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(5)港湾の観光レクリエーション機能をめぐる将来展望
(1)今後のニーズ動向予想
・ 「港湾を利用した観光レクリエーションへの今後のニーズ動向」については、「参加・関心が高まっていくだろう」と予想する市町村が5割近くみられるものの、「それ程期待できない」との見方も4割近くみられる(事業所等に比べるとやや厳しい見方)。
・ 「高まりが予想される活動」としては、「港湾空間でのイベント」(56%)をはじめ、「ヨット・ボートなどのスポーツ基地利用」(50%)、「港湾での釣り」(50%)、「遊覧・クルーズなどの海洋観光」(39%)、「港湾空間を活用したスポーツや健康増進活動」(39%)など、豊富に挙げられている。
・ 事業者・団体の回答と比較してみると、市町村が港湾でのイベントや釣り等、地元コミュニティの利用を前提とする活動にウェイトを置いているのに対し、事業者・団体はクルーズ等の海洋観光、食観光等、来訪者への魅力提供を一層積極的に展望しているようにみえる。
 
■ニーズ動向の予想(【市町村全体票】問7)
項目 市町村 事業者・団体
01 港湾での観光レクリエーション活動への参加・関心が高まっていくだろう 46.2 53.2
02 参加・関心の高まりは、それ程期待できない 38.5 16.2
03 わからない 10.3 16.2
無回答 5.1 14.4
集計対象票数(N=市町村 39、事象者・団体 62) 100.0 100.0
事業所・団体の内訳は、観光レクリエーション施設5、マリンレジャー事業者19、観光周遊船8、旅行代理店4、広告代理店6、主要団体13、商工会等7。
 
<高まりが予想される活動>
選択肢〜主要項目〜(複数回答) 市町村 事業者・団体
港湾空間でのイベント 55.6 30.6
ヨット・ボートなどのスポーツ基地利用 50.0 40.3
港湾での釣り 50.0 30.6
港湾リゾートなど半居住的利用 5.6 21.0
港湾空間を活用したスポーツや健康増進活動 38.9 21.0
遊覧・クルーズなどの海洋観光 38.9 38.7
港湾の環境や文化を楽しむ観光 33.3 21.0
港湾環境を活かした食事・宿泊・買い物 27.8 30.6
海洋環境や臨港産業の体験学習 27.8 30.6
音楽や絵画など芸術活動への港湾の利用 22.2 9.7
港湾内でのビーチバレー、船遊びなど(事業者向けでは「公園的利用」の表現) 11.1 24.1
集計対象票数(N=市町村 18、事業者・団体 62)
市町村は、上で「01 港湾での観光レクリエーション活動への参加・関心が高まっていくだろう」と答えた18件、事業者・団体は、全数(62件)を母数とする比率を掲載。
 
(2)将来計画における港の位置づけ
・ 市町村の「将来計画」では、地域資源を活かし「活力」、「交流」を育む、といった目標を掲げるケースが多い。その中で「港湾の位置づけ」については、物・人の交流拠点という性格を基調に、水産業の振興拠点、観光レクリエーションの中心、防災拠点、市民の集いの場として充実を図る方向性が見受けられる。「港湾都市」(松浦市)、まちづくりの視点からの「みなと」づくり(平戸市)、「マリンタウン」(有川町)など、港湾を「将来計画促進のための基本的な施設」として位置づけている地域もある。
 
■市町村の将来計画(【市町村全体票】問6)
市町村 将来計画 港湾の位置づけ
長崎市 将来の都市像:活力と潤いにあふれ、歴史がいきづく交流都市・長崎。 政策目標:安らぎと潤いのある環境都市、生き甲斐と思いやりに満ちた福祉都市、機能的で魅力溢れる空間調和都市、人間性を育む個性豊かな国際平和文化都市、賑わいに満ちた独創牲豊かな産業新生都市。 「海・まち・山」の三要素が調和した長崎市の大景観を保全する中で「みなと」を活かした水辺のプロムナードや国際観光ふ頭の整備を図る事により、市民・観光客が集い、ふれあい、自然に親しむ、潤いの「みなと」を目指す。また、長崎港臨港地区内の港湾機能を十分確保し、その利用促進を図るため臨港交通体系の充実を図る。さらに、港湾及び臨港地域の環境・景観整備を進めると共に、眺望に優れた公園などの整備を進め、市民に親しまれる「みなと」の魅力を高める。
諌阜市 基本方針:・海洋性レクリエーション基地の整備・親水空間の創出・生活空間の形成・良好な海域環境の形成を含み検討中。 地域産業を支援する港湾
大村市 波静かな大村湾を生かし、家族やグループで楽しむことができる場としての整備を促進します。  
平戸市 特色ある“みなと”としての整備を促進させる。まちづくり事業としての視点により、歴史再現、住環境機能向上、基幹産業の振興にプラスとなる賑わいのある“みなと”づくりの実現を図る。 地域経済、住環境保全施設機能をもつ地域特色のある港
松浦市 港湾整備事業を通して活力ある町づくりを実現するため、当市の目標とする市外、県内外のさまざまな人々との交流拠点、輸入拡大のための開港の促進を行い、港湾都市としての発展を図る。 県下でも有数の天然の漁港をもつ当市においては、港湾の果たす役割は大きい。又、港湾の整備により人、物の交流、物流の拠点としての期待は大きい。
野母崎町 「住みよい町、住みたくなる町づくり」:豊かな生活が実感できる、いつまでも安心して生活できる、恵まれた資源を活力に活かす、豊かな心を持ち生き甲斐に満ちたまち、誇りを持ちみんなで進めるまち 水産業の振興の拠点となる漁船の基地港
時津町 町の中心部に港を包括したイベント広場、散策できる緑地・緑道、サイクリングロード等を設置し水辺に親しむ景観の整備を図る事によって活力と潤いのある水辺のプロムナードを創出する。又、同時に地震等の大災害時の避難場所等、防災広場としても確保することにより民生の安定に寄与していく。 長崎空港から長崎市へのアクセス又、ハウステンボス等の大型リゾート地への海からの発着地として位置づけられている。
大島町 肥前大島港再整備事業により、新ターミナルの建設(H14年度完成)、ターミナル周辺の整備(H15年度完成予定)を行い、大島町の交通・観光拠点として今まで以上に計画している。  
大瀬戸町 地域の特性に適合した産業の振興、高齢者対策の促進、快適で住み良い町づくりのための生活環境整備、住民参加の町づくりの推進、交通通信体系の整備・情報化及び地域間交流の促進、国際観光の推進、広域的な社会経済圏の整備計画との関連 広域的な視野に立った特色ある観光地づくり、地域の自然及び伝統・文化を活かしたまちづくり。
小長井町 山茶花高原に新たな魅力の創出、学び・ふれあう体験型観光地づくり、訪れた人をもてなす地域づくり。豊かな自然を活かした独自の交流スタイルを目指しています。 現在は位置づけしていないが、春の潮干狩り、冬のカキ焼きは有明海の恵みを活用した観光資源であり、今後も交流人口が増えると思われる。
富江町 「町全体の魅力づくり」という富江町観光の目標を明確化するとともに、今日の観光レクリエーションニーズに対応した、新しい観光思想の啓蒙を行う、各種要素を効果的に活かし、相互に連携させるための観光拠点づくりを進める、地域住民並びに町を訪れる人々が、自然と調和した環境の中で十分楽しめるような観光地の整備を図る。 海釣場等、レジャーゾーンの開発(港湾周辺の小島などにおいて)
福島町 伊万里湾やイロハ島、つばきの群生林などの自然環境の保全と回復、地域基盤の整備、進行する高齢化への備え、人づくりや文化の創造、新地域産業の育成など、長期的な視点にたって優れた資産を継承し、維持・更新、創造を図るとともに、次世代への負担を先送りしないまちづくりを進めます。  
鷹島町 島の個性を活かす産業のまちづくり、豊かな交流と文化のまちづくり、健康とふれあいのまちづくり、自然と生活が調和した快適なまちづくり、広い視野で行動する積極行政まちづくり。 本町の文化の特徴は元寇であり、港湾区域内から発掘された元寇遺跡等を活用し観光に結びつける。
鹿町町 現在、港湾においてイベント等観光に資するような土地は整備されておらず計画がない  
小佐々町 21世紀の門戸を開く町の創造(自然にやさしい8千人の町)生活環境を整える、福祉を進める、魅力的な町をつくる、豊かな人間性を育む、産業を育てる、力を合わせて進む。 産業を育てる。日本本土最西端という資源を生かした観光地づくり、恵まれた水産資源を生かした「産業観光」の確立を進める、既存の観光資源の整備や保全とともに静養・保養型の滞在型観光地づくりを推進、地域住民にやさしい観光地づくりを目指し、観光客と住民との「ふれあいのある」観光を推進。
奈留町 水産振興:漁業生産の安定、水産物の高付加価値化、体験型漁業観光の導入 将来計画を促進するための基本的な施設
新魚目町 山林や海浜などの景観、自然環境を活かしての共存、歴史文化を誇りとして育む、人口流出、過疎化、の進行など困難を打開するため自立する島づくりを目指す、食・観光・レジャー・文化等、多様な魅力を活かした交流、生活環境の充実、雇用拡大の確保により定住人口の減少の歯止めを行う。 上五島の交流の拠点港として重要な港であり、現施設での港湾の観光レクリエーションは難しいと思うが、島内のスタート地点としての利用が出来る物と思われる。
有川町 H16年の市町村合併を控え、当町では島の玄関口として有川港を中心にまちづくりを推進、主な施設はH2年から国・県とともに進めている「マリンタウンプロジェクト」(有川港再開発事業)でH15、16年度竣工の「多目的ターミナル建設事業」の完成をもって完了予定。 有川港は古くから上五島の玄関口として発展、又、官公署や事業所が近隣に多く存在する事から、行政・経済の中心地として現在に至る。近年は港をとりまく環境の整備が進められ、余暇レジャーに利用されるなど、住民の生活に潤いとにぎわいをもたらす場となっている。
厳原町 自然・文化・歴史を活かした国際交流のまち。 対馬・福岡間、対馬・釜山間を結ぶ定期船(フェリー・ジェットホイル)が就航しており、海の玄関口として重要な役割を担っている。
美津島町 第1次産業と観光の融合を目指す町づくり、日韓交流拠点を核とした国境の新しい「街」づくりをめざす町。地理的に対馬とわずか49.5kmの距離にある韓国との交流により交流人口の拡大を図り、地域の活性化、若年層の定住安定促進等で、国際交流の拠点施設づくりを目指す。 「グリーンピァつしま整備事業計画」の中で観光客船の着岸施設やその背後施設の有効利用等、重要な位置づけである。
豊玉町 対馬の中央である本町の浅茅湾を生かした、山・海の体験型観光施設の充実。 町営渡海船「ニューとよたま」を利用し、海・山々の自然を満喫するための寄港地。
上対馬町 H16年3月の合併により、「対馬市」となるが、新市の主要施策の中でも、国際海道もてなしゾーンとしての中心的役割を担う比田勝港の整備が、掲げられている。 対馬の北の玄関口として、本土、及び韓国との人的交流基地。物流の拠点基地。
網掛け:港湾・海域の活用に関わる項目
 
(3)港湾での観光レクリエーションへの取り組み意向
《市町村》
・ 将来的な取り組み意向については、「何ともいえない」(54%)と答えた市町村が多く、「前向きに取り組んでいきたい」(36%)とする市町村は4割弱であった。港湾ごとにみても「現状維持」(49%)との回答が、利用を「積極的に促進したい」(30%)との意向を上回った。
・ 地域活性化に結びつけるため「積極的に利用したい」という意向が読み取れる一方で、立地条件や漁業との調整などを考えると積極的になれないといった認識も少なくない状況が把握された(「そのように認識する理由」についての自由記述をふまえた傾向)。
・ 全体的に、港湾の観光レクリエーション利用については、ニーズも地元の対応も熟度は低いながら、できる範囲で工夫しながら取り組んでいきたいという意向を読み取ることができる。
 
■市町村の、港湾の観光レクリエーション利用への将来的な取り組み意向
<市町村の姿勢として>(【市町村全体票】問8)
選択肢
01 前向きに取り組んでいきたい 14 35.9
02 工夫していきたい部分がある 3 7.7
03 何ともいえない・未定 21 53.8
無回答 1 2.6
集計対象票数(N=39) 39 100.0
 
<各港湾について>(【港湾個票】問7)
選択肢 市町村 事業者・団体
01 積極的に促進したい 30.2 54.8
02 現状維持 49.1 27.4
03 利用を抑制したい 0.0 6.4
無回答 20.7 11.4
集計対象票数(N=53、) 100.0 100.0
 
《事業者》
・ 市町村の半数程度が「現状維持」との姿勢を示す中で、港湾を観光レクリエーション事業のために利用する事業者・団体は、過半数が今後「積極的に取り組みたい」との意向を示しており、市町村にも増して前向きな姿勢にあるといえる。(「3. 港湾を利用する事業者等の状況」参照)







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