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2001/02/27 産経新聞朝刊
【大分の教育】(上)「平和カレンダー」 一面的記述や日教組の“PR”
 
 大分県北部に住む会社員は、自宅の居間のテーブルの上にほうり出されてあった、小学四年生の息子の冬休み用の教材を目にして衝撃を受けた。教材には、「あくまは長ぐつをはいてきた」という物語が掲載されていた。
 《そこへどやどやと、長ぐつをはいたあくまが、はいってきました。あくまらは、どろぐつのまま、うちじゅうを歩きまわって、そしてかあさんも、おじいさんも、刀のさきでつきあげられて、ひろばへ、つれだされたのでした》
 悪魔にたとえられた旧日本軍の将兵が、中国の村民を広場に集め、老人から子供まで、皆殺しにするというストーリー。息子は教材の片隅に、「日本人がこんなに悪いことをするとは思わなかった」と、感想を記していた。
 大分県教職員組合は昭和二十三年以降、長期休暇中の家庭学習の手引書として、夏休みには「夏の友」(小学生用)と「夏の学習」(中学生用)を、冬休みには「冬の友」と「冬の学習」を、各学年ごとに毎年編集している。
 この教材には、国語や算数などの演習問題と並んで「平和」の項目がある。大分県教組によれば、「戦争の悲惨さについて、夏には米軍による原爆投下など被害面を、冬には旧日本軍の行為など加害面を、幅広い視点から取り上げている」という。
 大分県教組はほかにも、上下二つ折りの「平和カレンダー」を毎年編集し、県内の多くの小・中学校の教室に掲げている。これについても、保護者からは「学習の場にふさわしくない」との批判があがっている。戦争や原発について、一面的な記述が多いというのがその理由だ。
 今年度の十二月のページには、中国にある朽ちかけた工場跡の写真を掲載。七三一部隊に関する説明文とともに、「なぜ日本人は、たくさんの人々を殺したのでしょうか」と問いかけている。
 日付の余白には、その日に起こった歴史的出来事の記述が、次のように書かれている。
 四月一日「国家総動員法公布」▽五月三日「日本戦犯裁判始まる」▽九月一日「原船むつ放射能もれ事故」▽十二月十三日「日本軍南京占領、以後一週間の大虐殺」
 「日教組史」の部分の記述も詳しい。
 六月八日「日本教職員組合結成」▽九月十五日「勤評反対闘争全国で取り組まれる」▽十一月十日「日光で第一回教研集会開催」▽一月二十四日「教え子を再び戦場に送るなのスローガン決定」…。
 小学一年生の娘をもつ保護者は「一面的なイデオロギーと組合活動のPRが入り交じったようなカレンダー。授業参観ではじめて目にして、びっくりした。娘が毎日、学校でこのカレンダーを見ながら過ごすことを考えると、ぞっとする。職員室ならまだしも、教室には掲げてほしくない」と話している。
 
 大分県教組が編集し、大分県教委の指導主事らが監修した冬休み用の教材に、信ぴょう性について議論の分かれる残虐写真などが盛り込まれていることが、明らかになった。大分の平和教育とは何か、保護者らの声とともに検証する。(教育問題取材班)


 
 
 
 
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