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2000/11/17 産経新聞朝刊
【豊中の教育】(4)校長権限はく奪 ステージに上げぬ卒業式
 
 大阪府豊中市の多くの市立学校には、「常識はずれ」(元校長)の慣習が数年前まであった。
 卒・入学式や各学期の始・終業式には、午前中で勤務を終え、午後からは“自宅研修”という名目で教員が学校を離れる。“自宅研修”という制度はなく、研修にも本来は校長の承認が必要だが、その手続きもとられない。通常の勤務日でも、“自宅研修”というだけで早帰りが許されていた時代もあった。
 残業があれば“回復措置”として後日、早帰りを要求する。回復措置が公式に認められているのは、修学旅行や体育祭などの学校行事が休日
にあったときなどに限られているが、無断“自宅研修”とあわせて、まかり通ってきた。
 豊中市教職員組合(豊中教組)による激しい主任制反対闘争の影響で、それぞれの学校現場から校長権限がはく奪されていったことが、大きな要因だという。ある元校長は「中間管理職ともいえる主任制は、職場に差別と分断を持ち込むというのが組合の主張。『民主的な学校運営』を実現するとして、学校構造の単層化を目指した組合の力に抗しきれず、校長の力がなくなっていった」と話す。
 「学校構造の単層化」とは、校長ら管理職も教員も子供たちも「平等」という論理だ。
 今年三月。全四十一小学校のうち十四校、十八中学校のうち十一校で、ステージを使わず、管理職、教員、児童・生徒、保護者ら参加者全員がフロアに並んで式次第を進める「対面式」とも「フロア形式」とも呼ばれる形の卒業式が行われた。
 「フロア形式は『子供が主役(主人公)』という名目のもとで行われているが、その陰に、校長権限を認めず、校長を『ステージに上げたくない』『高いところに立たせたくない』という組合員らの主張がある。卒業式では国旗・国歌だけでなく、こうした実施形式をめぐっても校内で議論される」と、ある教員。
 「卒業証書授与式」という名称をめぐっても、「『目上の者』(校長)が『下の者』(子供たち)に与えているという意味だ」として、「授与」という言葉の削除を要求する教員らもいる。
 また、昨年度は四小学校、中学校は全十八校の通知表に校長印欄がなかった(本年度は小学校二校)が、これも「校長の印鑑は不要」という教員らの主張によるという。
 教育課題が山積し、校長のリーダーシップによる学校改革が求められる時代。豊中の学校現場は変わっていけるのだろうか。


 
 
 
 
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