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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2004/01/17 毎日新聞朝刊
[クローズアップ2004]自衛隊イラク派遣 陸自先遣隊出発(その1)
◇陸自先遣隊、イラクへ出発−−雇用に過度の期待
◇地元報道、誤解生む−−「日本から資金協力、ODA」
 陸上自衛隊先遣隊が16日に出発、本隊の派遣先であるイラク南部サマワで調査活動を行う。陸自派遣の主な目的は給水、医療支援、学校補修だが、サマワでは多くの市民が雇用拡大に期待を寄せており、政府内には過度な期待が集まることに懸念が強まっている。一方、比較的平穏といわれるサマワへの陸自派遣であるが、安全確保はなお不透明であり「非戦闘地域」をめぐる政府の解釈は実態を反映していないとの声は、依然、消えていない。
■失業率70%以上
 サマワ中心部に今月8日オープンしたばかりの公共職業紹介所は、連日100人以上の男性でごった返し、既に約2500人が登録を済ませた。モハマド・ナサル・フセイン所長(60)は「紹介できる職はまだ何もない。日本の人道支援は巨大プロジェクトだということしか知らないが、雇用機会を提供してほしい」と語った。
 取材を進めると20人ほどの男性に囲まれ「自衛隊はいつ来るのか」「何人雇ってくれるのか」と質問攻めにあった。40歳代の男性は「米軍も(サマワに駐留する)オランダ軍も希望が持てない。日本はきっと期待に応えてくれると思う」と話した。
 誤解を生んでいる理由の一つは、日本による15億ドル(約1650億円)の無償資金協力や、雇用機会の創出も視野に入れた政府開発援助(ODA)のニュースが、地元メディアによって盛んに報じられているためだ。
 サマワを中心とするムサンナ県の失業率は推定70%以上。今月3日には中心部で1000人以上の失業者がデモを行い市庁舎に投石し、1人が死亡、5人が負傷する騒ぎも起きている。
■劣悪な給水事情
 一方、給水事情は劣悪だ。中心部から東へ約5キロのユーフラテス川に近い集落では、道路沿いに400リットルほどの水タンクが数百メートルおきに置かれている。住民の話では、市当局が毎週日曜に配水に来るが、4家族で使用するため、2、3日でなくなってしまう。
 1キロほど離れたユーフラテス川に水をくみに行くこともあるが、飲料水としては使えない。家の裏の穴にたまった雨水を使ったところ、子供たちが病気になったという。ムサンナ県全体では、推定50万人以上が浄水場からの給水を受けられないとみられている。
■医療現場は
 「これが病院のトイレに見えますか」。日本企業が建設し、86年に開業したサマワ総合病院(400床)の医師(35)が、怒りに近い表情で訴えた。
 外観こそ日本の病院と似ているが、老朽化した病棟内の衛生状態は劣悪。天井は破れ、排水パイプから漏れた汚水が壁にこびりつき、悪臭は病室内にまで立ち込めていた。レスール・アジズ・マーラ病院長(42)は「日本の支援内容は関係当局との協議で詳しい内容が決まるだろうが、何より施設の改修を最優先してほしい」と語った。
■学校でも
 サマワ中心部にあるアル・イマム・フセイン中学校は、30年以上前に建てられた2階建て校舎の老朽化が進んでいる。窓ガラスが割れてなくなっている教室は、金属製の戸で覆われ、光はわずかしか差し込まない。トイレも詰まったままで、手の施しようがないといった状態だ。
 ムサンナ県教育委員会によると、県内347校のほとんどが校舎の改修が必要だが、オランダ軍やNGO(非政府組織)によって改修が済んだ学校は50校に過ぎない。
【サマワ成沢健一】
◇政府、懸念強める−−「規模は数十人」
 政府内には、サマワでの活動が本格化するにつれ市民から雇用への期待が高まりすぎることへの警戒感が出ている。政府は自衛隊の宿営地などで身の回りの世話をする臨時の職員を雇う予定だ。しかし「せいぜい数十人」(政府関係者)という規模で、現地の雇用不安を解消するものではない。
 もともと政府は「治安の安定のためには失業問題の解決が必要」との考えから日本独自の産業復興を復興支援の柱の一つと位置づけていた。実際、サマワにはセメント工場があり、改修して稼働すれば「1000人単位の常勤労働者の雇用が可能」(同)とされ、有力な支援対象候補だった。
 しかし昨年11月の外交官殺害で、日本人職員が現地で活動する必要のある支援策はすべて暗礁に乗り上げてしまった。
 陸自先遣隊に合わせた外務省職員の現地派遣は「雇用問題について何らかの対応を迫られている」(政府関係者)という切迫感の表れでもある。福田康夫官房長官は16日、「具体化には至っていない」と語ったが、同省職員派遣は無償資金協力を通じどこまで雇用に反映できるか探る狙いがあるとみられる。
【古本陽荘】
◇不透明さ残る安全対策−−武器使用基準などに制約
 防衛庁は陸自の派遣隊員に(1)初めて本格的な部隊行動基準(ROE)を設け、過去の海外派遣と比べ武器使用を運用面で緩和する(2)自爆テロに対処するため無反動砲(対戦車ロケット砲)を携行させるなど携行武器を強化する――などの安全対策をとっている。
 またサマワの砂漠に設ける宿営地は、周囲を有刺鉄線など二重のフェンスや壕(ほり)で囲みセンサーや監視カメラで警戒。3カ所の開閉式ゲートを設けるなど、要さいを築くことによって車両による自爆テロを防ぐ方針だ。
 しかし憲法上の制約から、武器使用基準については正当防衛と緊急避難の場合でしか危害射撃が認められておらず「いざという時の射撃が他国軍と比べワンテンポ遅れる可能性は否めない」(防衛庁関係者)という声もある。
 想定していなかった事態にどう対応できるかなど、安全確保に不透明な要素は残っている。
 一方、イラク特措法は自衛隊の活動を「非戦闘地域」に限定しているほか、隊員の安全確保義務を防衛庁長官に課している。
 しかしイラクで頻発するテロにこの要件が満たされるのか、政府の解釈は実態とかい離している面もあり疑問はぬぐいきれない。
【宮下正己】
 (この記事には図「陸自宿営地のイメージ」があります)
 
 
 
 
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