究機構
理事長 石原 信雄
 
(1)背景
 個性的で魅力ある地域づくりを進めていくために、地域住民や行政の創意工夫による地域間競争が求められる中で、景観形成や地域づくりの資源としての歴史的遺産の保存・活用が活発に進められている。このような動きに共通しているのは、歴史的遺産をたんに建造物や街なみだけでなく、地域に賦存する歴史、文化、自然、産業など、人びとの暮らしや営みを含めた全体的な環境として捉え、地域産業の活性化、アイデンティティ(らしさ)の確立、コミュニティの再生、住んでよく訪れて良い空間の創造など、多面的な地域活性化を目指して展開している点である。
 
(2)目的
 本調査研究の対象地である平良市(以下、本市という)は、沖縄本島から南西に約290km、宮古島の北部に位置し、大小8つの島々からなる宮古圏域の中核都市である。本市では第3次総合計画において観光を総合産業と位置づけ、新たな産業・就業の場の創出に注力するとともに、国際的な観光・リゾート県沖縄のなかで個性化、差別化を図るために、冬でも温暖な亜熱帯海洋性気候や、隆起サンゴ礁の平坦な地形、美しい海浜景観などの自然環境を活かして、トライアスロン大会の開催やダイビングなどのスポーツ、健康保養(ウエルネス)をテーマとした体験・滞在型観光を中心とした観光・リゾート産業の振興を推進している。
 さらに平成14年3月に策定した観光振興基本計画では、『ひらら・チャンプルーツーリズム』を観光地づくりの将来像に掲げ、「チャンプルー(融合)」をキーワードに観光、地域、産業の融合を図り、その相乗効果による個性的で自立した地域づくりを目指している。
 しかしながら、スポーツ・リゾートとして年々観光客が増加する一方で、多様化する観光ニーズに対応し、かつ地域の活性化につながる観光資源の見直しや、歴史や文化などの地域特性を活かしたまちづくりの展開が大きな課題となっている。島全体が石灰岩からなる宮古島は、古来より墳墓や住居の石垣など独自の石工技術をはじめ、宮古らしい風景を形づくる技能や技術が受け継がれていたが、とくに中心市である本市では復帰以来の急速な市街化などにより宮古の自然、歴史、文化を映す伝統的な景観が失われつつある。さらに、伝統的技能者等の高齢化も相まって、宮古らしさを継承あるいは創造する技能・技術の衰退・消滅が危惧されている。
 本調査研究では、石工や瓦葺きなどの空間づくりの手わざから民具、工芸など宮古らしい風景や風情の要素となっている地域独自の多様な技能・技術の現状や継承の状況などを把握、整理するとともに、これを観光資源として活用し、地場産業の再生・育成につなげるための展望と方策を検討、提示することを目的とする。
 
 本研究を進めるにあたり、以下の視点を重視した。
 
(1)地域資源の再検証と観光資源としての活用可能性
 近年の観光・レクリエーションニーズの動向及び沖縄本島や八重山圏域など観光リゾート県沖縄の中での本市観光の位置づけや展開方向をふまえ、本市の独自性や個性化の充実を図るための宮古らしい空間や風情を形成する地域資源(人、技術・技能、モノ、場所、伝統・生活文化)の再検証と観光資源としての活用可能性を重視した。
 
(2)手わざを活かした実践的な事業プランの提示
 第3次総合計画の重点的施策「健康ふれあいランド構想」で掲げる“まちの健康”や、観光振興基本計画のめざす“観光、産業、地域の融合”など、宮古の幅広い手わざを切り口に、上位・関連計画の具現化に向けた展開方策と実践的な事業イメージとなるモデルプランを提示した。
 
(3)多様な手わざの多角的な活用可能性
 手わざの実態調査は、“宮古らしい空間、風情”をキーワードに、石積みや三線大工などの匠・職人(地場産業)から凧や駒などの民芸(民俗・生活文化)まで幅広い対象とし、観光のみならず、教育、地場産業振興への活用可能性も併せて検討した。
 
(4)市民との協働
 調査の精度向上や、次年度以降の展開の理解者、推進役として期待も含めて、実態把握から提言まで市民との協働により、調査検討を行った。
 
3 研究の体系
 
第1章 観光振興の視点からみた平良市・宮古圏域の現状と課題
 本市及び宮古圏域(1市3町2村)の立地特性や社会経済構造特性を概観し、現行の上位・関連計画などから本市及び宮古圏域のまちづくりの方向性を整理した。また、本市及び宮古圏域の観光資源分布や入り込みなどの観光動向や、現行の上位・関連計画などから観光振興の方向性について把握し、観光リゾート県沖縄の中での宮古圏域及び本市観光振興の位置づけや展望を概括した。
 これらの分析を踏まえ、本市の観光産業従事者へのヒアリング調査及び本市ならびに宮古島への来島者へのアンケート調査を実施し、本市を訪れる観光客像や本市観光への評価、顕在的・潜在的なニーズを明らかにし、観光産業を総合産業と位置づけ、観光、地域、産業との融合をめざす本市の観光振興を展開する上での課題を整理した。
 
第2章 地場産業資源の実態と利活用
 匠・職人(産業の視点)の手わざから、昔あそび(民俗文化)の手わざに至る幅広い手わざについて、ヒアリング、文献調査等より情報を収集し、類型化した。
 また、こうした手わざが宮古圏域の学校の授業や活動の中で、どのように取り組みがなされているかを把握するため宮古圏域の小、中、高校に対しアンケート調査を実施し、同時に、市民における利活用の可能性を探るため、市民が互いに提案しあい、市民自らまとめる手法(ワークショップ方式)で手わざ活用に関する市民会議を開催した。
 
第3章 観光振興に向けた地場産業資源等の再生・育成の展開方策
 これまでの検討を踏まえ、本テーマに係る主要課題を整理し、これを解決し地場産業資源等を、観光振興を軸に再生・育成するための展開方策を“手わざの活用”と“市民の参加”という二つの視点から整理した。







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