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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/11/15 毎日新聞朝刊
[クローズアップ2003]自衛隊イラク派遣 日米、ジレンマ深く
◇ほころぶ「派遣」ありき
 自衛隊派遣先となっているイラク南部で爆弾テロが発生した直後の小泉純一郎首相とラムズフェルド米国防長官の初会談は、双方とも自衛隊派遣への深入りは避け、日米同盟の重要性を確認するというセレモニー色が濃かった。小泉首相はイラク情勢が厳しいとの認識を表明して「年内派遣」が微妙な情勢であることをうかがわせ、国防長官も派遣時期について具体的な要請はしなかった。イラク復興でタッグを組んだはずの日米はここにきて足をすくわれ、「安全確保」より「派遣ありき」で突き進んできたシワ寄せを覆い隠すような印象すら与えた。
【及川正也、宮下正己、白戸圭一】
 小泉首相「日米同盟が良ければ良いほど、他国とも良い関係を作れるというのが私の信念。同盟国としてイラク復興に貢献したい」
 ラムズフェルド長官「首相はブッシュ大統領という親友をお持ちだ。私も40年前、日米議員連盟を作り、日米関係は花が咲いた」
 「日米同盟」重視を強調しながら、自衛隊の派遣時期を明言しなかった小泉首相。自衛隊派遣には触れずに日本の貢献策を評価し、「圧力」と受け取られないよう慎重な配慮を見せた国防長官。
 自衛隊派遣問題は、日米同盟のオブラートに巧妙に包まれた。外務省高官は「あえて触れなくても、意思が通じる」と言うが、ナシリヤでの自爆テロがもたらした互いのジレンマの深刻さを浮き彫りにしたともいえる。
 首相は先月、米軍へのテロが相次ぐ最中に来日したブッシュ大統領に自衛隊派遣の意向を伝え、盤石な「日米同盟」を演出した。しかし、その後もイラクの治安は安定せず、安全とされた南部のナシリヤでの自爆テロで状況は一変した。
 政府は当初、長官来日に合わせ、9日の衆院選直後から自衛隊派遣準備を加速させる構えだった。専門調査団は見送り、14日に基本計画を閣議決定して年内派遣への道筋を整える段取りだった。福田康夫官房長官は12日、初めて「年内派遣」を明言し、国防長官来日に向けた環境整備も図ったが「ナシリヤでのテロで、地図上を虫メガネで探しても、安全な地域はなくなった」(外務省関係者)と大幅な誤算が生じた。
 首相は会談で「国連の重要性」を繰り返して強調、米国の突出が治安悪化の遠因になっているとのいら立ちを遠回しに伝えざるを得なかった。
 米国の要請でなく、自主的判断で自衛隊を年内派遣する――。国防長官来日に合わせた政府のシナリオは棚上げされ、逆に「安全確保」のための専門調査団派遣を急きょ決めるという場当たり対応で「失態」を演じた。こうした誤算は「主体的貢献」の衣をまとった「まず派遣ありき」の姿勢を浮き彫りにしている。
◇米政権、神経質に
 ラムズフェルド国防長官は小泉首相との会談で自衛隊派遣に触れず、日本側への「配慮」を見せた。背景には、イラク開戦以来、一貫して米国を支持し続ける同盟国・日本の自衛隊派遣が危うくなれば、派兵をめぐる他国の動向に影響を与えかねないとの懸念がある。
 国防長官が日本に続いて16日に訪問する韓国では、政府の追加派兵方針に世論が反発し、盧武鉉政権は苦境に立たされている。自爆テロの標的になったイタリアでも撤退を求める声が噴出し、米政権は国内だけでなく同盟国の世論にも神経をとがらさなくてはいけない状況だ。
 米政権は「最終的に自衛隊は派遣される」(アーミテージ国務副長官)と確信するが、日本で派遣是非論が高まれば、派遣時期の一層の流動化は避けられない。国防長官が自衛隊派遣に言及しなかったのも、「米国追随」批判がある日本の国内世論を刺激するのを避ける狙いがあった。
 5月の戦闘終結宣言以降も相次ぐ米兵犠牲者はここにきて増加し、批判の矢面に立つブッシュ政権はイラク人への権限移譲加速の方針にかじを切った。「同盟国からもソッポを向かれる米国」との印象だけは避けたい米政権のジレンマを露呈した。
◇防衛庁に不安感
 自衛隊の第一線は苦しい状況だ。初めて「戦時下」の海外に足を踏み入れる陸上自衛隊は、派遣隊員の安全に最大限の配慮をしてきた。イラク国内での派遣先選びも、治安が悪化する中、ようやくサマワを探し当てた経緯がある。それだけに同じ南部のナシリヤの自爆テロにショックを隠しきれず、先崎一(まっさきはじめ)陸上幕僚長は13日、「それなりの覚悟を持って臨む必要がある」と、悲壮感すらにじませた。
 しかも政治的な問題で本格的な派遣準備に着手できない状況が続いており、防衛庁内には年内派遣になった場合の隊員の安全を不安視する声が次第に広がっている。ある防衛庁関係者は「政治的な思惑から派遣のタイミングを失った。このままでは隊員の士気が低下し、安全にも影響を与えかねない」と漏らした。
◇治安回復の遅れ、福田長官認める
 福田康夫官房長官は14日の記者会見で、イラクの治安情勢について「いろいろあるだろうという想定はしていたが、(治安回復が)長引いている感じがする」と述べ、イラク復興特別措置法を国会で審議していた時点で考えていたほど治安が回復していないことを認めた。
◇「日本、計画棚上げ」−−海外メディア、一斉に報道
 日本の自衛隊派遣問題について、海外メディアは「派遣延期」「派遣棚上げ」と決めつけるようなトーンで報じている。
 フランスの報道機関は13日夜から「ナシリヤでのイタリア軍警察に対する自爆テロを受け、日本政府が自衛隊の即時派遣をあきらめた」と相次いで報じた。14日付のフィガロ紙は社説で「イラクでは、流血の無政府状態が生まれている。ゲリラが連合軍のメンバーであるイタリア兵をも攻撃し、日本を怖がらせている」と伝えた。
 英国では14日付のインディペンデント紙が「砕け散った連合」と題した1面トップ記事で「米主導のイラク治安維持の失敗は、日本が部隊派遣を先送りしたために一層拡大した」と報じた。また、BBC放送も13日から「日本、自衛隊派遣を延期」とトップ級で報道、「治安悪化しているため、日本国民は政府の派遣方針に反して不安を感じていた」と伝えた。
 一方、米メディアではニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストが「延期」と報じたのに対し、CNNは「日本政府は自衛隊派遣計画を棚上げにした」と、「中止」に近いニュアンスで伝えた。
 
 
 
 
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