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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/05/20 毎日新聞朝刊
[社説]輸送機、巡視船 派遣の根拠があいまいだ−−インドネシア
 
 政府は、インドネシア在留の日本人退避のためとして、航空自衛隊のC130輸送機6機と海上保安庁の巡視船2隻の派遣に踏み切った。
 輸送機はシンガポールに待機したうえで、必要があればインドネシアに飛び、シンガポールとの間をピストン輸送する計画だという。
 巡視船の方はジャカルタ近くの公海上に停泊させておき、これも必要が出てくれば搭載ヘリコプターを使って在留邦人の出国を支援する予定だと説明されている。
 国際化が進み在留邦人は多くなる一方だ。海外にでかける観光客も増えている。それだけに、ある国で戦争や騒乱が起き、空港が閉鎖されて国外脱出の方法がなくなった場合などに、そこに滞在中の日本人向けに救援機を派遣することは政府の義務と言っていい。
 そのために政府は4年前、自衛隊法100条の8を改正し、政府専用機と自衛隊輸送機を派遣できるように規定した。
 ただし、その場合でも派遣先の安全が確保されていること、派遣に当たって政府は退避・救出計画を事前に閣議で決定する、などの条件がついている。武力行使につながるようなトラブルに巻き込まれることを回避するとともに、シビリアンコントロール(文民統制)を堅持するよう社民党などが要求したためだ。
 しかし、今回の輸送機と巡視船の派遣を詳細に見ると、手続き面で大いに問題ありと言わざるを得ない。 その第一は、輸送機のシンガポール派遣を、法的根拠も不明確な「準備行為」としたことだ。
 同じようなケースは昨年7月にもあった。カンボジア内乱の際、輸送機3機を隣国のタイに派遣したが、この時も準備行為と説明された。しかし、自衛隊法のどこを見ても準備行為という明文規定はない。
 この当時、100条の8の枠が外れれば、準備行為という名目で世界中どこへでも自衛隊機が行けることにならないか、との懸念が国会でも指摘されたが、それが繰り返されたことになる。
 第二は、事前の閣議決定が今回も省かれたことだ。政府は「時間がなかった」「実際にインドネシアに派遣する段階で閣議決定する」と説明しているが、それで十分なのかどうか。依然としてあいまいさが残る。
 第三は、巡視船派遣の持つ危うさだ。政府は海上保安庁法5条17項の「関係省庁との協力」の一環と説明しているが、海上保安庁の任務に邦人救出に関する規定はまったくない。にもかかわらず、拙速に邦人救出に参加させていいものかどうか。
 今回のインドネシアの政情不安定に際して、欧米諸国は素早く対応し、臨時便を派遣、ジャカルタ市内から空港までのバスを用意した。日本政府も臨時便の派遣などを行ったが、欧米諸国と比べた場合、対応がワンテンポずつ遅れた面は否めない。
 今回の自衛隊輸送機の派遣に対して、インドネシア外務省は不快感を表明している。現地大使館も含め政府が万全の情報収集を進め、在留邦人にもっと早く民間機での出国を促しておけば、こうした“摩擦”は防げたのではないか。
 時間不足を理由に、法律を拡大解釈していく手法は許されるものではない。危機管理は必要だが、それが泥縄式であっては困る。
 
 
 
 
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