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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/10/07 毎日新聞朝刊
[クローズアップ2001]自衛隊法改正案、警備対象で迷走
 
◇警察・防衛、縄張り争い? 実効性に疑問も−−当初の合意、反発強く
 国内の大規模テロ防止の目的で、平時でも自衛隊が「警護出動」できるようにする自衛隊法改正案が、国会に提出された。当初の与党案にあった首相官邸などが警備対象から消え、在日米軍と自衛隊の基地に限定されるという「迷走」ぶり。一方、防衛庁と警察庁からは法案の実効性に対して疑問の声も上がっている。テロ対策支援法案の陰に隠れがちな、この法案の周辺に焦点を当てた。
■政界
 与党3党が、自衛隊の警備対象の範囲を首相官邸、国会、原子力発電所などまでに広げることで合意したのは先月18日。しかし、現行法で国内警備にあたる警察庁が強く反発。結局、自衛隊施設と在日米軍基地にしぼるということで決着した。自衛隊が「言論の府・国会」を守ることへの抵抗感が自民党内に強まった事情もあるが、政界では「一皮めくれば、警察庁と防衛庁の縄張り争い」(与党幹部)との指摘が出ている。
 防衛庁にとって、平時でも国内重要施設の警備にあたる「領域警備」を自衛隊に付与することは、99年の不審船事件以来の課題。同時多発テロ以降、まず中谷元・防衛庁長官が在日米軍警備の必要性を表明。防衛族である自民党の山崎拓幹事長が与党合意にこぎつけた。
 しかし、その後、中曽根康弘元首相が「細心の注意を」と指摘。与党内からも「日本の警察はそれほど軟弱ではない」(野中広務元幹事長)などの反発が出て、流れが変わった。防衛庁幹部は「後藤田正晴元副総理・法相や亀井静香前政調会長ら警察庁OBの動きも影響した」と言う。
 一方、民主党は、逆に「軍を守って市民を守れないのは本末転倒。国内警備はきちんとした方がいい」との理由から国会や原子力施設などに対象を広げる修正を検討しており、政界はまだら模様だ。ただ与党3党側は警備対象について「既に決着した問題」と、現状では修正に応じる気配はない。
■防衛庁・自衛隊
 「かなり喜んでもらっている」。テロの数日後、海上幕僚監部の幹部は満足そうに言った。海上自衛隊は、米軍と共同使用の横須賀(神奈川県)、佐世保(長崎県)の基地で、警備を強化した。それを米海軍から感謝されたのだった。
 防衛庁内には「米軍が困ったら、助けるのが同盟国の責務」との思いが強い。改正案に盛り込まれた米軍基地警備は、同庁にとって“思いやり予算”ならぬ“思いやり警備”の性質を持っている。軍事報復で在日米軍が出動すると、基地警備が手薄になる可能性がある。幹部は「そうなれば我々が役に立つ」と意気ごむ。
 しかし、実効性に疑問を持つ声がある。「テロは奇襲で、未然に防ぐしかない。それは警察の役目だろう」(幹部自衛官)という冷めた見方だ。
 法改正論議の背景には現行自衛隊法の「治安出動命令」のハードルの高さがあった。首相は一般の警察力で治安を維持できないと判断した場合、自衛隊に治安出動を命じることができる。だが、命じた日から20日以内に首相が国会に付議して承認を求めなければならないなどの規定があり、一度も発動されなかった。
 しかし、改正案でも、国家公安委員会との協議が前提となるなど防衛庁にとって「足かせ」がはめられた。防衛庁幹部からは「わざわざ改正する必要があるのか。いざとなれば治安出動をかければいいじゃないか」という声も上がっている。
■警察庁
 4日の警察庁長官定例記者会見。自衛隊の出動可能範囲を米軍施設などに限定した改正案について、「問題はクリアできたか」と問われた田中節夫長官は「私どもはそう考えています」と満足げに答えた。
 防衛庁と交渉にあたっていた警察庁幹部は「権限争いではない。警察で手におえなければ、いつでも自衛隊に支援を要請する」と話す。一方で、警察庁は全国の機動隊に対する自動小銃千数百丁の配備や、核や生物化学兵器テロに対応する「NBCテロ捜査隊」の追加配置を決めるなど、自らの警備力を強化する。自衛隊に頼らない体制作りを着々と図っているのだ。
 当初の与党案に、警察庁の警戒感は大きかった。1936年の2・26事件を想起させたと語る幹部さえいた。
 与党案はさらに、警察官職務執行法に規定された職務質問や施設内立ち入り、武器の使用――などの権限を、自衛官に与えていた。「警察官は、職務質問などを訓練、実践してきた歴史がある。未経験の自衛官に任せるのは不安だ」との声が上がっていた。その後、職務質問や施設立ち入りについて「警察官がその場にいない場合に限る」と制限。武器使用も「大規模破壊などの明白な危険」と「他に手段がないと認める相当の理由」がある場合に限定された。
 閣議決定した政府案について「国防族」を自任する村井仁国家公安委員長も「米軍施設は自衛隊が警護し、その他は警察が責任を持つという、大変適切なセッティングになった」と評価した。
 一方で、警察幹部の中には、法解釈が定まっていない自衛隊の運用に対して、なお、不安を漏らす人もいる。
■専門家は
◇「テロ対応、機動隊で」
 警察庁、防衛庁勤務を経て、初代内閣安全保障室長を務めた危機管理の専門家、佐々淳行さん=写真=は次のように話す。
 基本的に国内の重要施設の警護は、警察の仕事だ。第1次、第2次安保など戦後50年、警察と自衛隊の中間的存在である機動隊が出動してきた。一度も自衛隊の治安出動はない。
 今回、自衛隊活用の話が出てきたのは、「米軍住宅を守ってほしい」という米国の要請に対し、警察庁が(1)人手不足(2)装備がぜい弱(3)不穏情報がない――などを理由に、警備に消極姿勢を見せたからだ。自衛隊が警護に乗り出す話が出ると、急に「おれの仕事だ」と騒ぎ出した。
 しかし、自衛隊は外国軍隊と戦う集団で、テロ組織と市民との間に入るのは、訓練された機動隊の方がいい。自衛隊法の改正は、緊急避難的、時限的な措置にして、その一方で警察力を強化すべきだ。
 
 
 
 
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