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(6)港湾の観光レクリエーション機能の利用促進策
(1)港湾の観光レクリエーション利用を魅力的なものとするために
・ 事業者に、『港湾での活動を魅力的なものにするのに大切と思うこと』を聞いたところ、マリンレジャー事業者の回答に着目してみると、第一に「周辺海域の魅力紹介」、「周辺観光地・施設との連携」、「家族連れで楽しめる場づくり」と楽しみの拡充、第二に「駐車場の確保」、「安全管理の充実」、「環境保全」と基礎的な条件整備を挙げた。また、「朝市など賑わいづくり」、「周辺の観光資源の発掘と紹介」など、地元密着の魅力づくりを重視したい意向も示されている。(「3. 港湾を利用する事業者等の状況」参照
 
(2)利用促進上のネック
・ 市町村調査では、「港湾を観光レクリエーション利用する上でのネック」として、約6割の港湾について「観光関連の施設設備が不十分」(59%)との回答が挙げられた。次いで「交通の便が悪い」(53%)、「都市からアクセスしにくい」(43%)、「地元に関連業界が育っていない」(30%)の順でみられ、港湾自体の受入体制の問題点以前に、多くの港湾がそもそも観光地に立地していないという現状が反映された。
・ 港湾自体の問題としては、「駐車場用地がとりにくい」(25%)、「港湾での観光レクリエーション活動の知名度が低い」(25%)、「地元や周辺地域に観光魅力がない」(23%)及び「港自体に特に魅力が感じられない」(21%)などが高位でみられた。
 
■港湾観光レクリエーション利用する上でのネック(障害)(【港湾個票】問4(2))
選択肢 〜比率の高い順〜(複数回答)
観光関連の施設設備が不十分 31 58.5
交通の便が悪い 28 52.8
都市からアクセスしにくい 23 43.4
地元に関連業界が育っていない 16 30.2
駐車場用地などがとりにくい 13 24.5
港湾での観光レクリエーション活動の知名度が低い 13 24.5
地元や周辺地域に観光魅力がない 12 22.6
港自体に特に魅力が感じられない 11 20.8
活動をリードする団体や指導者がいない 7 13.2
港湾利用が高密で、観光利用への余地がない 7 13.2
他の利用との調整が大変 7 13.2
自然条件が厳しい 5 9.4
港湾の目的外使用に関わる制約 5 9.4
マリンスポーツ活動の適地情報が少ない 5 9.4
危険が多く、一般の利用に適さない 5 9.4
港湾に魅力はあっても存在が知られていない 4 7.5
周辺の住民の理解が低い 4 7.5
各施設の入場料・利用料が高い 0 0.0
その他 4 7.5
無回答 9 17.0
集計対象票数(N=53)
 
・ A〜Eの機能ごとに「観光レクリエーション振興上のネック」をみてみると、「A- 港湾の環境を楽しむ観光」については「観光資源を活かしきれていない」(28%)、「集積がなくPRしにくい」(23%)との指摘が多く、解決のために施設整備を進めている・進めたいとする方向性とともに、今後はPR活動に取り組みたいとの意向を読み取ることができる。
・ 「B- 港湾でのイベント」については「駐車場が確保できない」(21%)、「アクセス交通手段が弱い」(18%)などの指摘に対し、駐車場の確保(既存施設の活用が多い)、イベント時の送迎バス運行などの工夫をしていることなどが挙げられている。
・ 「C- 港湾を基地とする海洋観光」については「駐車場や飲食など陸上の環境が用意されていない」(23%)、「周辺海域の魅力がわからない」(21%)などの指摘に対し、県に要望しながら施設整備を進めていること、情報提供の充実に取り組む姿勢などが示された。
・ 「D- 港湾や周辺海域での海洋レクリエーション」については「スペースがない」(21%)、「漁業者との調整が困難」(18%)などの指摘に対し、係留施設などの確保を進める動きがみられる一方、地元と協議しながらマリンスポーツ活動のエリアに制約を設けている現状も示された。
・ 「E- A〜Dを支援する各種活動」については「港湾の観光レクリエーション利用がなく、必要なかった」(28%)、「どんなことが必要か分からない」(18%)との現状に対し、関係機関との情報交換を行ったり、今後ニーズ把握や可能性研究に取り組みたいといった回答もみられる(前記の通り、現在「観光客のニーズを把握している」港湾は15%程度にとどまっている)。
・ 総じて、長崎県の港湾は、地元地域が観光レクリエーションへの活用を意図して闊達に利用する状況にある段階には至っていないことが示されたと言える。
 
■港湾での観光レクリエーション振興上のネック(【市町村全体票】問5)
A- 港湾の環境を楽しむ観光
選択肢 〜比率の高い順〜(複数回答)
01 観光資源を活かしきれていない 11 28.2
02 集積がなく、PRしにくい 9 23.1
03 飲食・宿泊に結びつかない 8 20.5
04 港湾自体が知られていない 7 17.9
05 利用者や旅行代理店のニーズ情報が不足 4 10.3
06 港湾管理上の制約がある 1 2.6
07 その他 4 10.3
無回答 13 33.3
集計対象票数(N=39)
 
解決のためにしていること 今後したいこと
・整備事業促進/地元協議会等との連携
・観光拠点施設の整備、観光体験メニューのPR
・新たな観光資源として温泉を発掘し、H16年2月オープン。又、近隣に民間によるホテル建設も実施されることとなっており、観光客の受け入れ体制が整いつつある。
・観光施設の整備
・整備計画要望
・地元産品の出店
・宣伝
・インターネットのHP上でPR活動の実施
・ソフト事業の充実、新たな観光資源の発掘
・情報提供の強化
・その他のPR活動で周知を積極的に図る。
・飲食・宿泊業者等と連携してPR活動
 
B- 港湾でのイベント
選択肢 〜比率の高い順〜(複数回答)
01 駐車場が確保できない 8 20.5
02 アクセス交通手段が弱い 7 17.9
03 周辺住民から苦情がある 3 7.7
04 漁業者との調整が容易でない 2 5.1
05 危険・事故対策がとりにくい 1 2.6
06 主催者や広告代理店ニーズの情報が不足 1 2.6
07 よい企画がない 6 15.4
08 港湾管理上の制約がある 1 2.6
09 その他 3 7.7
無回答 16 41.0
集計対象票数(N=39)
 
解決のためにしていること 今後したいこと
・県との連携による港湾開発(駐車場・臨港道路緑地等)
・公共施設の駐車場としての借用
・駐車場の整備
・県内外からの利用者が多く、交通渋滞・駐車場不足のため会場から離れている駐車場利用者の送迎バスを運行
・交通整理等警備
・近隣の学校のグラウンドの使用(イベント時の駐車場)
・関係機関への働き掛け
・アクセスの向上
・魅力ある公共スペースの提供・活用
 
C- 港湾を基地とする海洋観光
選択肢 〜比率の高い順〜(複数回答)
01 周辺海域の魅力がわからない 8 20.5
02 利用者や旅行代理店のニーズ情報が不足 5 12.8
03 港湾が観光船・観光客の出入りに適さない(安全面などから) 5 12.8
04 漁業者との調整が容易でない 3 7.7
05 周辺の港湾・漁港ですでに実施されている 2 5.1
06 駐車場や飲食など陸上の環境が用意されていない 9 23.1
07 港湾管理上の制約がある 0 0.0
08 その他 0 0.0
無回答 17 43.6
集計対象票数(N=39)
 
解決のためにしていること 今後したいこと
・整備計画要望
・県との連携による港湾開発(駐車場・臨港道路緑地等)
・大型観光船の入港が出来ない(水深、狭い)
・機関誌パンフ等による情報提供
・インターネット等で更に情報エリアを拡大/施設の整備促進
・魅力ある公共スペースの提供・活用
 
D- 港湾や周辺海域での海洋レクリエーション
選択肢 〜比率の高い順〜(複数回答)
01 スペースがない 8 20.5
02 海象や地形がレジャーに不適 4 10.3
03 どんな活動に適すかわからない 5 12.8
04 利用者や旅行代理店のニーズ情報が不足 6 15.4
05 制度的制約がある(自然公園等) 1 2.6
06 他の港湾利用者との調整が困難 2 5.1
07 漁業者との調整が容易でない 7 17.9
08 港湾管理上の制約がある 1 2.6
09 その他 0 0.0
無回答 17 43.6
集計対象票数(N=39)
 
解決のためにしていること 今後したいこと
・整備計画要望
・西海国立公園の区域外に係留施設を整備/旅行代理店への広報
・地元協議会との連携
・係留に伴う船舶間での使用調整等
・無許可係留船の指導
・夏場には、海水浴場を中心に考え、マリンスポーツの制約を設ける
・漁業者が行っている潮干狩りがあるがHPでのPRを春に行うだけ(港湾ではない)
・教会群や捕鯨の歴史
・文化等を生かし、地域のイメージアップを図る
・釣りが出来る場所の確保・地元協議会との連携
・プレジャーボート等の船舶係留施設の整備促進(県に依頼)
・一部地域でプレジャーボートの係留施設が不足のため、整備強化
 
E- A〜Dを支援する各種活動
選択肢 〜比率の高い順〜(複数回答)
01 港湾の観光レク利用がなく、必要なかった 11 28.2
02 利用者や旅行代理店のニーズ情報が不足 5 12.8
03 どんなことが必要かわからない 7 17.9
04 担い手がいない・みつからない 3 7.7
05 港湾管理上の制約がある 0 0.0
06 その他 0 0.0
無回答 21 53.8
集計対象票数(N=39)
 
解決のためにしていること 今後したいこと
・関係機関との情報交換 ・関係機関との情報交換
・必要に応じて行う
・利用ニーズの把握、港湾施設利用価値、可能性の研究
 
(3)港湾の観光レクリエーション利用の促進方策
・ 港湾の観光レクリエーション利用の促進方策について考えを聞いたところ、「人にやさしい快適な港湾環境づくり(公園化)」(41%)、「港湾の目的外使用への規制緩和」(41%)に続き、「海洋スポーツ・レジャーの普及・理解促進」(36%)、「港湾でのイベントの誘致・開発」(36%)、「宿泊・飲食・温泉など他の楽しみとの連携」(36%)、「地元利用の促進を通じ、交流につなぐ」(36%)、「漁協ともタイアップした海洋レクリエーション普及」(33%)といった項目が多く挙げられた。
・ 港湾については整備・管理の主体が県であることから、公園的な整備、目的外使用への規制緩和等で県に期待する姿勢がみられるとともに、漁協などとも連携したレクリエーション振興、イベント開催など、地元主体で利用促進を進めたいという意向も少なからずみられる。事業者・団体アンケートでは利用促進策として「海洋観光・マリンレジャーの共同的PR」が最も高率で挙げられている。長崎県の港湾が観光レクリエーション利用に向けて積極的な態勢をつくるには、地元での共同体制づくりが突破口になるであろうことが展望される。
 
■港湾の観光レクリエーション利用の促進で有効と思う方策(【市町村全体票】問9)
選択肢 〜比率の高い順〜(複数回答)
人にやさしい快適な港湾環境づくり(公園化) 16 41.0
港湾の目的外使用への規制緩和 16 41.0
海洋スポーツ・レジャーの普及・理解促進 14 35.9
港湾でのイベントの誘致・開発 14 35.9
宿泊・飲食・温泉など他の楽しみとの連携 14 35.9
地元利用の促進を通じ、交流につなぐ 14 35.9
漁協ともタイアップした海洋レク普及 13 33.3
交通や宿泊旅行とタイアップした誘客の推進 12 30.8
利用者ニーズの適切な把握 9 23.1
各種手続きの多さ・煩雑さの解消 8 20.5
観光レクリエーション利用促進へのノウハウ獲得 8 20.5
住民・利用者参加型の港湾づくり 8 20.5
海洋スポーツ・レジャー指導者の育成 7 17.9
各港湾が主体となってPRする 6 15.4
市町村の観光案内に港湾を明確に位置づける 4 10.3
レジャー産業の誘致 4 10.3
マリンスポーツショップや活動団体の誘致 4 10.3
海難救助体制や安全管理システムの充実 4 10.3
県内の港湾全体をPRする 3 7.7
学校などとの連携強化 3 7.7
海象・気象情報提供システムなどの充実 1 2.6
その他 2 5.1
無回答 1 2.6
集計対象票数(N=39)
 
【参考】
・ 市町村に、漁港や56条港湾(港湾区域の定めのない港湾で、都道府県知事が水域を公告した港湾)の観光レクリエーション利用状況についても聞いたところ、3割近い市町村が「ある」と答えた。
・ 活用状況に関する記述では、キャンプ、シーカヤック、スキューバダイビングの基地等の利用に加え、洋上コンサート、海洋オリエンテーリング大会などのイベントへの利用もみられる。港種の別を超えたPRにより、長崎県の「みなと」の魅力再認識につながることも考えられる。
 
■漁港や56条港湾で観光レクリエーションに利用されている/適する港(【市町村全体票】問10)
選択肢 〜比率の高い順〜(複数回答)
01 ある 11 28.2
02 かつてはあったが、今はない 0 0.0
03 ない 23 59.0
04 わからない 3 7.7
無回答 2 5.1
集計対象票数(N=39) 39 100.0
 
<具体的な記述例>
市町村 港湾・漁港名 観光資源の状況、観光レクリエーション活動の内容
平戸市 根獅子漁港
下中野漁港
飯良漁港
西浜漁港他
洋上コンサート、海水浴場百選の地活用、釣り。
野外キャンプ、海水浴場、釣り。
海水浴場、釣り。
市内21漁港(市管理)は釣り場として都会からの釣り客が年間を通じて多い。
鹿町町 鹿町漁港 観光夏まつり、海洋オリエンテーリング大会、学校のつり大会。
三井楽町 三井楽漁港 夏祭り。
岐宿町 水之浦漁港  
奈留町 矢神漁港 地引き網。
若松町 日島漁港 曲古墓群、はまじんちょうの群落、日島ディアパーク宿泊研修施設、野生鹿、宿泊研修施設でのキャンプ、シーカヤック体験等、海を利用しての学習体験。
有川町 七目漁港 ペーロン大会やサッカー競技などの会場として多くの住民が利用。
厳原町 全ての漁港 スキューバダイビング基地港、磯遊び等、マリンレジャーの実施。
美津島町 高浜漁港 スキューバダイビング基地港
豊玉町 仁位港 対馬浅茅湾を遊覧観光するための寄港地。
上対馬町 鰐浦漁港 国境が展望できる場所、5月上旬に咲く、天然記念物「ヒトツバタゴ」の自生地
 
(7)考察:港湾の本来機能と観光レクリエーション機能からみた性格区分
 
・ 回答のあった港湾について、アンケートへの回答内容より、次の指標に基づく性格区分を試みた。
・ 港湾でみられる観光レクリエーション活動の種類(複合度と収益事業の立地状況)
・ 港湾での観光レクリエーション活動量(集客施設の年間利用者、イベントの集客規模等)
・ 地元地域(市町村)による今後の観光レクリエーションへの活用意向
・ これに、長崎県による港湾区分(港湾の本来機能に拠る区分)をクロスして仕分けしてみると、次のように区分できた。
・ 試行的かつ大掴みな区分ではあるが、港湾の観光レクリエーション機能は、長崎県においては次のような状況下で分布していることが示された。
・ 港湾への観光レクリエーション機能立地は、都市部にあるなどの立地条件または、港湾及び海域の利用条件(スペースや自然条件)に依存的である。
・ 産業的利用に特化している場合、観光レクリエーション利用と相容れない状況もみられるが、人や環境にやさしい港湾環境づくり(公園化)を進める中で観光レクリエーション利用に視野が開けつつあるような傾向もみられる。
・ 港湾及び周辺には、国際交流史をはじめ、固有の歴史・文化資源が分布しているが、低利用の状況にあるものも少なくない。港湾利用の活性化、地域のアイデンティティ構築を展望するとき、それらの資源を活かしていく視点も肝要と考えられる。
 
アンケートからみた
観光レク機能ランク
該当港湾
(A〜Cは県港湾区分別)
特徴
Aレベル
相対的に利用度が高い港湾
A 長崎港、有川港 ・観光レク活動の種類・活動量ともに集積がみられ、観光地としての形成がみられる。
・港湾の本来機能に拠る区分(長崎県による区分)ではA・B・Cともみられる。
・都市部への分布が多い。
B 平戸港、大村港、肥前大島港
C 川内港
Bレベル
相対的に利用度は中程度
A 茂木港、松浦港、田平港、瀬戸港、玉之浦港、福江港、厳原港、竹敷港、比田勝港 ・集客施設やイベント等がみられる
・港湾のスペース供給力や海域の自然条件・資源分布が観光レク利用につながっている。
・最も数が多く、港湾の本来機能では区分A・B・Cともみられる(A〜Bが多い)。
・都市部・離島・漁村等、背後地の特性如何に関わらず県内に広く分布している。
B 神ノ浦港、時津港、長与港、臼ノ浦港、脇岬港、松島港、相の浦港、佐須奈港、若松港、大島港、高島港
C 下田港、大瀬戸柳港、古江港、古里港、田結港、小茂田港、鹿見港、郷ノ首港
Cレベル
相対的に利用度は中程度
B 池島港、小長井港、江迎港、榎津港、富江港 ・回答に、釣りや散策等自然発生的な利用はみられても、集客施設等はみられない。
・港湾の本来機能では区分B・Cに分布し、Aには該当がなかった。
・都市部にはみられない。
・元寇遺物引揚港等、固有の資源分布もみられる。
C 小口港、床波港、神崎港、福島港
Dレベル港湾
観光レク利用なし
A 調川港 ・観光レク利用はないとの回答で、今後も現状維持との意向が強い(実際には若干の利用がみられる港湾もみられる)。
・港湾の本来機能では区分A・B・Cともみられ(Bが多い)、産業利用に特化しているようすがうかがわれる。
・キリシタン墓地や神話の里など、固有の資源を有する港湾もみられる。
B 久山港、須川港、堂崎港、岐宿港、峰港、仁位港
C 太田尾港、浜窄港、椛島港
       ↓
*A=重要拠点港、B=地域拠点港、C=一般港(港湾の本来機能に拠る県区分)







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