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2000/11/15 産経新聞朝刊
【豊中の教育】(2)行き過ぎた“平等” 「順位づけしない」徒競走
 
 「オリンピックの金・銀・銅メダルは差別の象徴ですか」
 大阪・豊中市の九月議会文教常任委員会でこんな質問が飛び出した。質問者は、公明の佐野満男市議。
 「これぐらい言わないと豊中の行き過ぎた“平等教育”には待ったをかけられないと思った」
 佐野市議が問題としたのは、徒競走にまったく順位をつけない小学校の運動会だ。豊中では、ゴールインの順番を書いた「等旗」が、四十一の市立小学校すべてで使われていない。
 佐野市議は、等旗が使われる徒競走やリレーで盛り上がる中学校の運動会と対比しながら、等旗の復活を各校に働きかけるよう市教委に迫った。
 市教委によると、小学校運動会での等旗は、昭和五十年代前半に消滅した。「友人と競うことを避ける」「順位づけをしない」などが理由だったという。
 まったく同じ理由で、豊中の二十八の市立小学校では、高学年でも二段階評価「よくできました=◎やA」と、「頑張りましょう=〇やB」の通知表が使われている。そのうえ、ほとんどは「◎」だ。
 佐野市議は、市などが依頼する啓発ポスターへの応募状況も取り上げ、「『表彰が差別感を植え付ける』などの理由で受け付けない学校があるのでは」と指摘し、「教育を均等に受ける権利を奪っている」とまで訴えた。
 「差別」というと大げさなイメージもあるが、こんな現場の実態を証言する教員もいる。
 「『競い合いや順位づけはダメ』という方針に異を唱えようものなら、『差別だ』とつるし上げのように批判を浴びてしまう。反論を許さないような雰囲気がある」
 二年前、ある小学校のPTAでは、保護者が「運動会が活気に欠ける」「一位になっても評価されないのはおかしい」と等旗の使用を提案したが、学校側に無視され、以後、年度が替わるまで険悪な関係だったという。
 十月十六日に開かれた校長会議では、文教委での等旗や通知表の議論が紹介され、市教委幹部から「一つの考えだが」と前置きして、こんな発言もあった。
 「できることを認めてくれるだけでなく、できていないことを見逃さず指摘する人を子供たちは求めているのでは。厳しいものでも教師が見捨てずに自分を高めてくれると信じれば、子供たちは受け入れてくれると思う」


 
 
 
 
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