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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/10/21 産経新聞朝刊
【教育再興】(111)家庭教育(15)神戸事件(下)PTA活動が羅針盤に
 
 「教育の今を考えるとき、児童連続殺傷事件と、そこから派生した家庭教育の問題は避けて通れないテーマでした」
 今年八月二十一、二十二の両日、神戸市で開かれた日本PTA全国研究大会神戸大会。事務局長を務める近藤豊宣さん(六二)はこう話す。
 近藤さんは神戸市教委を平成八年に退職。現在は事務局長のほか、神戸市PTA協議会事務局参与として活躍している。
 大会での特別分科会のテーマは当初の準備段階では、震災による心のケアの問題を中心に話し合われる予定だった。が、児童連続殺傷事件で中学生が逮捕されたことで、テーマはさらに広がった。
 「昨年、大分で開かれた全国大会では、神戸事件については触れられず、子育てに対する漠然とした不安感が取り上げられた程度。事件の全体像がはっきりと見えなくて触れることができなかったんだと思う。しかし今年は、ナイフを所持した少年事件が相次ぐなど家庭教育や地域教育の課題が表面化し、グローバルな視点で子育てについて考えなければならないと思ったんです」(近藤さん)
 “追い風”もあった。事件後、神戸では家庭教育をテーマにしたPTAの講演会や研修会が相次ぎ、家庭教育を見直そうというムードが広がっていた。
 「今しかない」。近藤さんは事件にフタをするのではなく、神戸からどう発信していくかを「心の底」に置いて大会運営を心がけたという。
 特別分科会では、「親が子供に過干渉になったり、子育てを人頼みにしたり、子育て恐怖症になるなど幼児教育に深刻な問題がある」「子供が自主的に判断したり選択するための情報提供を行うことが大切」などの意見が相次いだ。
 九テーマの分科会の一つ、家庭教育分科会では、定員七百人に対して全国のPTA会員や教育関係者ら約千二百人が参加を希望した。「前例のない盛り上がりだった」と近藤さんはいう。全国的に家庭教育に関心が高まり、それぞれの家庭が危機感を持ち、それぞれが悩んでいる証明だ−と近藤さんは思っている。
 
 家庭教育のあり方が神戸で指摘されたのは、神戸大会が初めてではなかった。事件に衝撃を受けた神戸市立中学校長会が今年二月、教育の現状と対策をまとめた報告書には「子供の耐性や徳性を培うべき時でさえ、何でも認めている」「知育偏重になりがちで感性の育成が妨げられている」など、家庭への厳しい指摘が記された。
 「学校だけで対応できる事件ではなかった。そのことを理解して、家庭にも役割分担を求めていく必要があったんです」
 当時、中学校長会長として報告書をまとめた山崎幸夫さん(六一)は、神戸大会が家庭にまで言及したことを評価する。山崎さんは「徐々に学校が変わっているのを感じている」という。
 事件が起きた中学校では昨年七月から週一回、スクールカウンセラーを配置。生徒だけでなく、保護者も訪問し、進路や友人関係、子育てなどの悩みを打ち明ける。「カウンセラーの女性は、昼食もとれないほど忙しい時もある」(同校教頭)
 「家庭も学校の変化に気づいている。学校と家庭との連携が深まるなか、相乗効果でよい方向に変わっていくのではないか」。山崎さんは期待している。
 
 確かな「熱気」を感じた八月のPTA全国大会。事件に危機感を持ち、悩みを抱えた親たちを目の当たりにして、近藤さんは「PTA活動は一つの羅針盤になり得る」と考えている。
 「PTA活動が組織的に展開されることで、子供たちの成長を支援できる。母親だけでなく、父親もPTAや地域の活動に参加することで、子供との信頼関係も回復できる」
 近藤さんは今、来年一月をめどに大会記録誌を発行するための作業に追われながら、神戸大会を「明日の見える苦労」と総括する。大会記録誌の申し込みを受けるたびに、大会の成果について「ある程度の手ごたえ」を感じている。
 
 「家庭教育」シリーズは終わります。沢辺隆雄、大塚昌吾、鵜野光博、松尾理也、飯塚隆志、阪秀樹が担当しました。
 
■PTA
 日本にPTAが発足して今年で50周年。米国は昨年PTA創立100周年を迎えた。日本PTA全国協議会(東京都港区)は、都道府県・政令都市単位の地方協議会や各地の小中学校ごとの単位PTAなどで構成され、会員数は約1200万人。日本PTA全国研究大会は研究討議や情報交換を行うことが目的で、昭和28年から毎年開催。46回目となる今年の神戸大会は「21世紀へ、想像力豊かな夢を!」をスローガンに「自ら考え、自ら学び、自ら行動できる子供たちを育もう」などをメーンテーマに開催された。


 
 
 
 
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