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1992/09/27 産経新聞朝刊
【主張2】新時代の国連と日本の役割
 
 国連総会が始まり、各国首脳の演説や活発なロビー外交が展開されている。今年は、ソ連が崩壊しその地位をロシアが引き継いで以来、初めての通常総会だ。
 日本からは渡辺外相が出席、演説したが、その内容は冷戦の終結、ソ連崩壊という歴史的激変と、その後の混迷する国際情勢をふまえ、改めて「世界の平和と安全の維持の面における国連の役割の飛躍的増大」という認識を前面に打ち出している。
 そうした意味で、今総会の最大の焦点はブトロス・ガリ事務総長が六月に報告した「平和のための課題」と題する国連の安全保障機能の強化策である。
 その内容をごくかいつまんでいえば、在の国連の平和維持活動(PKO)や平和維持軍(PKF)では限界のあるさまざまな地域紛争により有効、積極的に対処することが眼目。第一点は、侵略の発生を未然に防止するため、一方の当事者からの要請だけでも、国境線などにPKFを展開する予防措置。第二点は、従来のPKFよりも重武装で強制力を有し武力行使を辞さない「平和執行部隊」の創設である。PKOが前提としている紛争当事者の合意にこだわらぬ思い切った内容だ。
 まだ国際社会全体の合意が成立したわけではないが、ユーゴ紛争の惨状や、干ばつと内戦によるソマリアの深刻な飢餓を見れば、従来型のPKOに限界があることも確かだろう。とくにソマリアは氏族間の内紛で無政府状態が続き、国際赤十字などの救援食料の半分は略奪されているという。PKFを展開させようにも、当事者の合意が成立しないのである。
 渡辺外相の演説は、「ガリ報告」を「誠に時宜を得たもので心より敬意を表する」と評価しながらも、PKFの予防的展開や平和執行部隊の創設には、慎重な検討を求めている。やっとカンボジアへのPKOが緒についた今、政府としてはこれが精一杯の表現だ。なぜなら、日本のPKO法は(1)停戦合意(2)当事者の合意(3)中立性の確保(4)停戦が崩れた場合の業務中断(5)護身用のみの武器使用−という五原則に縛られている。しかも、PKF本体への自衛隊参加は凍結されている。
 しかし、米国などが「ガリ報告」に好意的で、「社会主義インターナショナル」も「歓迎」を決議するなど、この構想への理解が進みつつある。日本もこの潮流を重視すべきだ。国連機能の強化にどの国よりも積極的な態度を明らかにしている以上、政府は及び腰であってはならない。
 渡辺演説は、日本の安保理常任理事国加入への期待を表明した。その経済力が多くの国の国造りに貢献していることもあって、別に不自然ではないが、常任理事国には国際の平和と安全を守るためのひときわ大きな責務がある。その目標と日本の政治の現状との落差は依然大きい。
 
 
 
 
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