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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/09/19 産経新聞朝刊
【第二部 学力低下は誰のせい】いま学校は(5)オール◎の通信簿↓
 
◆親は不満「役に立たない」
 大阪府教委から懲戒処分を受け、府人事委員会に不服を申し立てている高槻市立小学校の女性教諭(五三)の口頭審理が今年四月、開かれた。懲戒の理由は、国旗掲揚に反対して卒業式を混乱させたうえ、学習指導要録への記入を拒否したことだ。口頭審理のさい、女性教諭から耳慣れない言葉が飛び出した。
 「七三年(昭和四十八年)の指導要録の改訂で評価が議論され、『履修方式』が導入された。総合所見は差別的内容になるので評価をなくし、『履修方式』になった」
 「履修方式」。最近まで、大阪の「複数の地域の学校現場」(府教委関係者)で導入されていた評価方法である。「『履修する』=『授業を受ける』。これだけで評価は〇。つまり実質的に評価をしないこと」と学校関係者らは説明する。
 大阪・豊中市では、高学年でも通知表が二段階評価(AかB、◎か〇)の市立小学校が多く、保護者らから「子供の学力が分かりにくい」という声が上がっている。
 「二段階」という形式だけでなく、ほとんどの項目に「A」や「◎」が付けられていることが大きな原因だが、これも履修方式だという。
 「全教科・項目オール◎の通知表がざらで、『見ても役に立たない』ケースが多い」と、豊中に住むある主婦は不満を漏らす。「先生から明確な説明がなく、心配になって塾に通わせる親も多い。一方で関心が薄く、子供の実際の学力が低くても気づかないままの親もいて、中学生になってあわてたり『手遅れになった』と嘆いたりしている。だから親同士、『小学校の通知表は信じてはだめ』と話しています」
 
 高槻市では平成四年、指導要録の履修方式が廃止されて三段階評価となったが、大阪府教委から懲戒処分を受けた女性教諭は「子供のランク付け・差別・選別につながる」として一律的に「〇」をつけたり、一部の項目に記入しなかった。
 指導要録の問題点として、大阪府内(大阪市をのぞく)の全公立学校の教員が加入する「大阪府同和教育研究協議会」(大同教)は、機関紙「大同教通信・1972年10月24日号」に「差別を生む指導要録」と題して、こう記載している。
 《「家庭は貧しく、性格は暗く陰気で欠席がちである」など担任教師の主観的な評価が記入されており、(中略)人権問題である》
 さらに「1973年2月13日号」では、要録を「『形骸(けいがい)化』するための具体案」として、「健康の記録や出欠の記録を削除する」「五段階相対評価をやめ、二段階(到達基準に達した、達しない)にする」などと提案した。
 しかし、履修方式の採用までは呼びかけていないという。
 大同教事務局は「所見欄などに差別的な記述があり、それが長年保存されるため、形骸化運動を行った時期があった。詳細は不明だが、教科評定もそれにあわせて議論されたと思う。現在はそんな取り組みはしていない」としている。
 履修方式は、いつの時点からか「教師が頭を悩まさず楽をできるだけ」のゆがんだ形になったという現場の声は多い。
 
 豊中市では、履修方式の通知表を導入するさいに、一人ひとりの学習の到達度や理解度をみる「絶対評価」(到達度評価)という概念が使われた。一般的に使われている相対評価が「A・B・C」や「3・2・1」などの各段階に一定の人数で振り分けるのに対し、「A」や「3」を何人付けても問題ない。それだけに形骸化しやすい。
 ところが、旧文部省は昨年、その絶対評価を平成十四年度から全国の小、中学校で採用することを決めた。
 豊中市のある市立小校長は「絶対評価も到達基準を明確にし、子供や保護者にきちんと説明すれば分かりやすいものになる。ただ、成績順に振り分ける相対評価と比べて、一層、教師の力量が必要とされる。すべての教師に、それだけの力量が期待できるのだろうか」と心配する。(教育問題取材班)


 
 
 
 
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