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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/04/08 産経新聞朝刊
【教育再興】(45)埼玉県立所沢高等学校(上)学校行事と自主自立
 
 埼玉県東松山市の中学校でナイフを使った校内暴力による生徒の犠牲者が出た三月九日午前、三十キロ離れた同県所沢市の県立所沢高校(内田達雄校長、生徒数千二百三十六人)では、ひっそりとした卒業式が営まれていた。
 体育館に並べられたパイプいすには、ほとんど人が座っていない。最前列には卒業生四百二十三人中二十人。在校生十一人。保護者約六十人。それに、校長の職務命令によって出席した教職員。
 卒業生代表として名前を呼ばれた生徒が国旗の掲揚された壇上に上がり、内田校長から卒業証書を受け取った。「これからの長い人生で、自主自立の精神をもとに社会の一員としてがんばってほしい」。式は国歌斉唱から校長の式辞まで十三分で終わった。
 その直後、教室に待機していた大半の生徒が体育館に殺到し、寸劇やキャンドルサービス、ハンドベル演奏などの催しを行った。卒業生はクラスごとに担任の似顔絵を披露し、在校生とスライドを上映しながらメッセージを交換した。
 卒業式をボイコットしたうえでの生徒会主催の「卒業記念祭」である。
 
 同校では昨年三月も、卒業式をめぐってボイコット騒動が起きた。
 前校長も内田校長と同様、学習指導要領に沿った国旗掲揚・国歌斉唱を伴う卒業式を行おうとした。しかし、生徒会と教職員は「学校に日の丸・君が代を持ち込んでほしくない」と主張した。混乱を恐れた前校長は式当日の朝、卒業式を取りやめた。
 昨年四月、内田校長は着任早々、指導要領に基づく入学式の開催を指示したが、生徒会と教職員は同じ理由で反対した。九日の入学式当日の朝の職員会議でも、管理職を除く教職員が入学式に反対し、会議はなかなか終わらなかった。すでに新入生は体育館に集まり、開始予定時刻から三十分を過ぎたころ、内田校長は職員会議を途中で退席し、日の丸の旗と君が代のテープが入ったレコーダーを抱えて体育館に向かった。
 「校長、やめてください」と制止する生徒会役員。レコーダーからテープが抜かれた。混乱する式場で校長が式辞を述べようとすると、マイクの電源が切られた。教員らは式辞が終わるのを待たずに生徒を教室へと案内した。生徒のいなくなった体育館で、校長と教頭、事務室長の三人だけで入学式が続けられた。
 その後、この問題で生徒側は校長に説明を求めた。説明会は数回に及んだ。内田校長は「学校運営は学習指導要領に沿ったものでなくてはならない」と説明した。これに対し、「学校の中心は生徒だ。その生徒の意思を通すためには、生徒と教職員が対等に話し合う場がなくてはならない」とする生徒会との間で、すれ違いの議論が続いた。
 内田校長は「生徒と教員は対等ではない。生徒は教員に指導されるものだ」とも言った。この言葉に生徒側は一斉に反発した。
 PTA(沼尾孝平会長)も生徒会に同調した。五月三十一日の総会や七月五日の臨時総会で校長を交えた討論が行われ、PTA側は校長を批判した。「校長の行動は所高の自主自立の校風を無視している」と。
 生徒会は七月ごろから、卒業式に代わる生徒会主催の「卒業記念祭」を計画し、教職員やPTAもこれに同調した。内田校長もこの生徒会主催の「記念祭」には反対していない。ただ、正規の卒業式への出席を求めたうえで、生徒会主催の催しも認めている。校長と卒業式を認めない生徒会・教職員・PTAの主張は折り合わず、平行線をたどった結果が三月九日の“分裂卒業式”だった。
 
 生徒会はあす九日の入学式もボイコットし、生徒会主催の「入学を祝う会」を企画。教職員とPTAも同調している。
 三月十八日の入学説明会では、教員の一人が校長の意向と異なる発言を行い、県教委から戒告処分を受けた。その後、教職員とPTAは処分撤回だけでなく、校長の罷免要求(リコール)や配置転換を求める文書を県教委に提出した。
 同校の遠藤孝一教頭は「いくら説明しても、マスコミは生徒側の立場から一方的な書き方をする」とマスコミ不信を語る。
 新入生の父親(四九)は「生徒の自主自立を重んじるのはいいが、それは高校という枠の中で保護された自主自立のことでしょう。自分たちの意思がすべて通り、校長の指示に従わなくていいということとは違うのではないか」と話した。
 
 根拠を学習指導要領に求めるまでもなく、世界のどの学校でも子供たちの人生の節目として行われている入学式と卒業式。その学校行事の開催をめぐって、校長と生徒会・教職員・PTAが対立する埼玉県立所沢高校の問題を三回に分けて検証する。
 
■埼玉県立所沢高校
 プロ野球・西武ライオンズの本拠地がある東京のベッドタウン、埼玉県所沢市の南部に位置する。明治31年7月、「共立英和学舎」として開校、今年で100周年を迎える伝統校。「所沢実務学校」「所沢商業学校」などの名称変更を経て昭和28年、県立所沢高に。同窓会報によると、昨年の大学合格者(浪人を含む延べ人数)は埼玉大8人、大阪大1人、早大13人、慶応大2人−で、県立の中堅校。


 
 
 
 
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