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地方自治体への提案活動について
近畿運輸局企画振興部企画課長 足立 基成
 
 少子高齢化の急速な進展や長期に及ぶ我国経済の低迷、自動車からのCO2排出による地球環境問題等が顕在化する中で、鉄道・バス等公共輸送機関の輸送量は著しく減少し、また、地方の過疎地域においては住民の足の確保が問題となるなど、現在の交通を取り巻く環境は非常に厳しい状況にあります。
 このような状況の中、近畿運輸局では、平成14年7月の組織再編を契機に、地域の交通課題に目を向け、地域と一体となった行政を目指して、「より便利で快適な公共交通サービスの実現」と「交通施設・交通機能を利用した地域の活性化」を重点に、各種施策の実施に取り組んでいます。
 「より便利で快適な公共交通サービスの実現」については、サービスの向上により公共交通の利用が促進され、道路交通の改善や地球環境問題への対応等に大きな効果をもたらすものと期待され、成熟した社会にふさわしい都市空間の創造に資する施策であると考えられます。また、「交通施設・交通機能を利用した地域の活性化」については、当局の交通問題解決への支援ツールとでもいうべき公共交通活性化総合プログラムやTDM実証実験、バス利用促進等総合対策事業等の各種補助制度の活用により、その効果が期待できるものと考えています。
 
 
 これらの施策の実現には、言うまでもなく多岐にわたる課題の克服が必要であり、地方公共団体、交通事業者等と密接に連携しつつ、必要な分野・箇所を選定し、重点的に取り組んでいくことで大きな効果を生み出すことが可能と考えています。
 このようなことから、近畿運輸局では、平成15年8月、地方自治体に対し、当局の各種施策の紹介とその適用方策を提案する「交通関係施策の実施に向けた提案活動」を行うこととし、現在、地方自治体を訪問し、意見交換を行っているところです。
 この提案は、当局の補助制度を踏まえた幾つかの連携例、課題解決方策例等を提示しながら、市民の方々からの発案も取り入れ、人と環境に優しい交通体系を築くことを通じて地域経済の活性化と豊かで快適な生活を実現することを目的としたもので、各施策について地方自治体と連携して実施することを提案しています。
 もちろんこれらの施策については、あくまで一般的なケースとして提案するものに過ぎず、これらは、変更したり、組み合わせを行ったりして、地域それぞれの状況、特色に合った形で運用すべきものと考えており、これを地方自治体と一緒に作り上げ、共同で実施してまいりたいと考えているものです。
 それでは、以下にその具体的提案内容について紹介します。
 
(1)公共交通の活性化、利用促進を通じたゆとりある都市生活空間の確保
(1)都心部等での環境改善と併せた公共交通の利用促進
 
 交通事業者が百貨店や商店街、コンサート会場等交通生成原因者と連携して互いに費用や利益を分担し、格安(無料)、乗車券を発行したり、公共交通利用者に対して割引料金を設定する等により公共交通利用の促進を図り、都心部繁華街等への自家用自動車使用を削減することができないか。
 
(運輸局の補助メニュー)
 
●公共交通活性化総合プログラム(合意形成、アンケート調査等)
●広域的な公共交通利用転換に関する実証実験事業費補助(割引減収分やPR費等ソフト経費補助)
●バス利用促進等総合対策事業(バス利用促進等の啓発事業)
 
(2)駅の利便性向上と駅周辺の環境整備
 
 交通渋滞や駅前広場の混雑、自転車の違法駐輪、乗継不便など慢性的な問題を抱えるバス交通の総合的改善の一環として、複数事業者毎の乗場を方面別に集約を図りながらバス停の適切な位置への見直し、徹底したバリアフリー化、良好な歩行空間の形成、NPOによる駅前の美化運動支援等を関係者の合意形成を図りながら総合的に改善することにより、まちの顔である駅の利便性を向上させ、駅前の環境を整備できないか。
 
(運輸局の補助メニュー)
 
●公共交通活性化総合プログラム(合意形成、アンケート調査等)
●バス利用促進等総合対策事業(ターミナル等施設整備)
●交通施設バリアフリー化設備整備費補助(駅のバリアフリー化)
●公共交通移動円滑化設備整備費補助(駅周辺のバスターミナルのバリアフリー化、ノンステップバスの導入)
 
(3)バスの走行環境の改善による快適なモビリティの確保
 
 慢性的な渋滞によるバスの遅延を解消できないか。バスロケーションやPTPSなど従来からの手法に加え、利用者を含めた関係者で協議の上、増便・路線の延長、急行バス等の導入等をも図り利便性を向上させることができないか。
 
(運輸局の補助メニュー)
 
●公共交通活性化総合プログラム(合意形成、アンケート調査、需要予測等)
●TDM(交通需要マネジメント)実証実験事業費補助(割引減収分やPR費等ソフト経費補助)
●広域的な公共交通利用転換に関する実証実験事業費補助(同上)
●バス利用促進等総合対策事業(バスロケーションシステムやバス総合案内システム等交通システム対策事業、デジタル行先表示器等車載設備・低床車両購入等個別対策事業)
●低公害車普及促進対策事業(低公害車導入等)
 
(4)鉄道を核とした地域の活性化
 
 鉄道を単に駅間の移動空間として位置づけるに留めることなく、地域の大切な資産として活用するという観点から、企画乗車券の設定、行政施設・各種イベント・商店街等とのタイアップ、駅前駐輪場の整備、パークアンドライド、バリアフリーの促進等を総合的に実施し、鉄道の活性化を核として地域社会の活性化を図ることができないか。
 
(運輸局の補助メニュー)
 
●公共交通活性化総合プログラム(合意形成、アンケート調査、需要予測等)
●TDM(交通需要マネジメント)実証実験事業費補助(割引減収分やPR費等ソフト経費補助)
●広域的な公共交通利用転換に関する実証実験事業費補助(同上)
●交通施設バリアフリー化設備整備費補助金(駅のバリアフリー化)
 
(2)交通空白地域でのモビリティの確保
コミュニティバス、乗合タクシーの導入
 
 地域住民、特に老人や学童等いわゆる交通弱者に配慮しつつ、日常生活の足の確保やまちの活性化を図るため、各地域の旅客流動実態にあった交通体系のあり方を検討し、その導入を図れないか。
 例えば、都市部における交通空白地域へのコミュニティバスの導入やバス路線廃止後の代替輸送機関としてのデマンドバスや乗合タクシーの導入が実施できないか。
 
(運輸局の補助メニュー)
 
●公共交通活性化総合プログラム(合意形成、アンケート調査等)
●広域的な公共交通利用転換に関する実証実験事業費補助(割引減収分やPR費等ソフト経費補助)
●バス利用促進等総合対策事業(コミュニティバス導入調査・実証実験事業)
●地方バス補助(路線バス・スクールバスとの一元化、中小型車両の活用等モデル的取り組みに対し補助)







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