日本財団 図書館


2004/04/28 毎日新聞朝刊
[社説]防衛大綱見直し 慎重かつ厳格な議論を
 
 小泉純一郎首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長、荒木浩・東京電力顧問)の初会合が27日開かれた。懇談会は防衛力整備の指針となる防衛計画の大綱の見直し作業を進め、年内に改定案をまとめる方針だ。
 本来なら懇談会は1年以上前に発足させるべきだった。昨年はイラク戦争とその後の自衛隊のイラク派遣などがあって大綱見直しに取り組めなかったとみられる。
 だが、政府は大綱の見直しを待たずに昨年12月、ミサイル防衛(MD)システムの導入を決定した。大綱を見直さずに防衛政策の大きな変更につながる事業を決定したのは問題だ。
 懇談会の議論を、MD導入を追認するための議論に終わらせてはいけない。それは防衛力の整備というだけでなく、日本の針路を左右する重要な問題なのだ。
 MDを導入すれば、日米の軍事的関係が一段と緊密化するはずだ。米国が日本にとって重要な同盟国であることは否定できないが、憲法の枠内で軍事的な一体化はどこまで許されるのか。最終判断の責任は政府にあるが、懇談会での幅広い議論を期待したい。
 また、MDは「ノドン」など北朝鮮の弾道ミサイルを念頭に配備されるというが、北東アジア全体の軍事バランスに影響を与えないかどうか。より大きな視野からの議論も必要である。
 大綱の見直しは95年に続いて2回目である。前回の見直しでは、必要最小限の基盤的な防衛力の整備を進めつつ、冷戦構造の崩壊を踏まえ、自衛隊の定員削減、装備の縮小に踏み込んだ。さらに、国連平和維持活動(PKO)への参加を自衛隊の新たな任務として位置付けた。
 今回の見直しにあたっては、自衛隊の新たな国際貢献のあり方をどう位置付けるのか注目したい。国際情勢の不安定化が進み、テロへの対処や国際協力の方策も問われている。海上自衛隊はテロ対策特別措置法でインド洋に派遣され、陸上自衛隊はイラク復興特別措置法でイラクでの復興支援に携わっている。自衛隊を恒久的に海外派遣する法整備の議論も一部で始まっている。また、米国の世界戦略にどう関与し、どうやって距離を置くのか。日本の外交戦略にかかわる問題についても突っ込んだ議論を展開してほしい。
 時代の変化に応じた自衛隊の定員、装備の見直しも重要なテーマだ。前回の大綱見直しでも装備の縮小などが行われたが、戦車や哨戒機など冷戦時代の装備は大胆に削減しなければならない。
 平和憲法の順守と軍事大国にならないとの決意は大綱の基本理念である。それを踏まえて時代の変化に対応する防衛力整備をめざし、慎重かつ厳格な議論を展開してほしい。
 政府は懇談会の議論を通じ、防衛問題に関して国民から幅広くコンセンサスを得る努力を怠ってはならない。そのためには懇談会の議論の流れを幅広く公開するよう求めたい。
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION