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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/09/23 産経新聞朝刊
【第二部 学力低下は誰のせい】いま学校は(8)「日本的平等観」の悲哀
 
◆「階層」無視が生んだ格差
 「新しい学力観」が導入される以前の日本の小学校の教育現場をアメリカの研究者はどうみていたか。
 「実は『子供たちの自主性や主体性を尊重した授業を行っている』と評価していたんですよ」。東大大学院教育学研究科の苅谷剛彦教授は、こう言って苦笑した。
 新学力観とは、子供たちが自ら学ぶ自主性や主体性を重視する考え方で、旧文部省が平成元年度以降に普及を目指してきた。従来の教育が「授業は詰め込みで、知識偏重だった」ことへの反省から導入されたはずだったのだが・・・。
 「例えば」と、苅谷教授。黒板を使って児童に問題を解かせる。間違っていたら、教師は「なんで間違ったのかな。みんなで考えてみよう」と問いかけ、子供たち一人ひとりに考えさせる。
 「昔から普通にみられた光景で、子供に自ら考えさせるバランスのとれた方法だった。それを『詰め込み』と断罪されると、あとは遊びに近い体験・活動型の授業にならざるを得ない。現場は混乱するはずです」
 苅谷教授は、東大の研究者らが昨年立ち上げた「学力問題プロジェクト」の中心メンバーの一人で、積極的に発言してきた。特に文部行政について「現場や子供たちの実態を検証せずに進められている」と批判的だ。
 
 そして、「旧文部省をはじめ、教育をめぐる議論が社会的階層と教育の関係を無視してきたつけは大きい」と話す。
 父親や母親の学歴、職業、年収と、子供の学力・進学先の相関関係。親の「社会的階層」による学習時間や学習意欲の違い・・・。苅谷教授の著書『階層化日本と教育の危機』には、親の社会的階層によって子供の学力や学歴に差があるというデータが山のように紹介されている。しかし、これまでの教育現場では「タブー」とされ、公の議論の対象にならなかったものばかりだ。
 なぜ「タブー」とされたのか。苅谷教授は「日本独特の平等観、差別観が背景にある」と指摘する。海外では、人種や性差、出身階層といった社会的カテゴリーによって、不当に異なる処遇を受けることが〈差別〉とされる。
 これに対して、日本では能力や学力で子供たちを区別することが〈差別〉につながるとされ、「勉強のできない子」が劣等感を感じるかどうかという心理・心情が〈差別〉の根拠となった。
 能力(習熟度)別学級編成や高校間格差など成績による序列は差別教育で、いじめや学校の荒れなどの教育問題を生む根源とされる。子供たちを画一的に扱って、実態としてある学力差を見えにくくすることだけが解決策となる。その結果、まっとうな学力の評価さえ避ける雰囲気になる。
 
 苅谷教授らは平成九年に高校生の学習時間や意欲について調査を行い、昭和五十四年の同様の調査と比較した。
 その結果、全体として学習時間は減少して意欲も減退したが、特に、母親の学歴による「差」が拡大していた。学習時間が以前から少なかった中学校や高校卒業の母親を持つ生徒の落ち込み率が大きく、四年制大学の場合はさほど落ち込んでいなかった。「勉強嫌い」にも階層の影響があることが確認されたわけだ。
 ところが、中学生に限った調査では、昭和の終盤(一九八〇年代)までは成績の階層間格差は縮小の傾向にあった。
 苅谷教授は、新たな「階層間格差」の拡大について「(平成に入って導入された)新学力観やゆとり教育が原因」と指摘したうえで、こう警告する。「学校で教える勉強量を減らしたとき、どの階層の子が有利になり、不利になるのか。それを議論せず、従来のように子供たちを画一的に扱い、安易にゆとり教育をおし進めるだけでは、階層間格差はさらに拡大するでしょう」(教育問題取材班)


 
 
 
 
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