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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/12/07 毎日新聞朝刊
[記者の目]ドイツから見たテロ対策法=藤生竹志(ベルリン支局)
◇恒久化と関連法整備急げ−−平時の議論深化も大事
 テロ対策支援法に基づいて、海上自衛隊の艦艇3隻が先月25日、国内の3基地を出港した。自衛隊発足以来、初の海外派遣は「歴史的なこと」と言えるかもしれない。だが、9月11日の同時多発テロ発生から2カ月半、米英軍のアフガニスタン攻撃が始まってから1カ月以上を経ての、ようやくの具体的な行動開始は、少し遅すぎないだろうか。
 「ドイツを見習え」などというつもりは一切ない。しかし、何かにつけ日本と比較されるドイツのテロに対する対応がどうだったのか、念のために記しておきたい。
 シュレーダー首相(社会民主党)はテロ発生直後、「これは米国だけでなく、すべての文明社会に対する宣戦布告だ」という声明を発表し、「米国との無制限の連帯」を繰り返し強調した。「無制限の連帯」には、最初から軍事的協力の意味も含まれていた。
 独政府は米国の求めに応じ、核・生物・化学兵器に対応できるフックス特殊装甲車部隊や特殊部隊、空輸部隊や艦船警備のための海軍など、合わせて3900人規模の独連邦軍兵士を派遣することを決定。しかし、連立与党の社民党と90年連合・緑の党の中に派兵に反対する造反議員が出て、与党の足並みは乱れた。
 連邦軍の北大西洋条約機構(NATO)域外派兵には連邦議会(下院)の承認が必要なため、最悪の場合は政府が決定した派兵が議会の反対で実行できない恐れもあった。このためシュレーダー首相は、自らの信任案と派兵案をセットにして「派兵実現か下野か」という賭けに出、半数をわずか3票上回る薄氷の勝利で派兵は承認された。
 ドイツはコール前政権時代から「なし崩し的」に海外派兵を進め、99年のNATO軍のユーゴスラビア空爆では、戦闘機14機を参加させ、第二次世界大戦後初めて「戦闘行為」にまで加わった。空爆開始当初は国民の7割以上が賛成した。
 この時の経験がドイツにはあるから、今回のアフガン派兵もすんなりと決まると思っていた。しかし、民間世論調査機関の調査では6割以上が連邦軍派遣に反対しており、ユーゴ空爆時と違ってシュレーダー首相の決断には世論の後押しがなかった。
 ユーゴは欧州であり「欧州の問題は欧州が解決すべきだ」という首相の強い意志に国民も賛同した。だが、アフガンは遠い未知の国であり、後方支援とはいえ地上部隊も派遣するとなれば、兵士が戦闘に巻き込まれて死亡する危惧(きぐ)もあったからだ。
 日本からもアフガンは遠い。だからといって、何もしなくていいわけがない。テロのせいで60カ国数千人もの、罪のない人々が狂信者たちの犠牲になり、日本人も24人が巻き込まれている。これが「すべての文明社会に対する宣戦布告」でなくて何だろうか。
 テロは断じて許すことは出来ない。テロリストやテロ組織はウサマ・ビンラディン氏や「アルカイダ」だけではない。今回の戦争が終結しても、新たなテロの恐怖は消えない。平時から有事に即応できる体制を整えておく必要がある。
 冷戦が終わった後、世界中で内戦や地域紛争が多発したのに、これらの解決のために日本は他国に比べて十分な役割を果たしてきたとは言いがたい。10年前の湾岸戦争時、「日本はカネだけ出して汗をかかない国」というレッテルを張られた反省から、今回自衛隊が戦時任務に出かけたのは評価は出来る。しかし、それで十分か。
 自衛隊派遣は常に「武力行使か否か」という憲法問題になる。ドイツでも憲法論議がないでもないが、日本国憲法と違って独の憲法である基本法は「実務型憲法」といわれ、戦後、48回も改正が重ねられている。連邦軍のNATO域外派兵も根拠になっているのは基本法ではなく、連邦憲法裁判所が94年に下した「議会の承認を条件に認める」という判決だ。それで特に大きな問題は起きていない。
 テロ対策支援法は急ごしらえの時限立法だ。新たなテロが起きる可能性が否定できない以上、テロ関連の法律は恒久法にすべきではないか。また、今後のアフガンの焦点は治安維持のための多国籍部隊の展開に移る。日本はどうするのか。PKO協力法改正も視野に入れ、いつでも新たなテロの脅威に立ち向かえるよう法律を整備し、日ごろから議論を深めておくことが大事ではないだろうか。
 
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