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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2004年4月号 Voice
GPS戦国時代が始まった アメリカの独壇場に「ガリレオ」計画が楔を打ち込む
江畑謙介(えばたけんすけ)
(軍事評論家)
湾岸戦争の真の主役
 一九七八年二月二十二日、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を構成する最初のブロックI型NAVSTAR(ナブスター)衛星が、米カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から打ち上げられた。四半世紀後に世界がこのシステムなしには生活できなくなるとは、当時は誰も予想できなかったであろう。
 GPSは史上初めて、陸海空いかなる場所においても(衛星の信号が届くかぎり)、自分の位置と速度を三次元で正確に把握できるようにしたものだが、その起源は、容易に想像できるように、艦船の航法用であった。
 人工衛星が実用化されるとすぐに航法に利用しようという考えが生まれ、米国は一九六〇年から航法衛星「トランジット(Transit)」の打ち上げを開始した。
 低軌道を周回する七基の衛星で構成されるシステムは、衛星が発信する電波をとらえて、その(衛星が動いていることから生じる)周波数の変化(ドップラー・シフト)から船の位置を算出するというものであった。しかし、衛星の数が少ないために利用できる海域が限定され、測定に時間がかかり、航空機のように高速で移動している場合には利用できないという制限があった。
 このため米海軍と空軍は共同で、より実用性の高い測位システムの研究に着手し、一九七〇年には米陸軍も参加して、全天候下で常時三次元に位置を把握できるシステムの研究開発体制がつくられた。七三年四月、米国防総省は米空軍をシステム開発の責任部局に指定し、「防衛航法衛星システム(Defense Navigation Satellite System: DNSS)」の名称を与える。
 これはのちに「ナブスターGPS」と改称され、一九八五年までに第一世代のブロックI型一一基が打ち上げられた。海軍が考案した衛星の周回軌道と搭載する原子時計の技術に、空軍の信号波形と周波数案を組み合わせたものだが、ブロックI衛星の打ち上げ途中に核実験探知機能が追加されることになった。核実験探知衛星ベラの後継になるもので、この機能は現在のナブスター衛星でも継続されているが、一般にはあまり知られていない。
 ブロックI衛星は現在ではすべて寿命が尽きているが、後継のブロックII型の打ち上げ計画は、予算削減や一九八六年のスペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故などによって遅れ(GPS衛星はスペースシャトル実用化後、シャトルで打ち上げられる予定であったが、事故以後はデルタII型ロケットが使われている)、九一年の湾岸戦争のときには、二一基必要な(予備を含めると二四基)衛星が一七基しか周回していなかった。
 一九八〇〜八二年と三年連続して、政府予算要求案でGPS関係経費がゼロ査定とされ、国防長官の指導でかろうじて計画継続の最低費用だけが認められるという状態が続いたからである。
 だが、湾岸戦争はGPSの威力を軍に強く印象づけた。とくに地上部隊は、イラク南部やクウェートの砂漠でもつねに自分の位置を知ることができるという能力に狂喜した。民間用の受信機も掻き集められ、トラックやジープの計器盤にテープで貼り付けられた。中東の戦場に送られた息子のために、市販の受信機を買って送ってやった親もいたという。
カーナビ大国・日本
 一九九三年十二月八日、米国防総省はGPSシステムの完成を宣言し、九四年三月に二四番目の衛星(ブロックII型)が打ち上げられると、実用化は急速に進んだ。軍における応用としては、航法だけではなく兵器の誘導用としても使う構想が浮かんできた。
 これはGPS計画の当初には考えられていなかった用法であるが、目標と自分の位置が(リアルタイムで)分かれば、目標に正確に誘導できるという原理を兵器に応用したにすぎない。こうして生まれたのがGPS誘導爆弾JDAM(ジェイダム:Joint Direct Attack Munition)である。
 開発段階ではGAM(GPS Aided Munition)と呼ばれ、一九九九年のユーゴスラビアに対するNATOの空爆作戦で初めて使用された。無誘導型爆弾の固定式の安定ヒレ(フィン)を付けた尾部を、慣性誘導装置(INS)とGPS受信装置、落下コースを修正する可動式のヒレをもつ尾部ユニットと交換しただけだが、目標の位置座標をINSのコンピュータに入力してやれば、目標の中心から四〜六メートル以内に命中する。それが昼夜、悪天候を問わずに実施でき、前述の高い命中精度から、敵味方が接近した状態での攻撃(近接航空支援)にも使用できる。これらの能力は航空作戦に革命的な変化をもたらした。
 ユーゴスラビアのような天候が悪い地域でもつねに航空攻撃が実施できるし、近接航空支援機は低空を飛ぶ運動性に優れる小型攻撃機である必要はなく、大型の爆撃機が、地対空ミサイルの届かない高高度から、正確に目標を攻撃できるようになった。
 イラク戦争でも、砂嵐の最中にJDAMは、砂嵐を利用して移動中のイラク共和国防衛隊を撃破しつづけた。元来が誘導装置壱もつミサイルにもGPS誘導方式は応用され、イラク戦争で八〇二発発射されたトマホークの八〇%はGPSだけで目標に飛んでいる。
 民間の応用も急速に進み、カーナビから地殻の移動まで、計画時には予想もしなかった応用法が次々と考案され実用化されている。カーナビの利用分野で日本は世界の六五%を占める。GPSの利用者の九〇%は民間で、受信機市場は年間三〇〇億ドルといわれる。
 GPS計画当初、民間利用は考えられていなかったが、一九八三年九月一日に発生したソ連軍機による大韓航空機撃墜事件(おそらく慣性航法装置の入力ミスからコースを外れ、ソ連領空に進入して撃墜された)を契機に、時のレーガン米大統領がGPSを民間にも利用させることを決断、一九八七年、米運輸省にGPS民間利用に関する部局が設置された。
 GPSは高度二万二〇〇キロの軌道を二九基(二〇〇四年初頭時点)の衛星が六つの軌道面を形成しながら、各々十二時間周期で地球を回っている。各軌道面で作動している衛星は四基で、地上ではつねに五、六基の衛星からの信号が受けられる。
 衛星には原子時計が搭載され、その時刻が電波信号で地上に向けて発信されているが、受信機は、各々の衛星から発信される時刻を表す無線信号のパルスが到達するまでにどのくらいの時間を要したかから、衛星との相対距離を知り、複数の衛星との距離を三角法で計算して自分の位置を、自分が動いているなら、その方向と速度を知るという方法である。
 今年一月二日には一基の衛星が故障、異常信号を発したため、測位精度が低下する事件が起こっている。
 信号はLバンドと呼ばれる周波数帯に属し、一五七五・四二メガヘルツのL1、一二二七・六〇メガヘルツのL2という二つの信号が出ている。さらにL1には信号を粗くして捕捉を容易にしたC/Aコードと、精密測定ができるPコードとが含まれる。L2はPコードだけが発信されている。
 C/AコードはPコード信号を捕捉しやすくするためのものだが、前記の理由から民間にも無償で開放されている。しかし、意図的に信号が動揺するようにして、測位精度を下げる機能が追加された。これを「セレクティッド・アベイラビリティ(SA)」といい、このために民間の測位精度は最大で一〇〇メートル程度にまで下げられた。軍で使用するPコードには暗号が掛けられ(暗号を掛けた信号をYコード、またはP(Y)コードという)、これを使うと九五%の確率で一六メートル以内の測位精度が得られた。
 ところが民間では加速度計の併用や固定FM放送局の電波で補正するディファレンシャルGPS(DGPS)方式などが考え出され、三〇メートル以下の測位精度を得るようになった。そのような機能をもつ外国製受信機によって米国製受信機の世界市場が狭められるし、欧州をはじめとして、米国以外の国でも独自に衛星測位システムの実用化をするとなれば、GPSの民間用測位機能を制限している理由がなくなる。
 このようなことから、二〇〇〇年五月一日を期してSA機能は廃止され、民間でも一二メートルの測位精度を得ることができるようになった。米国防総省はC/Aの無償使用を今後も保証すると発表している。
「ガリレオ」の反乱
 じつは、GPSの独占状態はすでに一九八〇年代後半から破れはじめていた。ソ連がGLONASS(グロナス:全地球航法システムの略)というGPSと同じ方式の衛星航法衛星を打ち上げはじめていたからである。しかし、ソ連の財政難で計画は停滞し、さらにソ連邦の崩壊によってグロナスは中途半端な状態で運用されるはめになってしまった。それでもGPSとの相互運用体制が構築され、このシステムをGNSS-11(全地球航法衛星システム1)と呼ぶ。
 一九九九年七月、EUは独自に衛星測位システムの建設に着手する方針を決定した。米国のGPSが無償で民間に高精度の測位サービスを提供してくれるのに、EUがあえて高額の経費を投じて独自のシステムをつくろうという背景には、いくつかの理由がある。
 まず、GPSの一般開放信号の管理権は米国が一手に握っている点がある。米国はブロックIIR型の二〇〇四年七月から打ち上げられる型から、L2信号に軍専用のMコードと、もう一つの民間用信号L2Cを追加し、さらに二〇〇六年からのブロックIIF型衛星では、三番目の民間用信号L5(一一七六・四五メガヘルツ)を加える計画だが、それらの一般開放信号が米国の都合で停止されないという保証はない。
 将来、GPSへの依存度がきわめて大きくなったときに、米国の都合でその利用が左右される可能性に対する不安は大きい。また、GPSが絶対不可欠のものとなったときに米国が利用経費の支払いを要求してきたならば、世界はそれを拒絶するのが難しくなる。近い将来、世界のGPSユーザーは二億人にも達すると予想され、商業的に利用するなら、巨大な利益と雇用が創出されるだろう。
 だが、「ガリレオ」と名付けられたEUの衛星測位システム計画はなかなか進展を見なかった。最大の障害はその経費である。高度二万三六一六キロの軌道上に三〇基の衛星を打ち上げるには、研究開発費に一二・五億ユーロ、衛星の製造と打ち上げに二一・五億ユーロ、地上管制局なども含めたシステム全体の完成までに三五億ユーロも掛かる。
 そうこうしているうちに、二〇〇〇年十月三十日、中国が「北斗(ペイ・ドゥ)」と呼ぶ衛星を打ち上げた。その名から推測されるように、この衛星は航法用ないしは測位用と考えられるものの、その様式はGPSやグロナス、ガリレオの測位方式とはかなり異なるものらしい。
 北斗1Aは東経一四〇度、ニューギニア上の静止軌道に止まった。さらに二カ月後の十二月二十日、北斗1Bがインド洋の中部、東経八〇度の静止軌道(高度三万五八〇〇キロ)に打ち上げられた。しかし、三番目の北斗1Cが打ち上げられたのは二年半後の二〇〇三年五月二十四日のことで、なぜこれだけの時間が空いたのかは明らかではない。この三番目の衛星は東経一一〇・五度、先の二衛星の中間に位置している。
 各衛星からは四〜六ギガヘルツの信号が出ているようだが、これで地表上から位置を知ろうとするなら、信号を受ける側も正確な時計(原子時計)をもっていなければならない。
日本の「準天頂衛星」計画
 局所的ではあるが、別の軌道に衛星を打ち上げると、GPSに相当する高い精度を得ることができる。モルニア軌道といって、軌道高度が低いほうでは一〇〇〇キロ程度、高いほうでは四万キロに達する長楕円型の軌道である。ソ連のモルニア衛星が実用化したので、この名がある。
 モルニア軌道はその長いほうの楕円軌道の下では、長時間にわたって衛星を観測できる。つまり、ある特定地域に長い時間信号を送りつづけられる。軌道傾斜角をおよそ六三度にすると東西への軌道のずれを最小限に抑えられ、このような軌道をもつ衛星を四基、高い測位精度を得たい地域の上を通るように打ち上げると、つねに一基の衛星がほぼ真上の位置にある状態になり、GPSよりも二〜三倍も正確な測位ができるようになる。
 じつは、このような衛星は日本でも実用化が計画されている。日本の場合は、まず「準天頂衛星」と呼ぶモルニア軌道衛星三、四基を先に打ち上げ、後に静止軌道に三基の衛星を打ち上げるという計画である。七〇年代初期に通信総合研究所で考案されたが、経費の点で実現を見ず、九〇年代末になって、ビルが林立する都市部における衛星通信の自動車利用技術に関する研究から構想が復活した。これはカーナビにも応用できるということを意味する。
 二〇〇〇年に経団連(現日本経済団体連合会)が国に準天頂衛星型航法(測位)システムの実現化を要請し、二〇〇二年1月からは日本の関連企業による研究会が発足した。同年六月、総合科学技術会議宇宙開発利用専門調査会が予算の重点配分を行なう方針を決定、七月四日には自民党に次世代衛星システム推進議員連盟が発足した。米国のGPSだけに依存するのは、情報安全保障の見地から不安があるというのが、計画推進の理由とされている。
 この衛星システムを使えば、ほぼ真上から電波を受けられるので、ビルの谷間でもカーナビが働くだけではなく、通信衛星としての役割も果たさせられる。
 計画が予定どおりに進めば、二〇〇八年ごろから衛星の打ち上げが開始されるが、二〇〇三年末の情報収集衛星打ち上げ失敗にともない、日本の宇宙開発・利用計画の根本的な見直しが求められているため、この準天頂衛星型測位システムがはたして実現するのかは微妙な状況となった。
 一方、中国がモルニア軌道衛星を打ち上げるという情報は二〇〇四年初頭現在のところまだない。そのため北斗衛星打ち上げの目的について、世界は測りかねている。
米国がGPSを停止する日
 その中国が二〇〇三年十月三十日、ガリレオ計画への参加を表明、二億ユーロの経費負担を発表した。これは資金難のガリレオ計画に大きな助けとなった。さらに十一月にはインドも参加を発表、三億ユーロの負担を承認した。ほかにイスラエルが関心を示しているという。
 中国が参加を決めたのは、研究開発の技術的メリット、製造と打ち上げ、さらに実用後のサービス支援における経済的メリットが期待できるからであろうが、同時に、北斗衛星計画が不調なのではという推測も呼んでいる。
 だが、おそらく中国にとって最大の理由は、ガリレオが国際共同体の運営であり、測位精度を下げられたり発信を停止させられたりする懸念がないという、安全保障上の問題であろう。北斗衛星システムが期待どおりに働かないなら、なおさら中国は、軍事力の近代化に備えて、確実に機能する衛星測位システムを必要とする。
 ガリレオは基本的に民間用で、そのサービスの利用は有料となる。具体的にどのような料金徴集方式にするかは、まだ最終結論が出ていない。しかし、ガリレオからは「パブリック・レギュレイティッド・シグナル(一般規制信号:PRS)」と呼ばれる、防衛や安全保障用途の信号も発信される予定で、この各国政府からの使用料が、収入源として大きな期待を寄せられている。
 中国はガリレオ計画参加に当たりPRSには関与しないとしているが、民間用の信号だけでも測位精度低下や発信停止がないなら、GPS誘導兵器の利用には差し支えないし、中国とその周辺ではDGPS方式のような補正手段で高い測位精度が得られる。一方、中国よりも高額の出資をするインドは、ほかの参加欧州諸国と同じ「地位」を要求するとしているが、これがPRSも含むものかは明らかとされていない。
 PRSは、ガリレオ計画の推進に当たって、米国との調整における障害の一つとなっている。ガリレオ計画の構想が生まれた当初より、米国は強く反対してきた。すでにGPSがあり、民間用信号を無償で開放しているのに、どうして新たに別の測位システムを建設する必要があるのだという理由である。
 これに対し欧州は前述のような理屈で反論した。欧州を翻意させられないと悟った米国は、ガリレオがGPSとできるだけ相互利用性を確保するべきだと主張した。理屈には合っているが、それに当たってはGPSの製造者、サービス提供者、利用者に、ガリレオ使用のための出費をさせてはならないと主張した。利用者はどちらかの、あるいは両方のシステムを使うかの選択権ができるべきだとし、有償利用からガリレオのデータを入手するのに制限を課すようなこともすべきではない、と主張した。
 とくに米国が問題にしたのは、ガリレオの使う周波数帯がGPSの軍用信号周波数帯と重なり、GPSの測位精度が低下するとともに、有事において米国防総省によるGPS信号利用の停止措置の効果が失われてしまうという懸念である。
 このため二〇〇〇年十月から米国と欧州間での交渉が始まり、二〇〇三年四月になってようやくガリレオのPRS信号がGPSの軍用信号と重ならないようにする代わりに、米国はPRS信号だけに対して妨害電波を発することはしないという合意が成立した。
ナブウォーが始まった
 衛星測位システムの重要性が高まるにつれて、その機能を保護し、敵には利用させないようにする「ナブウォー(NAVWAR:ナビゲーション・ウオーフェア=航法システムをめぐる戦いの略)」は米国の宇宙戦略・作戦上きわめて大きな比重を占めている。それがガリレオ計画へのとばっちりとなった。
 実現への障害は取り除かれつつあるが、問題は残っている。たとえば米国は、欧州で販売されるGPS受信機に課税され、その収入がガリレオに流用されるのではと危惧している。
 そうこうしているうちに、ガリレオ・システムの製造と打ち上げを担当するESA(欧州宇宙機関)が確保している周波数帯の使用期限問題が持ち上がった。
 二〇〇六年六月までに、その周波数帯で宇宙から信号を発信しない場合には使用権が消滅するために、二〇〇三年三月二十六日までにガリレオ計画の具体的進展がない場合、ESAは独自に二〇〇五年にこの周波数の電波を発信する航法用衛星を打ち上げるとの意向を示したのである。
 だが、すぐにドイツが正式参加を発表し、二〇〇三年五月二十七日、EUとESAは合同計画の最終的な合意文書に署名し、これでガリレオ計画は何とか動きだせることになった。
 計画では二〇〇四年からロシアのゼニット・ロケットを使って実験衛星が打ち上げられ、二年半にわたる実験が行なわれる。実用型衛星の打ち上げは二〇〇七年末からで、一回に二基ずつ二回、四基の衛星が打ち上げられ、二〇〇八年からはアリアン5ロケットを使って一回に八基を打ち上げて、同年末には三〇基の衛星整備をもって、システムの完成が宣言される予定である。
 しかし、米国もGPSの改良を進めている。九七年からは第二世代のブロックIIR型衛星が打ち上げられ、すでに軍用コードで一メートルの測位精度を実現させている。前出のブロックIIF型に続いて、二〇一〇〜一二年からは第三世代のブロックIII型が打ち上げられる。
 そのブロックIIIではMコードの出力が強化されて対妨害性を高めるとともに、別に高性能の発信アンテナを装備して、半径数百キロの狭い特定地域だけに、スポットビームのかたちで信号を送る機能をもたせる。ここから、米軍が作戦する地域に限っては、米軍とその同盟軍だけが暗号が掛けられた軍専用の信号を使えるが、ほかの信号は測位精度を落とすか発信を停止させられるという状況も考えられる。
 欧州や中国の不安はここにある。安全保障だけではなく、日常生活のあらゆる場所に衛星測位システムが深く、そして基本として浸透している現在、その機能が止まれば社会システムの破綻となりかねない。
 もし、台湾をめぐって中国と米国が軍事的に対立するなら、米国防総省はGPSのこの機能を発動させる可能性がある。そうなれば、日本の社会システムと日常生活は必ず大変な影響を受けることになる。「準天頂衛星」計画はこうした懸念も踏まえてのものだが、国民の認識は必ずしも高いものではない。
 日本が準天頂衛星計画を進めようとするなら、米国の干渉も予想される。これからの日本にとって必要な衛星測位システムとは何かを考え、そこから独自の戦略を確立する必要があろう。
◇江畑謙介(えばた けんすけ)
1949年生まれ。
上智大学大学院修了。
軍事評論家。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








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