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10. 幼児ダミー及び幼児被験者(1〜3歳)による試験
10.1 幼児被験者による試験
 平成15年12月5日、製品安全評価センターにおいて、1歳から3歳計6名の幼児被験者の参加を得て、着用試験及び浮遊試験を実施した。被験者の体格等を表18に示す。
 
表18 被験者の体格等
No. 1 2 3 4 5 6
性別
身長(cm) 98.0 92.5 88.7 89.0 84.0 79.0
体重(kg) 15.0 14.0 12.0 13.5 11.0 10.0
年齢(歳) 3歳 3歳4月 2歳5月 2歳1月 1歳11月 1歳7月
 
 試験に使用した救命胴衣は、昨年度に試作された救命胴衣を元に改良されたもので下記の5種類である。但し救命胴衣Aについては、予備的に実施した浮遊試験において安定した浮遊状態を示さなかったため試験を途中で取りやめた。
 
A型:浮き輪状の膨脹式浮体をチョッキに内蔵した構造
B-1型:首掛け式に近いチョッキ型で胸部浮力体の左右アンバランスにより復正力を持たせたもの(枕浮体1体型)
B-2型:B-1型と同様のもので枕浮体を左右分割にしたもの
C型:チョッキ型で胸部浮力体の左右アンバランスにより復正力を持たせたもの
D型:チョッキ型で胸部浮力体の左右アンバランスにより復正力を持たせたもの
 
(1)着用試験
 保護者により通常衣服を着用した幼児被験者に救命胴衣を着用させ、着用状況を観察すると共に、着用に要する時間を測定した。結果を表19に示す。着用をいやがる子供の場合を除き、ほとんど1分以内で着用が完了した。
 
(2)浮遊試験
 水着のみ着用した幼児被験者に救命胴衣を着用させ水面に浮遊させ、水面から口元までの距離、胴体角度及び顔面角度を測定した。結果を表20に示す。
 
10.2 幼児ダミーによる水槽試験
(1)1歳、2歳及び3歳幼児ダミーによる試験
 幼児ダミーを用い、前述の幼児用救命胴衣5種類を使用して、製品安全評価センターにおいて飛び込み試験及び復正試験を実施した。
 
a. 飛び込み試験
 水面上0.5mの位置に救命胴衣を着用したダミーを座らせ、肩部を押すことにより前方から水中に落下させる試験を3回繰り返して実施した。各落下に際して口が水中に留まっている時間を測定した。次に水面上1mから救命胴衣を着用したダミーを水面に落下させる試験を実施した。この場合、ダミーは胴体をやや前方に曲げた姿勢とし、上記と同様の測定を行った。
 
b. 復正試験及び浮遊試験
 救命胴衣を着用したダミーを水中に浮かべ、下向きの姿勢にして、前方に軽く押し出した後、口元が水面から離れるまでの時間を測定した(前進状態)。また、ダミーを下向きの姿勢から、そのまま手を離す場合について同様の測定を行った(静止状態)。その後、水面からの口元高さ、垂直からの胴体角度及び水平からの顔面角度を測定した。なお、復正に伴い頭部や手足が動いた場合は、そのままの状態(状態1)及び直立姿勢に直した場合(状態2)の両方について測定した。
 救命胴衣B-1、B-2(両者はほぼ同様の性能を示しているため、救命胴衣Bとして取り扱う)及びDは復正したが、救命胴衣Cは枕部浮力体が復正を妨げており復正しなかった。
 
10.3 幼児被験者及び幼児ダミーによる水中性能試験結果の比較
(1)浮遊姿勢について
 救命胴衣4種類(救命胴衣A型を除く)を用いて実施した幼児被験者及び幼児ダミーの浮遊試験結果の比較を表21及び図6〜8に示す。
 浮遊時における水面と口元距離及び顔面角度について、飛び込み後にダミーの頭部が傾いたままの状態(状態1)では幼児とダミーとで差がみられるが、枕部を修正してダミー頭部を中央に位置させた場合(状態2)は比較的幼児の測定値に近い結果が得られている。また、胴体角度は頭部の状況に影響を受けず、ダミーの結果は幼児と同様の測定値を示している。
(2)復正性能について
 飛び込み試験及び復正試験結果を表22及び図9〜12に示す。
 高さ0.5m及び1.0mからの飛び込み試験については、幼児では実施できなかったため比較できないが、救命胴衣の復正性能に対応して、救命胴衣B及びDでは5秒以内に口元が水上に出る結果が得られた。
 復正試験については前進状態及び静止状態のいずれの場合も、救命胴衣B及びDでは5秒以内に復正し、救命胴衣Cの場合は復正しない結果が得られた。
 飛び込み試験と同様に、幼児被験者による復正状況は明確ではないが、以前に行われた3〜5歳の幼児被験者及び3歳幼児ダミーとの結果比較から推定して、幼児が着用した場合の復正状況に対応する結果であろうと推察される。
 
表19 着用試験結果
 
 
表20 浮遊試験結果
測定項目 胴衣 結果
1 2 3 4 5 6
口元距離(cm) A - - - - - -
B - 6 9 4.5 - -
C - 7 8 5.5 - -
D - 5 8 5 - -
顔面角度(度) A - - - - - -
B - 35 20 35 - -
C - 40 35 35 - -
D - 40 35 40 - -
胴体角度(度) A - - - - - -
B - 75 80 75 - -
C - 75 80 60 - -
D - 75 75 70 - -
B-1、B-2の区別 B-1 B-2 B-2  
注:-は被験者の協力が得られなかったことを示す。
 
 
表21 被験者と幼児ダミーによる結果比較(浮遊試験)
    被験者   1歳ダミー  2歳ダミー  3歳ダミー 
口元距離
(cm)
胴衣 2 3 4 状態1 状態2 状態1 状態2 状態1 状態2
B-1 6 - - 0.5 5.5 1.5 4 4 -
B-2 - 9 4.5 4 5.5 3.5 4.5 4.5 6
C 7 8 5.5 0.5 6 0.5 6.5 7 8
D 5 8 5 0.5 4.5 0.5 5 6.5 5
 
 
    被験者 1歳ダミー 2歳ダミー 3歳ダミー
顔面角度
(度)
胴衣 2 3 4 状態1 状態2 状態1 状態2 状態1 状態2
B-1 35 - - 5 15 10 20 0 -
B-2 - 20 35 15 15 15 15 5 30
C 40 35 35 20 35 15 30 30 30
D 40 35 40 15 15 15 20 -10 35
 
 
    被験者   1歳ダミー  2歳ダミー  3歳ダミー 
胴体角度
(度) 
胴衣 2 3 4 状態1 状態2 状態1 状態2 状態1 状態2
B-1 75 - - 70 70 75 75 75 -
B-2 - 80 75 80 80 75 75 80 75
C 75 80 60 70 70 70 70 70 70
D 75 75 70 75 75 80 80 75 75
注:状態1は、試験後、頭部が傾いたままの状態、状態2は頭部を中央にもどした状態。
 
 
表22 幼児ダミーによる飛び込み試験及び復正試験結果まとめ
0.5mからの飛び込み 1歳ダミー 2歳ダミー 3歳ダミー 
水中時間
(秒)
胴衣 1回目 2回目 3回目 1回目 2回目 3回目 1回目 2回目 3回目
B-1 1.0 1.2 1.1 1.4 1.4 1.3 1.1 - -
B-2 1.1 1.9 1.7 1.9 1.9 2.0 2.1 1.8 2.0
C 復正せず 復正せず 復正せず
D 2.6 2.6 2.4 2.7 2.7 2.1 2.3 2.1 2.5
 
 
1mからの飛び込み  1歳ダミー 2歳ダミー 3歳ダミー 
水中時間
(秒)
胴衣 1回目 2回目 3回目 1回目 2回目 3回目 1回目 2回目 3回目
B-1 1.0 1.3 1.2 1.3 1.3 1.3 - - -
B-2 1.2 1.2 1.3 1.6 1.3 1.2 1.5 1.8 1.9
C 復正
せず
1.5 3.0 1.3 1.3 復正
せず
1.7 1.9 1.8
D 1.3 1.8 1.3 1.4 2.0 2.0 1.9 1.8 2.0
 
 
復正試験(前進)  1歳ダミー 2歳ダミー 3歳ダミー 
水中時間
(秒)
胴衣 1回目 2回目 3回目 1回目 2回目 3回目 1回目 2回目 3回目
B-1 1.0 1.5 1.3 1.4 1.4 1.3 1.4 1.6 1.4
B-2 1.6 1.5 1.3 1.4 1.7 1.6 1.7 1.7 1.8
C 復正せず 復正せず 復正せず
D 1.5 1.8 1.4 2.0 1.8 1.8 1.7 1.9 1.6
 
 
復正試験(静止)  1歳ダミー 2歳ダミー 3歳ダミー 
水中時間
(秒)
胴衣 1回目 2回目 3回目 1回目 2回目 3回目 1回目 2回目 3回目
B-1 1.0 0.8 1.1 1.0 1.1 1.1 - - -
B-2 1.2 1.2 1.2 1.1 1.4 1.1 1.2 1.3 1.2
C 復正せず 復正せず 復正せず
D 1.1 1.1 0.9 1.3 1.9 1.4 1.2 1.3 1.2







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