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2004/07/01 読売新聞朝刊
自衛隊50年 湾岸戦争契機に変化 1200隊員、今も海外
◆派遣恒久法なく限界も
 五十周年を迎えた自衛隊の役割は、冷戦終結を経て大きく変化した。国土防衛だけでなく、国際協力にも積極的に取り組むようになった。国連平和維持活動(PKO)などへの参加は、国民の自衛隊に対する理解を深め、日本の国際社会での評価を高めた。これに伴い、法律や組織を見直すべきだとの声が高まっている。
(吉山一輝、本文記事1面)
 「自衛隊諸君の献身の精神と友好は高い評価を得ている。慣れない環境で汗をかき、やりがいを持って活動する姿に感激した」
 小泉首相は三十日、帰国報告のため首相官邸を訪れた陸上自衛隊「第四次東ティモール派遣施設群」の川又弘道群長らをねぎらい、隊員と握手を交わした。
 二〇〇二年三月に始まった東ティモールでのPKOは五月に終了した。だが、自衛隊の海外活動は、イラク復興支援特別措置法に基づく支援などが続き、今も約千二百人の自衛官が国際協力任務についている。
 自衛隊の海外派遣は、一九九一年の湾岸戦争で総額百三十億ドルを支出したにもかかわらず、国際社会から貢献を認められなかった反省から出発した。九二年にPKO協力法、改正国際緊急援助隊法が成立。以来、PKO法に基づく業務が九件、国際緊急援助活動が四件に上る。PKO法で対応できない場合、テロ対策特別措置法、イラク特措法などで活動の枠を広げてきた。
 しかし、政府・与党内では、現状の国際協力には限界があるとの指摘が多い。「自衛隊法で、海外派遣が自衛隊の本来任務に含まれていないのはおかしい」という意見が根強い。
 組織上の問題についても、ある陸自幹部は「陸自の後方部隊は規模が小さい。海外に人員を割かれ、国内の部隊にしわ寄せが来る」と語る。
 海外派遣に関する「恒久法」がないという問題もある。防衛庁幹部は「武器使用基準などは特措法ごとに規定しており、混乱を招きかねない」と指摘する。政府は恒久法の法案作成準備を進め、国際協力を自衛隊の本来任務に含める方向で検討しているが、まだ実現のめどは立っていない。
 中曽根元首相は「(自衛隊の活動は)新しい局面、段階に入ってきている。新しい体制を構築する必要がある。憲法九条の問題を含めて考えていかなければならない」と話している。
〈国連平和維持活動=PKO〉
 国連が地域紛争の再発防止などを目的に行う活動。停戦監視などの本体業務と、輸送、医療など後方支援業務がある。自衛隊は二〇〇一年のPKO協力法改正で、当初凍結していた本体業務への参加が可能となった。
 
 
 
 
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