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1999/04/01 産経新聞朝刊
【主張】教員の業績評価 午後四時帰宅の先生さらば
 
 東京都教育長の私的諮問機関「教員の人事考課に関する研究会」は、校長や教頭が行った教員の勤務評定を給与や人事に反映させる制度の導入を求めた。競争がなく、ぬるま湯的な環境に安住していた先生社会を活性化させるものとして期待したい。
 同研究会の報告書は(1)先生の指導力や意欲、態度、責任感など多角的な観点から五段階で評価する(2)先生自身も目標を持ち、達成度を自己評価する(3)児童・生徒や保護者の意見も参考にする−など具体的な評価方法を提示した。そのうえで、評価結果を本人に示し、管理職選考や人事異動、定期昇給、特別昇給などに活用することが望ましい−としている。
 教育熱心な先生が相応の待遇を受け、学校現場で十分な指導力を発揮することは、児童・生徒や保護者が待ち望んでいたことである。教職員組合の反対があるかもしれないが、都教委はこの報告書をもとに、公正で客観的な評価基準を作成し、教員の昇進人事や昇給に適用してほしい。
 東京都はこれまでも、先生の勤務状態について三段階評価を行ってはきたが、その結果は人事や給与に反映されなかった。しかも、勤務・休憩時間に関する「東京都方式」といわれる労使間の了解事項があり、午後四時の帰宅が許されている。深夜まで生徒指導や補習授業に取り組む先生と、定時前に帰宅する無気力な先生と、待遇はほとんど変わらなかった。
 これでは、先生のやる気がそがれてしまう。教育現場はいじめや不登校、校内暴力、学級崩壊など深刻な問題を抱えている。それを立て直すには、学校にも一定の競争原理を導入し、教育への意欲や努力が正当に評価されなければならないのである。
 もちろん、教育の成果は短期間でははかれない面がある。民間会社のように、セールススタッフの営業実績をグラフで示し、それに応じて歩合給が決められる−という性質のものではない。先生の場合は、それぞれの個性や能力をきめ細かく観察し、長期的な視野に立った評価が必要だろう。
 現在、勤務評定はほとんどの自治体で実施されるようになったが、東京都と同様、形がい化しているケースが多い。昭和三十年代の日教組の勤評反対闘争の後遺症と思える。当時、日教組側は、勤務評定による“差別昇給”や戦前のような“教育の国家統制”の復活を恐れていた。だが、今は、そんな反対理由が通用するような時代ではない。他の自治体も東京都にならい組合におもねることなく、新しい教員人事考課の方法を再検討すべきである。


 
 
 
 
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