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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/09/20 毎日新聞朝刊
[クローズアップ2001]米国同時多発テロ 小泉首相、自衛隊派遣表明
◇貢献具体化へ焦り
◇与党内調整、手間取り−−急な発表、「存在感」求め決断
 小泉純一郎首相は19日夜、慌ただしく与党3党首会談とテロ対策閣僚会議を開催し、同時多発テロへの対処方針を発表した。その核となるのは、「自衛隊派遣に向け所要の措置を早急に講じる」という1項目だ。突然の記者会見は、国際社会に向けて日本が「顔の見える」反テロ活動に乗り出す決意をアピールするとともに、自衛隊派遣の法制度をめぐる与党内の混乱を早期に決着させる狙いが込められている。
【古賀攻】
 ブッシュ米大統領の発言に連日、世界中が注目し、シラク仏大統領に続いて18日にはインドネシアのメガワティ大統領、イワノフ露外相、フィッシャー独外相らがワシントン入りした。今後も英国、サウジアラビア、中国などの首脳や外相が訪米する予定になっており、国際政治で日本の存在感は薄れつつある。急な発表になった理由を記者会見で問われ、「今の時点で日本としてやり得る姿をはっきり見せた方がいい」と語った小泉首相には、一刻も早く貢献策を公表したいという焦燥感すら漂っていた。
 首相官邸や外務省を今、「湾岸シンドローム」と言うべき感覚が支配しつつある。巨額の資金提供を行いながら、人的貢献ができなかったため「顔が見えない」と批判された91年の湾岸戦争と同じことを繰り返したら、今度こそ国際社会から見放されるという恐怖感だ。首相周辺は19日夜、「あんなみじめな情けない経験はもうしたくない」とまで語った。
 小泉首相の焦りをより募らせていたのは、政府・与党内の足並みの乱れだった。焦点となる自衛隊の対米後方支援を可能にするため、首相は16日に自民党の山崎拓幹事長に新法の制定を検討するよう指示した。ところが、山崎氏は新法だと国会審議というリスクを負うことから、日米防衛協力指針(ガイドライン)に基づく周辺事態法の拡大解釈で対応する考えを強くにじませてきた。他方で公明党は時限立法にこだわった。
 今後予想される米国の報復攻撃は、テロ被害を受けた米国が「自衛権の発動」として行うものだ。周辺事態法の拡大解釈で自衛隊が米軍を支援した場合、憲法が禁じる集団的自衛権の行使に限りなく近づくことになる。このため今回の後方支援にあたって日米安保の枠組みは採用できないというのが政府の結論だった。
 首相が発表した基本方針では「テロリズムとの戦いをわが国自らの安全確保の問題と認識して主体的に取り組む」と位置付けた。これは自衛隊派遣の根拠を日米安保以外に求めたためだった。
 自衛隊派遣への「所要の措置」を打ち出した項目では、今回のテロを「国際の平和及び安全に対する脅威」と認定した国連安保理決議があえて明示された。新法を発動する要件がこの決議という理論構成で、公明党の求めた武力行使容認決議は必要ではなくなっている。
◇武器輸送、明言せず 協力問題で論議も−−小泉首相
 小泉首相は会見で、自衛隊の後方地域支援に武器・弾薬の輸送を含むかどうかについて明確にしなかった。ただ、今回の支援のモデルとなる周辺事態法では、公海上で後方地域の米艦船に対する武器・弾薬の輸送は法解釈上可能であるというのが政府の見解で、これに沿って法整備が進むとみられる。一方、同法は戦闘地域の米軍への武器・弾薬の補給は禁じており、この点は準拠する。
 政府が公海上の武器・弾薬の輸送協力が可能とするのは、「戦闘地域と一線を画することになり、武力行使とは一体化しない」と判断しているからだ。ただ、この点について集団的自衛権の行使との関連から疑問視する見方があり、武器・弾薬の輸送協力問題は論議を呼ぶとみられる。
◇「特例法」の課題−−武力行使決議盛らぬ方向/「後方」の範囲あいまい/作戦終了時期、見えず
 首相の「当面の措置」の発表により、米軍の支援活動を行う新規の特例法制定作業が急ピッチで行われる。論点となりそうな3項目を整理した。
 (1)支援根拠
 自衛隊が後方支援を行う根拠として、公明党などが新法で明示するよう求めていたのが、国連安全保障理事会による武力行使容認決議だ。湾岸戦争での多国籍軍のように「国連中心」型の作戦であることを明確にしたい思いが背景にある。
 今回の同時テロで、安保理は9月12日、「国際平和への脅威」と位置付けた非難決議をした。しかし、「米軍は単独行動が基本」との見通しから、武力行使容認決議には至らないとの見方もある。「武力行使決議まで要件にすると手足を縛られる」(外務省幹部)ことから盛り込まない方向で調整が進められている。
 (2)活動場所
 自衛隊は憲法の制約から、戦闘地域での活動はできない。周辺事態法では戦闘地域と一線を画した「後方地域」という概念を作り、そこで自衛隊が行う米軍への物資補給などを「後方地域支援」と呼んでいる。
 周辺事態法は、日本の領域と戦闘のない公海に後方支援地域を限っている。しかし、報復作戦ではアフガニスタンが攻撃対象と想定され、後方支援はパキスタンなどが舞台になる可能性が強い。
 このため、新法では相手国の了解を得れば他国領域での活動を可能にすることも検討されている。ただし、陸続きで後方支援を行う場合は、反撃を受けて「戦闘地域」と一体になる可能性もある。従来の憲法解釈との整合性が問われる場面がありそうだ。
 (3)有効期限
 政府は新法を作戦が終結すれば法律の効力がなくなる事実上の時限立法にする考えだ。将来も通用する法律では定義や憲法解釈の検討に時間を要するからだ。
 有効期限については、1年や2年と明示し、延長規定を盛り込む考え方と、作戦全体を包括する法律として期限を書き込まない考え方がある。米国は「テロ組織を根絶やしにする」と宣言しており、作戦の終了が明確にならない場合も想定されるため、公明党は時限立法を求めている。
 
 
 
 
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