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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/09/11 産経新聞朝刊
【第二部 学力低下は誰のせい】いま学校は(1)「読み・書き・計算」の徹底
 
◆「基礎は自主的には育たない」
 「勉強なら塾でもできる。学校は仲間づくりの場なんですよ」
 ベテラン女性教諭の説教じみた言葉に、兵庫県朝来町立山口小学校の陰山英男教諭(四三)はがく然とした。『勉強を教えるのが、教師の本分ではないのか』
 昨年一月、山口県内で開かれた教職員組合の全国研修会でのことだ。「読み・書き・計算」の基礎学力を重視した陰山教諭の授業実践の発表が、「学力づくり」をテーマにした部会で、約三十人の出席者から集中砲火を浴びた。
 陰山教諭は、自ら考え出した学習法を十年以上実践し、着実に成果を上げている。
 一期生は、一年生段階で知能指数一〇〇以下の児童が九人いたが、卒業時には五人に減った。逆に一二〇以上は五人から九人に増えた。卒業生の中から、難関国公立大学の合格者が次々と出た。
 朝来町は、日本三大ネギの一つ「岩津ネギ」の産地として知られる農村地帯である。学習塾も大きな書店もない町で、驚くべきことだった。
 自信を持って実践報告に臨んだ陰山教諭だったが、予想もしない展開となった。
 「詰めこみ学習ではないか」「勉強ばかりでは子供がかわいそう」「競争心をあおるだけ」
 激しい批判が続き、反論もできなかった。
 
 陰山学級の教室を訪れると、子供の集中力に圧倒される。
 「51÷8」「71÷9」・・・。プリントにぎっしり並べられた百題の割り算問題をすらすらと解いていく。鉛筆を走らせる手は止まることがない。二分もすれば、ほとんどの児童が手を挙げ「終了」を告げた。
 「大人でも通常は五分程度かかりますよ」と陰山教諭。
 「読み・書き・計算」の徹底した繰り返しが、陰山教諭の学習法の大原則だ。児童たちが取り組んでいる百題の計算問題もその一例。
 「読み」では、福沢諭吉の「学問ノススメ」や憲法の前文などを全員で暗唱する。「書き」では、その学年で覚えるべき漢字を二学期までにすべて暗記する。三学期にはプリントで何度も復習する。
 それが、全国の教育関係者の注目を集めた。
 今年の夏休みだけでも、三十を超える団体の視察があった。視察が増えすぎたため、普段は授業中の教室には入ってもらわず、ビデオで授業方法を説明することにしている。
 「当たり前の学力を子供たちにつけさせただけなのに、ここまで騒がれるとは・・・。どれだけ基礎学力が軽視されてきたかの表れでしょう。いまの教育現場はどうなっているんでしょうか」。陰山教諭は苦笑する。
 
 《学力の基礎を自主的な学習で育てるのは無理》《いまの子どもの学習時間は、あまり多くありません》
 インターネット上に開設された陰山教諭のホームページに、教諭の持論が掲載されている。
 そこでは、『子供が自分で考え、学ぶ力を育てることが大切』『いまの子供は勉強に忙しい』といった「教員の間で主流的な考え」(陰山教諭)に対抗する強い主張が展開されている。
 内容は手厳しい。
 《子どもに好き勝手にさせれば、漫画やテレビゲームなど安直な方向に流れるだけ。何を学ぶべきか教えるのは、やはり教師しかいない。それを『詰めこみ教育』などと表現するから、話がおかしくなる。低学力は突き詰めれば教師の責任》
 陰山教諭は、来年度実施の新学習指導要領で、学習量が約三割削減されることを見越し、削減分を補うための独自の教材づくりも進めている。
 「『たとえ勉強ができなくても、いい子に育てればいい』という意見もあるが、私は違う。教師は、学習成果という結果で責任を問われるべきです」
 
 七・五・三。小、中、高校で、授業を理解できる児童・生徒の割合である。分数の計算ができない大学生など、もう珍しくもない。そんな状況のなかで来年度から、従来の学習内容を義務教育で三割削減する「新学習指導要領」が実施されると、どうなるだろうか。危機を訴える声は日増しに強くなっている。学校を侵食した「学力低下」の流れ。その源を探る。(教育問題取材班)


 
 
 
 
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